こんな本読みました。

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『アルファベット・パズラーズ』 大山誠一郎 著

2008/09/04(木) 08:11:45 大山誠一郎 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 2004年10月に刊行されていたミステリ・フロンティアのうちの一冊。以前から気にはなっていたんですが、ようやく読むことができました。
 んー、本格ミステリがお好きなかたなら、かなり面白いのではないでしょうか。まだご存知ないかたは是非ご一読をお勧めします。
 例によってネタバレする恐れがありますので、未読のかたはこれより先にはお進みになりませんよう。




うわぁぁ、なんでもっと早くに読まなかったんだーー!
というくらい、面白かった!

大山誠一郎氏といえば、私はエドマンド・クリスピンなどの翻訳の方でしかお名前を認識していなくて、e-NOVELSで完成度の高い犯人当てを書かれたことなんて知りませんでした。不勉強で申し訳ない。
こんなにがちがちのミステリを書かれるかたなんですね。

この作品は、短編が2編と中編が納められています。
どれも謎解きをするのは共通する登場人物で、五十代半ばのマンションオーナーで犯罪研究をしている峰原卓、そのマンションの住人で、3階に住む翻訳家の奈良井明世、2階には精神科医の竹野理絵、1階に住んでいる警視庁捜査一課の刑事・後藤慎司。探偵役はオーナーの峰原氏が務めます。

最初の短編【Pの妄想】は、明世が持ち込んだ事件。
明世の同業者の資産家の女性が、自宅の住み込み家政婦に毒殺されると言い出して、習慣のお茶会にもポットでサーブするお茶ではなく缶紅茶しか飲まなくなった。毒殺されるという主張は明らかに妄想と思われるが、病院に行くにはプライドが許さないだろうからと明世は理絵を誘ってお茶会に招かれる。理絵も妄想だと認めた直後、事件が…。

巧いですよねえこれ。
明らかに伏線だと分かる箇所がいくつもあるのに、それを全部回収するとなんでこの人が犯人になるのか。くどいくらいに缶紅茶を強調したのには、見かけ以上の理由があって、こんな繋がり方をするとは。
毒殺されるという妄想が本当か嘘かに惑わされて、それを逆手に取った犯人のアリバイ作りも手が込んでる。
現場に転がってた缶紅茶の見せ方に若干無理がある気がしないでもないけど、イマイチ人物像と犯行動機の結びつきが弱い気もするけど、この話はどちらかというと次の事件とさらには中編へと読者を導くためのものだと言えると思うのです。
この中心人物達がどういう役回りなのか、が後にとても重要になってくるから。

次の【Fの告発】は、凄いですね。
ある美術館の特別収蔵品室で学芸員が殺された。その部屋は、予め登録されている指紋認証によってしか出入りが出来ない。死亡推定時刻とその時間の前後に部屋に出入りした記録を突き合わせてみると、容疑者は3人。けれど、その3人とも犯人たる何らかの条件に当てはまらず、アリバイが成立してしまう。

これは刑事である慎司さんがマンションの仲間に持ち込んだ事件ですが、ここでも峰原氏がきらりん☆と閃いて、慎司さんを確認に走らせてあっさり解決してしまう。
キーは指紋認証システムなんですけど、このハイテクと例の<眠れるスフィンクス>というローテクが並立してるのも興味深い。
この推理は、綾辻先生と有栖川先生の合作【安楽椅子探偵】にも似た条件の導き方です。それだけに、揺るぎがあっては崩れてしまう綱渡りのような感じがしました。
何故、Aという人物とBという人物が同時に現れないのか、という問いに、明かされる答えはありふれているかもしれませんが、(ましてやあるセリフがあまりにもあからさまに被ってるし)、その現象の発端は意外だったし、峰原氏が引っかかった部分がとても微細なことで別におかしなことじゃないんじゃ?というレベルなんですよね。それだけに、そのありふれた穴からひっくり返った事件の真相は驚きました。
指紋のトリックもよく出来てたし、面白かった。

そして真打ちの【Yの誘拐】。
いやー、これはもう……やられたー!!
京都のあるベンチャー企業の社長の息子が誘拐され、父親が身代金を持って指示どおりに届けたにもかかわらず、人質の息子は殺されてしまう。嘆き悲しむ夫妻には更なる悲劇が……。残された遺族は、父親の手記をネットで公開し、広く情報を募る。
12年後、そのネットの手記を読んだ明世たちは、疑問点を上げて事件の真実に迫ろうと京都に乗り込んで調査を開始する。

もうなんていうか、見事に騙されましたよ!誰にとは言いませんが(大笑)
誘拐事件の被害者遺族の手記だけでも十分な量を取って、詳細に人物の動きを見せておいて、さて12年後、事件を追っかけることになった明世・峰原組と慎司・理絵組が繰り広げた推理、そして最後の最後に彼らが辿り着いた真相のさらに裏。営利目的でも怨恨でもなさそうな誘拐事件の真相がこれほど残酷なものだなんて、泣きそうになりましたよ。
彼ら4人が現地で調べて浮かび上がった疑問点の、三つ全てがミスリードときてはお手上げです。
共犯とみなされ間もなく殺された柳沢が京都駅で待ち合わせた人物が誰だったのか、その疑問を理絵の推理のように思ったことはありますが、真の意味で本当に顔を見られて困る人物がこれほどスマートに絞られるなんて!まさに、先にも挙げた【安楽椅子探偵】の純粋推理のようでトリハダが立ちました。唸るしかありませんて。
Yの正体がアレとは!そして、アレがあってこそ事件が仕組まれたなんて。頭と尻尾が逆だったんですね。
この事件はトリックというよりは明らかにロジックの積み重ねです。
それだけに、リアリティは薄いかもしれませんが、クライムノベルとしては完璧です。ミスリードの結果見せられた、まやかしの解決も(それが真相だー!と思わせるに十分なほど)捨てるには惜しいくらいですし、被害者と犯人の見えなかった接点なんて空恐ろしさにぞくっとするし。
この誘拐事件の主犯の、怜悧な頭脳のキレは冷たすぎる人間性の一端だったことが、倒叙形式ではない新しい見せ方だなあと感心しました。
いやー堪能した!

(2008.04.04)
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