こんな本読みました。

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『夜の国のクーパー』 伊坂幸太郎 著 

2012/06/27(水) 00:06:40 伊坂幸太郎 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 前作『PK』より先にこっち読んじゃった…。いやだって「猫と戦争、そして何より、世界の秘密についてのおはなし」ということなんですもん!ねこねこねこ!
 結構ページ数ありますよね、これ。2年半という時間をかけての書き下ろし。
 さっきの帯の惹句以外に、何の先入観も事前知識もない方が、きっと楽しめると思います。なので感想もふわりさらりと。





ねこ可愛いーーー!! (第一声がそれか)

うーんとね、雰囲気的に、伊坂さんのデビュー作のような気がしました。『オーデュボンの祈り』ですね。

そして、

帯の裏側にあるように、「帰ろう」というテーマのリフレイン。帰る。還る。帰還。

ずっとずっと、根底に鳴り響いているようでした。帰ろう、帰りたい、還る。そんな気持ち。

自分の国へ。自分の家へ。自分を待っていてくれる人たちのところへ。

ほんの少しだけ、震災の影を感じるとしたら、そこですね。
美しかった東北に戻ってほしい。
優しかった日本に戻ってほしい。ほんのほんの少しだけ。

それくらい、現実感を伴わないように細心の注意を払って書かれたように感じました。
伊坂さんが仙台在住だからって、被災地の苦しみや悲しみを重ねないように、同情されないように、ただ、楽しんで読んで欲しい、と。
読者のそういう気持ちも分かるけど、どうか現実を重ねないでほしい、と。

軽やかに、健やかに。ねこのようにしなやかに。

いろんな人間が出てきます。強い人、弱い人、ずるい人、短慮な人、知恵のある人、…。
いろんなねこも出てきます。強いねこ、単純なねこ、物知りのねこ、…。

ひたすら猫を愛でながら読んでもいいし、人々の追い詰められた心理を思って読んでもいい。
人の心の強さと弱さをじくじくする気持ちで読んでもいい。

大きなどんでん返しがあるでもなく(いや、あるといえばあるか)、それでいて叙述トリックのように小気味よく騙されて読み終えた今、あの不思議な世界の余韻をもう少し握り締めていたい気分。

ファンタジーであり謎もあり、ねこの世界の物語でもある。

猫の視点の第三者的なことといったら、鼠たちのやり方は人間と同じに書かれていてもう、わたしは心底、ねこになりたい。

キーパーソンは、実は酸人な気がします。
この人の言動に、登場人物だけじゃなくて読者のわたし達も翻弄される。
いろんな謎を隠す上で、ものすごく効果的な煙幕です。

先日のエッセイ、『仙台ぐらし』を読んだ人なら、この物語は地続きになっていることに気がつくでしょう。
こうきたか!みたいな。
この『クーパー』を読む前でも読んでからでも、『仙台ぐらし』とセットがいいと思います。

それと、ツイッターで版元の編集者K島さんがツイートされていた、今だから明かせる裏話、みたいなので、この作品と2年前に刊行された某傑作ミステリ(こちらも東京創元社刊)が若干ダブるシーンがあった、というのも読んでみて納得。あははーなるほど。

伊坂さんマジックというか、重いテーマを軽やかに読ませるセンスと、読みやすさは相変わらず。

最後に、印象的だったセリフ。

「(略)たえず、疑う心を持てよ。そして、どっちの側にも立つな。一番大事なのはどの意見も同じくらい疑うことだ」

はい、やってみます。
そう言いたくなりました。
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