こんな本読みました。

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『キサトア』 小路幸也 著 

2012/05/15(火) 17:44:08 小路幸也 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 ええと、旧理論社から親本が出たのが2006年6月、とのこと。小路さんがデビューなさって3年目に出た作品ですね。
 この頃はまだ書き下ろし発表ばかりだったそうで、これもそのひとつ。
 わたしはこれいつ読んだかなー…2007年の『シー・ラブズ・ユー東京BW』でリアルタイム新作に追いついたから、それまでに既刊本は全部読んでたから、…おお、発売後わりとすぐに読んでたのねw
 で、初読時、ふおぉぉぉぉぉ……!!って感動でぶるぶるした記憶があります。
 今回、文春文庫から出ることになってたいへんおめでたい上に、書き下ろし掌編が収録されてますよ奥さんwww←?
 初期作品であるこの『キサトア』は、既にがっつり小路作品らしいカラーとテイストに満ち満ちておりますよ♪
 ちゃくちゃく♪



さて。
もうマジで何度読んだか覚えてないくらいで、それくらい好きな作品。
理論社があんなことになって、文庫化は諦めてたんですけどね。文藝春秋さんグッジョブ!
おまけに、親本にはなかった、登場人物一覧や、舞台の町の地図まで添えてある親切設計♪♪
単行本はそれはそれで雰囲気のある装丁だったですが、せっかく文庫化になったのでもうこの機会にぜひぜひ広く広く読まれてほしい☆


成長と共に病気で少しずつ、見える色をなくしてしまった少年、アーチ。
アーチの双子の妹は、同じ時間を一緒に過ごすことができない。
そして、アーチくんとキサトアちゃんのお父さんは、〈風のエキスパート〉という、風を読み風の影響を調べたりする専門家。

こういう設定ってなかなかないですよね。

モノクロの世界に生きるアーチ少年はね、病気ということもあって、こういうケースの人は一定数はいるでしょう。
話は逸れるけど、デビュー作のパルプ町シリーズでは「相貌失認」という実際の病気をアレンジして「のっぺらぼうに見える」少年だった。
でも。
さすがに、キサちゃんとトアちゃんの、この設定はねえ、魔法でも超能力でもない、ただ生まれつきこういうのって、考えついたとしてもそれを上手く構築しづらいんじゃないかな。
このあたりがもう、小路さんは抜群にお上手なんですよね。

思うに、アーチの芸術家としての才能と引き換えにしたような色の欠落(ベートーベンが晩年耳が聞こえなくなっても作曲ができたようなもの)とか、お父さんのフーガさんが〈風のエキスパート〉としてどういう仕事をする人なのか、そういうのは、訓練すればコントロールできるものですよね。
一方、キサトアちゃんのこれは。
太陽と月、みたいなもの。
太陽が空にあるときは明るく、月が見えるのは夜空。
それが当たり前で、常識で、自然なこと。
だからキサちゃんもトアちゃんも、「どうしたら一緒に遊べるかな?」とは考えてもいないでしょう。境界の曖昧になるほんのわずかな時間にだけ「おはよう」「おやすみ」を言えて写真やメモで情報を交換することを、当たり前にしてる。

この、「自然」「常識」「当たり前」という思い込みに対して、登場人物のすべての人が、そしてまた読者までもが、促される。

「考えろ」って。

「当たり前だと思うことに流されるな」って。

もっとよりよくできる方法があるのかもしれない。
みんながもっと幸せになる方法があるかもしれない。
諦めるな、流されるな。足掻いてみせて。

そんなふうに、キャラクタのひとりひとりに言われたような気がしたんです。

アーチとアミのふたりを取り巻くいろいろなことに、「しょーがねぇな大人は」で終わらせない。
子ども達は子ども達の世界を、自分達なりに頑張って組み立ててるから、大人の事情で振り回す是非もそうですがとにかく子ども達を甘く見ちゃいかんと。
子ども達は、自分で出来ることがいっぱいあるし、出来ると思ってる以上のことも出来る。
大人は子どもの邪魔すんじゃねえ。ただし、人間として最低限のことは教えとけ。それだけでいい。
…あれ。勘一さんが紛れ込んでますね(笑)

ミズヤさんやロドウさんといった、町の外の空気を運んでくる人もいるから、小さな町ですが閉塞感はないですね。
子どもの頃って、大人にはなんでもない範囲がものすごく果てしない気がしたりするもんです。
たぶん、子どもの心って、猫に近いんだと思う。
水平方向ももちろん動くけど、むしろ縦方向に俄然興味を示すことないですか?木登りとか、立ち入り禁止の屋上に上がるとか、地下への階段見つけて懐中電灯取ってきて探検に行くとか。
自由なんですよね。怖いよりも、好奇心と限界を設定しない心。

それが、アーチたち五人組によく出てる。

アーチの芸術家としての才能は、正しく「天から降ってくる」感じ。
でも、それはアーチが考えて考えて考え抜いているうちに脳と心と閃きがその一点に向かって集約されていってるんですよね。
だからたぶん、「考える才能」が突出してるのではなかろうか。
気の散りがちな子どもはまず集中するだけでも大変ですから!(大人になってもまったく集中できないかわいそうな人がここにいますよー)
フウガさんやリュウズさん、ミズヤさんは、「考えるための材料を提供」し、かつ「思考の交通整理をする」人たち。
子どもが真っ直ぐに愛情を信じられるのは、こういう大人の存在だろうと思います。
てか、こんな息子いたらいいよねえwww彼女なんて連れてきたらお姑根性でいぢめてしまいそうだ(苦笑)

アーチとアミのように子どもの絆の強さあり、大人のめんどくさい遣り取りあり、そしてちょいとオカルトっぽいものまで盛りだくさんw
理論社から出た当時はヤングアダルト向けに書かれたと思うんですが、本が大好きでたくさん読んでるよ!というくらい本に慣れた子であれば小学校高学年でもう読めるのかも。
でもやっぱり、YAと、そして大人が読んでほしい。

書き下ろし掌編は、今年秋頃に発売予定だという『蜂蜜秘密』に繋がっています。
ほんまに、予習したような気が(苦笑)
ということで、もう早く『蜂蜜秘密』が読みたくてじれじれしております(連載追っかけるの我慢してたし)。

あ、わたしの一番ご贔屓キャラは、ミズヤさんでしたー(笑)次にセージさんwww
そして、ミズヤさんも、書き下ろし部分で、驚かせてくれましたよもう!

キサトアちゃんの歌、誰かメロディつけてくれませんかー!
ちゃくちゃく
ちゃくちゃく

おっと、新聞記者のY.Sさん、分かりましたかー?
以前、小路さんが日記かどこかで触れられていましたけど。今はちょっと読めないかも…。


(2012.5 文春文庫)
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