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『高原のフーダニット』 有栖川有栖 著

2012/04/29(日) 01:19:20 有栖川有栖 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 わたし、有栖川先生のストーk(ry、もといオッカケ(ただし関西限定)を自認しているくらいで、当然、先生の御本は全て読んでます。
 にもかかわらず、読書メーターやFC2ブログの方のカテゴリを見ると、数冊分しか感想書いてない…(滝汗)
 書き下ろしなら書いてますねえ、たぶん、雑誌掲載分のはその雑誌をゲットするやガーッと読んでしまって、いざ単行本にまとまった時には改めて書くのをすっぽり忘れてる、というのが正解みたい…アホや(涙)
 そんなわけで、今回は書きますよええ書きますとも!


とか言いながら、今回もやっぱり収録作品はぜんぶ、雑誌掲載時に読んでました(苦笑)


『オノコロ島ラプソディ』
『ミステリ夢十夜』
『高原のフーダニット』

うち『ミステリ夢十夜』はそのタイトルどおり十編のショートストーリーが連なったもの。
昨年9月の中之島での対談終了後に突撃(待ち伏せとも言う)したときに、先生ご本人が「問題作です」と仰ってましたが(笑)

わたし、これ好きなんですよねえw
もちろんガチガチの本格ド真ん中、というのがあってこその話ですけれど。

まず1本目の『オノコロ島ラプソディ』からいきましょうか。

わたし、未だにこのタイトル、しっかり覚えられないんですよねえ…★
作中には、神話の「オノコロ島(オノコロ庵)」に触れるくだりがあり、それをもじった形で「オコノロ庵」と登場人物に言わせるストーリーであり。
これ、雑誌掲載時に読んだとき、ちょうど鯨統一郎先生の『千年紀末古事記伝ONOGORO』を読んだばかりだったもので頭の中が大混乱@@@
それがまだ残ってるというか引きずってる感じで…。
オノコロだったかオコノロだったか?あれ、オノロコ?みたいな…あうあう(汗)

「叙述トリック」が序盤のテーマになってるお話ですが、それが事件の真相とどう繋がるのか、と思ったら、叙述トリックで驚くのは読者と──。
こういう繋ぎ方、テーマの絡ませ方がお上手なんですよね有栖川先生。
だから、叙述トリックでなくても、わたし達読者は毎回十分に驚き唸らされるわけですが♪
でもさー、確かに叙述トリックばっかり集めたアンソロだかシリーズだかしらんがそんなの途中で飽きるに決まってるやん!と、この失礼な編集者氏に突っ込んだかた、お友達ですねwww

京阪神より少し外れた、淡路島での事件。小旅行のようなトラベルものの一面もあり、アリスさんのわたわた具合が微笑ましいとか、野上部長がなんだか違う人みたいで意外だったり(爆)と、作家編のシリーズファンなら楽しい作品でしたねえ♪

火村先生と知己の人物が関係者にいるというのは今までにもあったけど、火村先生がここまで言葉と心をかたくして対話しているのはちょっと珍しいんじゃないかな。
激高したり誘導したり小芝居うったり搦め手で攻めたり、というシーンは何度もあったけど。
もともと茶室だった狭い空間での対峙が、余計な言葉を削ぎ落とした対話とうまく重なっていて、「正しい質問」という火村先生の言葉が印象深いです。

あと、アリスさんのモノローグというか語り手としての地の文も冴え渡っていて、ちょこちょこ出てくるツッコミやら願いやらが、正直すぎて可愛いwww
「俺は三毛猫ホームズか……」に笑ったー♪♪

さて、お次は「問題作」w
『ミステリ夢十夜』。
一編一編をどうこういうのは野暮なのでやめときます。
わたしが気に入ったのは第三夜と第八夜、第九夜、第十夜。
アリスさんが見る夢だけあって、アリスさんはギリギリ犯人じゃないし死なないんですけどね、誰しも夢なんてそんなもんですよね。
火村先生や馴染みの刑事さんたちや朝井さんに片桐さんにカナリアの人まで総出演wで、アリスさんを追い詰めていく役回り。
………これは、この中のどれかをたった一回見るだけでも相当ヘコむと思うよう(涙)それが十夜。なんかもうしんどいしんどい★
アリスさんがいかにミステリで出来てて(おい)作家業に集中しているか(集中できるか)というパーソナリティがよく分かる十編でした。
ところで、第三夜のコレは、隠喩で出来てるけれども、もうひとつの意図があるのかな?
これから先シリーズがどれだけ続くとしても、火村先生もアリスさんも、結婚しない(出来ない)or子どもを持たない(持てない)という?船曳警部が妻帯してるのかすらどうだったかな…してるよねたぶん…(自信ない)

最後に表題作、『高原のフーダニット』。
単行本に収録されるの早っ!ついこないだ『読楽』に掲載されたばっかりやん!と思いましたよ。嬉しいけども。
いやーこれは本格ですねえwwwああ楽しい♪♪
双子、というからややこしいのかと思ったら、現場の状況や容疑者のアリバイを検討して犯人の条件を詰めていく、正統派フーダニットでございますよ♪
ちょっと『乱鴉』を思い出した。現場の状況(情景)が、ハッシーのあの感じに似てる気がしたです。
犯人の動機も、やっぱり現代的というか、現実と虚構の境界線上にありそうな、フィクションだから通用する動機とは一概に言えないなあ、と思って。
作家編は学生編よりも動機が屈折して複雑で斜め上なのに言われてみれば理解できるような気もする…という、わたしの中にも確かに存在する暗い部分に触れるようで、おそらくだからわたしは作家編が大好きなんですよね。うん。

じーつーはー、このお話でわたしの一番ツボったのが、257ページの最後の方、「お前とか先生とか君とか、めまぐるしく呼び方を変えてくれるな」という火村先生のセリフwww
わたし、火村先生はアリスさんが自分をどう呼ぼうがあんまり気にしてないと思ってたから。アリスさんにはこだわりがあったけどね以前は(国名シリーズのどれかの短編か中編にありましたよね…どれだったっけ★)
そういえばそろそろ新しい国名シリーズも読んでみたいです先生☆(小声)

有栖川先生の最近の御本は、どれも美文に磨きがかかる、というか、普段は使わない言葉がちらほら出てきてもそれがすんなり溶け込んでいて、本格ミステリ、推理小説という特異分野のジャンルながら、たとえば北村先生の作品とはまた違った文学的な感じがしますね。
でも、たぶん、先生はずっと「天上の推理小説」を目指されているのだと思います。

以前は、ミステリ初心者には学生アリスシリーズを薦めればいい、というのが多く聞かれた話でしたけど。
学生編なら本格ミステリの定型を知ることができるから、と。
それは今でも変わりないとは思いますが、作家編に関していえば、どんどん進化していっている気がします。
火村先生とアリスさんが永遠の34歳であることを除いて、さくっと現実が取り込まれているせいでもあるし、先生ご自身がシリーズをどんどん進化させていっておられるように思えて。
本格の王道でありながら進化し続け、前衛的ですらある、作家アリスシリーズ。
時に原点に還って、本当にオーソドックスに犯人当てやアリバイ崩しに淫するお話もありつつ。
いつぞやの「本ミス」のアンケートにあったように、「有栖川先生がいれば本格の未来は大丈夫」と思える、絶対の安心感。
わたし達ファンは、だから目が離せなくて、ずっと追いかけていくのでしょうね。


(2012.3 徳間書店)
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