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『Happy Box』 小路幸也・伊坂幸太郎 他

2012/04/09(月) 15:45:20 アンソロジー THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
『Happy Box』伊坂幸太郎、山本幸久、中山智幸、真梨幸子、小路幸也 著 (PHP研究所)
 さて、この作家陣の共通項は何でしょう?
 ……すぐに分かりますね(笑)
 お名前に「幸」の字が入ってる作家さんばかりのアンソロジー。こういうくくりのアンソロは珍しいと思う。
 なぜ、こういう本が出来たのか、それはこの本のあとがきと、小路さんのサイトのdiaryでwww(いや書くと長くなるので…)



まず、装丁が素敵ですーwww
本当に、ほんわりと「Happy」を感じる、プレゼントボックスみたい。

ですが。

この五作品、それほど恵まれた人生でもなく憂いが漂っていてちっともバラ色じゃないです(苦笑)
かなりヘヴィーなものもある。

当たり前のことですが、「幸せとは何か」「どういうことに幸せを感じるか」は人によって違いますよね。
何不自由ない順風満帆の人生がイイという人もいれば、幸と不幸は半分ずつでバランスがとれるようになってるという人も、また、幸と不幸は紙一重という人もいるでしょう。人生大ピンチのところを辛くも逃げ切った(乗り切った)ことがラッキーだというギリギリの幸運を言う場合もある。

ということで、バラエティに飛んだ五つの幸せをテーマにした物語、自分の価値観で読めて、なかなかオトクです。

収録順に、
『Weather』伊坂さん
『天使』山本さん
『ふりだしにすすむ』中山さん
『ハッピーエンドの掟』真梨さん
『幸せな死神』小路さん

これ、収録順に読んだ方がいいのかも。わたしはもちろん、真っ先に小路さんのから読んだのよねえ(笑)
で、他の4作品を読んで、もいっかい小路さんのを読んで、ボロ泣きしたんですよ~。えへへ☆

わたしは、中山さんと真梨さんは初読。
山本さんも、何かのアンソロに入ってたものか雑誌掲載だかをちらりと読んだような気がする程度。もう初読でいい。

キョーレツなのは、やっぱり真梨さんでしたねえ(笑)さすが、イヤミスの代表格だけあります。
なんというか、単純なように見えて複雑でもあって、そしてラストでやられたなあ!
主人公の女の子も相当おかしいけど、これは育ってきた環境がかなり影響してるからしょうがないとして、この女の子が自信満々に書いた絵本の発表のくだり。
……これ、実際の学校でありそうで怖いよー。嫌だこんな学校教育。ていうか担任の先生。小学校教師が、子どもの心をまったく考えないで自己満足と自分のためだけに教壇に立つって、こんな極端な形ではないにしても、ありそうよねえ…。
で、チエちゃん。こういうことかー!この辺は、上手いなあミスリード。うん。
このお話の「幸せ」は、本当にやりきれないですね。はあ。

『天使』も、子ども達が出てくるけど。
こっちの幸せは、個人的なものじゃなくて、社会全体の幸せってことかな。
それにしてもさー、福子さんのしたことって、何なんでしょうか。
子ども達を救ったことで感謝されて、その子ども達が「幸せ」になることが福子さんの「幸せ」なのか?
師の言葉を反芻するうちに、彼に近づけるように天使の行いをすることが福子さんの「幸せ」になったのか?
なんにしても、福子さんの幸せは長い人生で熟成されすぎて、今のわたしにはもうひとつピンとこなかったかも。

ピンとこないといえば。『ふりだしにすすむ』も。
こっちは、単純にややこしい。
SFっぽい設定もそうだし、人物の書き分けも。結局どっちがどっちだったの?と、一読しただけでは理解できたかどうかの自信がもてないです…頭悪いからさ★
こういうSF設定、ミステリ界では西澤先生がばんばんに飛ばしておられて、それに慣れてたせいもあるのかも、と思う。

さてさて、伊坂さんですよ。『Weather』ですよ。
なんてーか、ずーっとハラハラしながら読んでたら、真相はイイ話ダナーというこのギャップ(笑)
伏線というか、キーワードは絶えず見えてるのに、花婿の不行状と招待客の若い娘さんのあまりのKYっぷりに引きずられて(実際この娘は人様の結婚式に招待されちゃいかんレベル)、元カノだったときの彼女と主人公との会話に埋め込まれたアレを忘れてしまってたー!ばんばん★(←机叩く音)
繊細で滑らかな、ベルベットのような隠し方でしたよ。さすが伊坂さんだwww


トリは、はい、小路さん。
…やっぱりねー、肌に合うとしか言いようがないです。
小路さんらしく会話部分が軽妙でリズミカルなのでするりと読みやすくて、それなのに一番じーんと心に響いてほんわりとあたたかくなってくる、素直に「幸せっていいなあ」と思える、本当に素直な物語。
何一つ、構えが要らないんです。楽しく、イメージどおりの「幸せ」を感じられる。

「バク」シリーズのような超常的な設定ではあるんですけど、これはめっちゃイケメンの「死神」♪
黒いマントは?命を断ち切る大鎌は?
生まれて成長してやがて老いて死んでいく、という生き物の理の外、ビッグバンと共にもうそこに居たのかもしれない。

「死神にとっての幸せ」というあまり普通では考えない幸せの形を描く。
そしてそれは、「人間にとっての幸せ」でもある。その視線が、繋がりが、あたたかい。
「幸せ」というのは、「特異点」であるのかもしれない。
同じ事のくりかえし、ひたすらエネルギーを溜めて溜めて、力をつけて。
そして、心が強くなったとき。
まだ見たことのない、経験したことのない、今までの人生の記憶も欲も全てを置き去りにしてもいいほどの、「幸せ」を。
どこか「悟り」に近いもの。
でもそれは決して「超越」ではなくて、やっぱりひと繋がりになってる、誠実に丁寧に生きた人生のこと。
そんな気がしました。
ボロボロと泣かせていただきました小路さん。罪なおかたです(笑)

作家買いするもよし、装丁買いするもよし、読み終えたらしばらく、幸せってなんだろう…と、ふっと手を止めてしみじみ考えている自分に気付く、なかなか強かな(笑)アンソロジーです!

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Comment (2)Trackback (1)
肌に合うとしか言いようがない

小路さんの作品は泣けますね~。

> 素直に「幸せっていいなあ」と思える

こんなすてきなお話には、なかなか出会えません(キッパリ)。
しかも、小路さんの新作、『荻窪 シェアハウス小助川』が出たからか、
http://www.birthday-energy.co.jp
ってサイトで、小路さんの性格とかを詳しく書いてあって、
なんか興味深く読んでしまいました。

引き出しは広いし、機を見るに敏だそうで、物語からは
ちょっと想像できない一面がありそうです。

作家さんって、やっぱり何か特徴が必要なんですね~。

2012.04.11 21:19 あくびざめ #DvI991tw URL[EDIT]
No title

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2012.05.11 17:13 藍色 #- URL[EDIT]

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東日本大震災から一年、「幸せ」について、人々の関心が高まっている――。本書はその「幸せ」をテーマに、ペンネームに「幸」が付く5名の人気作家が書き下ろした短篇小説集。 「weather」(伊坂幸太郎著)は...

2012.05.11 17:04 粋な提案

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