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『エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ』 深水黎一郎 著

2008/09/04(木) 08:07:53 深水黎一郎 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』で鮮烈なデビューを飾った深水氏の長編第二作目です。
 未読のかた、ネタバレNGのかたは、これより先にはお進みになりませんよう。




実は私は、『ウルチモ・トルッコ~』は読んでいません。
倒叙スタイルだと聞き及んでいたので、いくら世評が高くてもどうしても読む気にはなりませんでした。
そしてこの二作目。しばらく悩んでいましたが、とあるサイトで“読者への挑戦状”が差し挟まれていると知って、これは読まずにいられなくて。

最初にお断りしておきますが、私は芸術、それも美術には全くの芸術オンチです。絵画というものに元々興味も無いので、常識以下の知識しか持っていません。
ゴッホとかルノワールとかモネとか超メジャーな名前だけは知っていますが、その名前と作品名がイコールで繋がらないのです。『睡蓮』とか『落穂拾い』とか誰でも一度は目にしたことのある絵画であっても、だからって作者の名前が間違えずにすんなりとは出てこない。その程度の認識しかないのです。

それが、この作品はそんなアホでも引っかかることなくスイスイと読めました。それどころか、妙に知識が付いたような錯覚さえ…調子いいですね我ながら(苦笑)。

えーと、長く書くと重箱の隅を突くような真似になりかねないのですが。
ミステリとしての事件の流れはそれほど目新しいものでもなくて、はっきり言ってしまうと“読者への挑戦状”は要らなかったのではないかと思います。

それよりも、全体の構成の巧さの方に感心しました。
事件が起こって刑事達が捜査を始め、関係者から丹念に事情聴取をし、そこに飄々とした名探偵登場、---そして、その合間合間に挟まれている、被害者自身の著書としての(実作者ではなく)美術書<呪われた芸術家たち(レザルティスト・モウディ)>の一節一節が事件全体の目くらましであり、かつ最大のヒントになっているという構図は、最後まで飽きることなく読ませる引力があって。

手がかりの出し方にアンフェアなところがあるわけでもなく、近頃流行りのミスリーディングということもない、でも、生意気言うとだからと言ってフーダニットど真ん中とも言えない…。密室の謎にしてもそれほど驚くものでもないし。読者への挑戦状が必要ないと思ったのは、そういうことです。

それと、随分警察の内部を軽く書いてるなあ、と感じました。
私に警察関係者の知り合いがいるわけじゃありませんが、多分、警察という組織はもっと泥臭い生々しいものだと思うのです。でなかったら、地道な捜査など出来ないでしょう。
一番のネックは海埜警部補の上司である「あの」警部が、「警視庁捜査一課の切れ者なのか痴れ者なのか」がイマイチはっきりしなくて、中途半端なまま終わってしまったこと。粗野というのかとにかく品が無くて、でも一応事件を見てはいるので一概に無責任というわけでもなく…。
おそらく、イメージとしてはピーター・ラヴゼイのダイヤモンド警視が一番近いと思います。ただ、ダイヤモンド警視と違って探偵役ではありませんが。

こんなに中途半端なキャラクタをわざわざ出さなくても、と。
ていうか最近のミステリ界にデビューしたかたの作品って、多くはこういう品の無いキャラクタがよく出てきませんか?流行りなのかな。
「ミステリは人間が描けていない」とは昔から言われている事で、未だにそれを恐れることもないでしょう。そんなの別にいいのに。
人間性が欠けていてリアリティが無いならないで、思いっきりトリッキーにするとかパズラーとして揺るぎ無いものにするとか。
トリックやロジックが徹底していて全体に一本すーっと芯が貫かれているなら、それは本格ミステリファンには願ってもないことでしょうね(苦笑)。

なんのかんの言っても、一定以上の水準のミステリであることは確かで、読んだ時間を返せー!とは思わなかったし。
あからさまなものや小さなちょっとしたものまで散らばっている伏線は全て回収されているし、動機に無理矢理感や不自然な感じもない。構成が巧いなと思ったのは、特にこの動機面で綺麗に纏まっているからでもあります。ていうか、見事な煙幕です。

そしてまた、事件の真相が顕になることで、かえって誰も喜ばないという暗さは、深水氏のある種のメタのような気もします。

未読の人に「どうだった?」と聞かれれば「うん、面白かったよ」と答えられる、スマートで纏まりのいいミステリだと思います。
ただ、インパクトが弱いのでちょっともったいないかな。もう少し、どんでん返しがあっても良かったんじゃないなあ。
次に期待ですね。

(2008.03.13)
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