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『無名騎手』  蓮見恭子 著

2012/03/06(火) 19:42:59 蓮見恭子 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 いつも参考にさせていただいているレビュアーのおひとり、フクさんのサイトで紹介されていて、初めて知ったシリーズ。これ、『女騎手』に続くシリーズ二作目なんですけど、傑作!という評に惹かれてこっちから読んじゃった(苦笑)
 でもぜんぜん大丈夫でした。一作目からのレギュラー陣とのやりとりや面白味はまたおいおい、一作目を読むことにして、これだけでも十分な本格ミステリになってました。
 ちなみに、100%競馬です。それ以外の要素ってどこにもないです(笑)そして、わたしは競馬を一切知りません。でも面白かったですよ。


…とはいうものの。

競馬に無知(今、マイパソが鞭って変換してくれたけど気が早いというか間違ってないんやけど気を回しすぎw)なので、競馬好きなかたが読むようには読めないし書けないのも確か。

なのでもうここは、「競馬をまったく知らず、馬券買おうと思ったこともないド素人が読んでも面白かったよ!」という、お子ちゃまみたいな感想を信じていただくしかないですねえ(苦笑)

競馬界のしきたりやしがらみ、騎手の執念、馬との会話、朝靄のなかの馬のいななき…。
そうかー、こういう世界なのかー、と、その意味でも面白かった。
テレビで日曜に中継してるアレがいかにほんの一握りのスポットライトの当たるレースなのかとか。
その下で、その影で、寡黙にひたすらに、人馬一体となって駆け抜けるドラマが展開されていることとか。
興味がなければ、競馬場で馬券買ったり競馬新聞を熟読したりしたことがなければ、そんなことも知らないんですよ…。

女性騎手が主人公っていうのもいいです。
女性視点だから、男性ジョッキーに対して女性はどう不利なのか、競馬界の理不尽と旧態依然の様子とか、そういうものと、主人公・紺野夏海のストイックさが痛々しくてどうしても応援したくなる。
男性と女性の、いざというときの違いが、そのまま事件にも生かされてて(ええそりゃもう最初からものすごい大胆に!)、とにかく書き込んである要素をどれひとつもムダにしてない。

もう一人、視点人物として女性が出てくるんですけど。
ミステリで、こういう風にふたりの視点を少しずつ近づけていくのはいくらでもあるけど、この交わり方はわりと意外だった。
そうかー、派遣社員とはいえ、仕事ができると自負してる「プロ」は、仕事バカなんやなー(笑)

夏海さんの先生の、以前の教え子が死んだという知らせで、遺品整理のために夏海さんまで駆りだされて、初めて知る「加賀尊」という天才ジョッキーの顛末。
発見された遺体の状況が凄まじくて、普通に身元確認はできない有様。
はい、もうがっつりミステリですね(笑)
トリックも真相も動機も、そんなに目新しいものじゃないんですけど。なんていうか。
伏線の埋め込み方が丁寧、というよりは、細やかな印象。
真相が明らかになると、それまでのアレも伏線コレも伏線だったかー!とページを行きつ戻りつ(…気付けよわたし)読み終わってみると、なんというか、控え目で繊細なんですよね。
でも、かっちり全部を回収してあるからすごい。
夏海さんがどこら辺で真相に気付いたか、黒幕は誰かをいつ知ったか、たぶんそこが作者と読者との駆け引き、レースのような感じなのかも、と、しばらくして思いました。

事件そのものは、かなしいです。
孤高の天才がいかに孤独か。
まわりがどれほど将来を楽しみにし、心配をして、親身になろうとも、天才の心はだれにも分からない。
夏海さんはかろうじて、加賀尊の心の襞にタッチできたのかな。
全てが加賀尊という人物を軸に起こった事件だったわけで、夏海さんにはこうなってほしくない。
おそらく加賀さんもそう思ったからこそ、あの言葉を遺したんでしょうね。

人間のサガの物語なので、馬は一切傷つけられません。
そして、競走馬の1頭1頭に個性があることも、ちゃんと描いてある。
たぶん、著者の蓮見さんは、そこをまず決めたんじゃないかな。馬をいかに大事に思ってるかを感じられて、好感がもてました。

とにかく競馬がわからないので、開き直って、これは本格ミステリ、とだけ意識を集中して読んでも十分おもしろかったです。
それでいて、読み終わってみると、知らなかった世界の裏側を垣間見れて、ちょっと競馬場に行って、その独特の高揚感を体感して見たくなるwww

ところが、その高揚感にのまれるな、というブレーキの役目を果たす人物が。
刑事さんが捜査中まで競馬ラジオ聴いてるってのはあかんやろう……。
ということで、痛い目に遭ってから競馬は二度としない、と誓う刑事さんが、続けて起こった事件について夏海さんたちに事情聴取するのに競馬界にまた足を踏み入れて、この刑事さんは鉄の意志で抑えたけど、ここまで強くないならのめりこむまで馬券買っちゃいかんよ、と。
夏海さんポジションで競馬界の裏側や内実(もちろん現実より盛ってあるでしょうけれど)を描いて興味を持たせつつ、刑事さんの心をところどころに入れることで読者にブレーキをかける。それが見事に両立してる。
器用なことしはりますねえ、蓮見さん(笑)

あ、ひとつだけ。
お江戸言葉のキャラもいますが、基本的に会話は関西弁が占めてます。それも、かなりディープな関西弁というか大阪弁。
わたしは関西人なのでいわばネイティブですから、すらすら読めますが、関西弁に馴染みのない(テレビで聴く程度)のかたには、少々つらいかも…。
いっそ、夏海さんと陽介さんのベタベタな関西弁の会話とか、音読してあげたくなるほど、口語に忠実です。
その一点だけ、ご留意を。


文庫化されたとき、本職のジョッキーさんが解説とか書いてみたら、どうだろうなあ、と、今からそんなことを妄想したりするのでした。


(角川書店)
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