こんな本読みました。

読んで感じて書き出して、そして忘れていく。備忘録ブログ。

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『荻窪 シェアハウス小助川』 小路幸也 著

2012/03/06(火) 19:39:13 小路幸也 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 立て続けに新刊を読ませてくださる小路さん。ファンとしては嬉しいのひとことです。
 このお話は、特に、疲労が蓄積している社会人の心によく効きます。サプリみたいです。ああ違う、漢方か(笑)
 ひとりひとりが背負う過去、隠した心、認める勇気、流されることと流れに乗ること…心に響くキーワードは読む人それぞれに委ねられているけれど、太古から連綿と続く普遍的なものは、みんなきっと遺伝子のなかに受け継いでいるでしょう。
 生きるとは。働くとは。
 しばし自分の心に問いかける、そんな物語。

 
 

火。
プロメテウス的な。

プライド。

自信。
再生。

弱さをバネに。挫折を強さに。

箱庭療法。

個の集合体。
平成の大家族。

錦市場みたい。




読んでるうちにぽこぽこと浮かんでくる言葉を書き留めてたんですけどね。

象徴的でしたね、「火」が。事件のことだけじゃなく、全体のテーマというかイメージ。
熾火、ストーブ、マッチ、そして魂の火。
燃えつくされたあとに甦る不死鳥、とまではいかない、ささやかなわたし達の「生きる、火」。
それが、再生の物語。シェアハウスと共に。


何かに負けて挫折して。
自分に価値を見いだせなくて。
自分に何も無くて。

そんな人達が、わざと集められて一つ屋根の下で共同生活をする。

相良さんはまあ、小説でいうところの作者、神の視点のようなポジションなんですが。
神様は、ノアの箱舟に乗る人間を選んで、あとは人間の生命力と魂の力に任せた。
それが、シェアハウス小助川に住む、佳人さんや茉莉子さん、恵美里ちゃんに亜由さんに今日子さんに大吉さん、そしてタカ先生。あ、広い意味で相良さんもか。

家も、家族も、共同体も、人生も運命も、心も、みんな生き物。生きてる。
だから。
生きるための、最低限のルールは必要。
そのルールというか、人生訓を、まだ若いのに隠居状態のタカ先生に語らせることで、今の時代に合うように説得力を持たせてあって、うんうんって頷くんですよ。
親とは別に、尊敬する人とか、ネットの付き合いだけでもいません?そういう、素直になってアドバイスを受けられる人って。
そんな人が大家さんって、いいじゃないですかw
住んでみたいと思わせられる。上手い設定ですよね!

恐れること。畏れること。それが、火。
170ページのタカ先生の、セリフ。
「火は、無条件で怖かった。~~中略~~つまり今は家の中に無条件に怖いものがない。~」
ハッとしましたね。
雷親父ってのも、最近は絶滅危惧種じゃないですか。
佳人くんが中学生でお父さんを亡くしてから、父親というものを尊敬も怖れもできないこと、に繋がってますよね。
怖いものがない、ということは、存在を乗り越えるための目標がもてないんだなあ、と。
銀英伝で飲んだくれの父親を心の底から軽蔑していたラインハルト君が、一番怖れていたのはアンネローゼお姉様だったから、姉薔薇様が連れ去られてからは家の中に怖いものがなくなってしまって、怖いものは、理不尽を強いる社会そのものに向けられたような感じ?←余計に分からんわッッッ!

仕事をがんばれ。
生きることをがんばれ。
自分を、がんばれ。

小路さんのお話だから、いい人や可愛い人や素敵な人がわんさか出てくるんですが。
事件の流れで、「悪意」の話が出てきて。
良くない人も現れます、が、存在として影と伝聞が出てくるのみで、キャラクタ達の前には姿を見せません。
それがきっと、住人の心をパニックから救ったんですね。
現に恵美里ちゃんは引っ張られたしね、若いだけに悪意に免疫がないから。
それはきっと佳人くんも同じではなかったかと思うのですよ。ヘンにじじむさいし茫洋と達観としてるから視点人物としてそんなのではマズイんでしょうけど、たぶん。

タカ先生は、タカ先生だけが、「意地悪」という言葉を何回か使ったのが、妙に印象的です。
そして、「意地悪」の別の言い方も。
これは、人間関係で煮詰まったときに、きっと効くと思います。
何でこの人はこんな言い方しかしないの、私にこんなことさせるの、意地悪な人、そう思ったときに。
この人も人間なんだ、って、そう思えって、ことかな。

最初のところで、書き留めた言葉に、錦市場、とありますが。
錦市場って、生き物なんですよ。
あの細く狭い路地一本に、ちっちゃいお店がハーモニカみたいに繋がって、それぞれの商売をしてるんやけど、「錦市場」という共同体を形成していてそれは生き物みたいに絶えず動きがあって。
老舗の懐かしさと、新しいお店の新鮮さが渾然一体になってて。
シェアハウス小助川は、錦市場みたいやなあ、と読んでるあいだ、思ってました。

わたしのツボは、大吉さん。
あの不安定さをアフロで隠して、三十代で既にひとの二倍もの体験をして、今はシェアハウス小助川を支えに生きる。
タカ先生に支えられて、佳人くんを導いて。大吉さんに寄り添いたい人はきっとたくさんいるだろうにね。

小路さんの作品はどれもそうですが、この物語も、ご飯が美味しそうです。
それも、なんてことない毎日の日常ご飯。
薩摩揚げとか。お鍋の味とか。お味噌汁の具とか。
わたしが思うに、食べることは生きることですから、食べるシーンが美味しそうな小説は、心も満腹になるんですよね。
その描写を疎かにしない小路さんは、やっぱり強くて優しい作家さんです。

既刊の、『COW HOUSE』をちょっと思い出したけど、この新作はたぶん、あれよりシビアだと思います。
住人ひとりひとりの背負ってるものに呼応する読者は多いでしょう。
そして、物語のなかの、どのシーン、どのセリフを胸に抱いて、胸をあたためようか。
読む人を選ばない、普遍的で平成の雷親父っぽい(笑)、オススメの一冊ですwww


(2012.2 新潮社)
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