こんな本読みました。

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『犯罪』 フェルディナント・フォン・シーラッハ 著

2012/02/07(火) 17:28:30 フェルディナント・フォン・シーラッハ THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 …アマゾンでのこの本の書影、著者名が長いとさくっとカットして訳者名だけ書くってどういうこと?それも、「訳」って入れてないから、それだと国内作家の作品だと思い込んでしまいますよ?酷すぎる。もうちょっとさー、丁寧な仕事しようよアマゾン。 ま、それはそれとして。
 昨年末の各ミステリベスト本で軒並み上位にランクインしたこの作品。(もちろん、本ミスには全く入ってませんが。当然ですね本格ミステリじゃないもん)遅まきながらやっと読了。
 いやー、なんというか、じわじわくる。すごかったとかよかったとかいう言葉より、忘れがたい独特の短編集、という感想をおくります。



ドイツの弁護士さんが、実際にあった事例を元に書き上げたそうですが。
フィクションなんだかノンフィクションなんだか、その微妙なラインの上で、読者は息を呑んで読み進めていくしかないような…。
こういう事件が実際にあったなんてねえ、予算不足でテキトーに作ったバイオレンス映画より怖い…。

で、凄惨な事件の被疑者の弁護を頼まれて接見して、事件の背後にあるもの、なぜこんなことになったのかという流れを、淡々と、本当にただ淡々と書き綴ってあるので、小説読んでる気がしなかった。

確かに、犯罪者なんですけど、やっぱり人間で。
同情したくなる人、やむなく犯罪に手を染めてしまった人、様々なんですが。

どれも印象深いんですが、特にわたしが好きなのは、「ハリネズミ」と「サマータイム」、「エチオピアの男」かな。
特に「サマータイム」は、本格ミステリとしても十分成立するくらい!いやこれは驚いた。
あと、「棘」、これは精神的にクるものがある。読んでるうちに自分がそんな環境にひとりぼっちにされて、こうならないなんて言えない…。

中に、ちょろちょろと日本人、日本の文化、そういう日本的なものが出てくるんですけど。
……ちょっと誤解があるというか、ズレてる感じ。
「ニホンといえばニンジャ!スシ!アニメ!ソニー!ニンテンドー!」みたいな、通り一遍のイメージではないんですよ。ただ。
日本について、どういう印象をもってるんでしょうか…?とちょっと訊いてみたい。
でも、日本の漆についての独特な価値観が軸になってる、というのは、日本人にも分かりやすいのに、事件の悲惨さは想像を絶するレベル。これが実際にあったというなら、日本独特の価値観は人間を狂わせる一面があるのかもしれない。

被疑者の弁護を担当することになって事件のあらましやら関係者の聞き取りやらを重ねて…という作業を経て事件を最初から再構築させる役割をもって、三人称の形で記述してあるんですが、三人称だからという以上に感情的な表現を削ぎ落としてあるので、被疑者の弁護をするときにありがちな情に訴える弁護士さんというより裁判官に近い印象。
弁護士は被疑者にかけられた容疑について弁護したり無実を証明したりするのが第一義なので、たとえその証明によって真犯人が浮かんでこようがそれはあずかり知らぬこと、という割り切り方が徹底していて、プロはすごいと思いました。

参審員制度、検察と弁護士と職業裁判官プラス捜査刑事という珍しいポジションの捜査官の存在…など、ドイツの司法制度って、なかなか面白いなあと思います。前例や判例を金科玉条のように奉る日本の司法とは違って、フェアだし臨機応変だし人間味がある。
こういうことを、素人の読者にもわかるように、それでいて説明調で退屈にならないように、絶妙な按配で書いてあって、確かに弁護士さんだけではもったいない文才だなあ!と感心しました。

犯罪者をクローズアップしてはいるけど、クライムノベルとも違う、もっとあたたかな、……なかなかしっくりする言葉が出てこないのが悔しいな…、えーと、人間のための物語。というか…。
んーーー!もっとわたしにボキャブラリがあればなあ!(涙)
神様が人間を許すためのものではなくて、そんな都合のいいものじゃなくて。
人間が人間の精神の極限を知る、その暗い湖のほとりに、そっとこの本を置く誰かの手、振り返ってその手の主を確認したいけどもう姿はなくて、ただ座り込んでこの本を読んで。
あと五分だけじっとしていよう、何か変わるかも…と、何かを信じようとする気持ち。自分なのか、家族なのか、神様なのか、信じたい相手は人それぞれでしょうが。
うまく言えないけど、追い詰められた人が見せる、人間の底力、そんな感じでした。



(東京創元社)
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