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『姫の竹、月の草 吉井堂謎解き暦』 浮穴みみ 著

2012/01/11(水) 15:52:19 浮穴みみ THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 以前アンソロで初めて読んだ浮穴みみさん。ずっと気になってた作品でした。ようやく読めた。
 やっぱり、このかたの文章好きだーwww




長編かと思ってたら、連作短編でした。
武家出身ながら町のしもた屋で暮らす、吉井数馬さんと奈緒さん兄妹を軸にした物語。
これだけだと時代小説かと思うでしょうが、時代小説が苦手だったり馴染のない人でも大丈夫なくらい、あんまり時代小説っぽくないです。
で、謎解き、とあるのでミステリ?んーミステリー風、と言った方がいいかも。でも、ちぐはぐな感じはなくて、一編を除いては日常の謎系ですね。

ネタばらしになるのであまり突っ込んでは書きませんが、この兄と妹の切ない関係は、女性作家さんならではのプロットだろうし、女性読者には胸に残るんじゃないかなー。
もっと粘着質に書けば、安っぽい昼ドラ一直線なんですけど、やっぱりアンソロ初読時に感じたとおり、浮穴さんって静謐で品のある人間関係を描くのが素敵です。重すぎず軽すぎず。でも、じわじわと胸に沁みて心に残る。

読み終えたあとにこのタイトル「姫の竹、月の草」を思い返してみると、本当にガラス細工のような儚さが込められた、素敵なタイトルだなあと感心しました。数馬さんと奈緒さん、ふたりのことなんですが、こんな美しい喩えって…ほう。

季節の描写も美しくて素晴らしいですwww
和歌が出てくることもあって、本当に綺麗。溜め息の出るほど美しい四季の移ろい。
江戸時代、今の東京は世界でもトップクラスの人口密度だったそうですが、にもかかわらず人々はのびやかで生きることに一所懸命で。
昔に戻りたいとは思わないけれど、このストレスの少なさは(お上からいろいろ制限が課せられていてストレスといえばそのことだったに違いない)、便利で豊かで潔癖なまでに清潔な現代のわたし達は引き換えに何を失ったんだろう…。

「謎解き暦」ということで、某メジャーな文学賞とった暦の作品みたいなものなのかなと思ったら、暦や天文学は数馬さんの探偵役としての武器というか知識として使われていて、それが出すぎず引っ込みすぎず。常にそこにある、という感じですね。
ということは、天文学や暦と、奈緒さんという存在は、イコールってことかな。

数馬さんの豪放磊落で、また優しくて時に弱くて、いつも奈緒さんのことだけを気にかけているなんて、たいていの女性は惚れますよ惚れましたよwww
で、学者バカというか天文バカというか、変に伝統文化にこだわらず西洋のものでも良いものは進んで学ぶところもいいです。
そういう知識欲が探偵としてのバックボーンですしね。
一方の奈緒さんも、美貌なのはそれとしても、優しいし空気読めるし、でもやっぱり怖いものもいっぱいあって、ほっとけないよねえ、こんな女性が近くにいたら。
教え子の悩みを汲んで、自らお屋敷に奉公に行って真相を探ろうとする度胸のよさとお兄さんに隠し事するうしろめたさのせめぐ様子もね、これは数馬さん怒れないです(笑)

奈緒さんの秘密と、それゆえの兄妹の寄り添い方が。
教え子とその親たち、ご近所さん、幼馴染や研究仲間、そして亡き母を知る意味ありげな視線の蕎麦屋のおかみさんまで、みんながこの兄妹のことを見守って心配して、その優しさのなかで二人は生かされてる。
数馬さんの学識を惜しんで身分を回復させようとする気持ちも、多少の婚期は過ぎても縁談を持ち込む気持ちも、全てを知って感謝して、二人が出した結論が星になって。いつか宇宙に輝く連星になりそう。

【寿限無】のアレがコレだった、というのは確かどこかでも見た気がするんですが、数馬さんが口にするとこれは切なくて萌える…!
唯一、惨殺死体のでてくるお話、【ベルレンス・ブラアウの佐保姫】、これもかなしい母と子の物語。
根っからの悪人が出てきません。みんなかなしい。
お上の締め付けに抑圧される市井の人々の鬱屈や不安感は、今のわたし達の時代の投影だし、だからこそ、吉井堂を中心としたあたたかい人間関係だって現実にありそうであってほしくて。
時代劇のような勧善懲悪の分かりやすいドラマ仕立てよりももっと、わたしの心に寄り添う、静けさとあたたかさと絆の深さを、ひたひたと感じながら読んでました。

現代の日本なら当たり前にあるもの、おかしくもなんともないもの、それは江戸時代には怪奇現象だったり人の境遇を左右さえする。お砂ちゃんの「醜女」が実はアレだったとは…今なら適切な処置をすればOKでも昔は人間らしい扱いさえしてもらえないことに繋がるなんてねえ。
というように、設定が上手いんですよね。登場人物たちも数馬さんや親切な人に助けてもらって真相を知り驚く一方で、現代の日本に生きるわたし達読者も「そんなことが不思議や怪奇になるのか!」と驚く。
時代小説はそういう楽しみ方なんでしょうけど、「謎解き」である以上、そのサプライズが大きいんですよね。

この兄妹の続きをもっと読んでみたい気持ちと、このままそっとしておいてあげたい気持ちが半々です。

特に女性におすすめの、切なくて優しい物語でした。


(双葉社)
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