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『東京ピーターパン』 小路幸也 著

2012/01/11(水) 15:37:58 小路幸也 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 …恥ずかしいことを告白しますと、わたくし、この作品を読んですぐに、ピーターパンてどんな話だったか思い出せなくてググりました……アホや(涙)


 



ものすごく現実的。現代的。
小路さんの今までの著作を振り返って、一、二を争う現実感を描かれた作品じゃないかなと思います。
デビュー作のパルプ町シリーズや昨年の傑作のひとつ『猫と妻と暮らす 蘆野原偲郷』のような異能力者(あえて超能力者とはいわない)が出てくるわけでもなく。
『東京BW』のように明るく暖かい、太陽のような物語でもなく。
めぐりんシリーズや『空へ向かう花』のように死者を中心に展開することもなく。
『B.A.M』や『わたしとトムおじさん』みたいに騒動を楽しむような余裕もなく、『キサトア』や『僕たちの旅の話をしよう』のように子どもたちの物語でもない。『早坂家』や『DOWNTOWN』、『リライブ』や『COWHOUSE』とも違う。

ああもう作品数が多くて全部書ききれないけど。

本当に、今、東京のどこかでこういう出来事が進行していそうな感じ。

プロローグの出来事が、登場人物たちを結び付けていくわけですが、この冒頭のこれは、わたし達読者のリトマス試験紙のようでしたね。
一夜限りのバンドを結成することになる、その経緯のなかで、茉莉さんと聖矢くん姉弟のような考え方をするのか、シンゴさんやコジーさんのような反応をするのか。

最初に書いたけど、本当に現実的で現代的なんです。
でも、「ピーターパン」なんですよね。
大人になりきれない、なりたくない、子どものような魂で。
いつまでも子どもじゃいられないとみんなが知ってるからこそ、あがくわけで。

時間って、残酷で、優しいですよね。
不可避のくせに、ひとりひとりの気持ちに合わせて引き延ばしてくれたりもする。

音楽シーンのトップにまでのぼりつめたシンゴさんが何故ホームレス生活を続けるのか、その気持ちは同じ人生を歩いてみないと分からない。
ホームレスというおよそ文化的生活を放棄してるのに、文化的生活の根幹である「節度」を意地でも保とうと努力しつづけるパラドックス。ひとを不快にさせない、人間としての品格。
イシさんの人生に糊代がなかった分、ますますシンゴさんの「伝説」が引き立ちます。

で、そのイシさんがこれまた……確かに上司さんの言うように「余裕がない」人で、かろうじて倒れずに作り笑いしていられるのは音楽のおかげで。コジーさんよりも年上なのに、それでもイシさんとシンゴさんとのジェネレーションギャップは極端だと思う。

一途だったコジーさん。一番好きなキャラでした。「根っからイイヒトというには、ちょっとだけ暴走しがちの人で、諦めの悪い人」(←ひどい)「でもラクな道に流されずに自分を信じられる強い人」(←フォローした)
コジーさんはでもそうやって正の方向で諦めなかった人で、それは吉川さんも同じで、たぶん聖矢くん茉莉さん姉弟のお父さんも同じで、音楽を支えに生きてきた人は、感情や思考をコントロールする術を自ずと身に付けてきたんでしょうね。

ジャンルを問わず音楽を軸にした物語というのがある意味体育会系で爽快感を味わえるのは、そういう風に暴走しないでコントロールしてくれるからかもしれないなあと思いました。

シンゴさん、という神様のような伝説のミュージシャンの存在が、一夜限りのバンド結成、となったわけですが、いやー…もったいないなあと思う一方、こんなに刹那的で完璧なバンドが伝説として残るんだろうなあと思うと、涙を拭いて拍手を送りたい。
姉弟のお父さんがキーマンでしたね。この人がいなかったら、こんな伝説は生まれなかった。
むしろお父さんより正義感が凝縮した娘と息子って(笑)

シンゴさんと吉川さんの、静謐で思いやりに溢れたやりとり、吉川さんの後ろで同じように頷く上坂さん、シンゴさんに歌う場所を提供した店長の越路さんの乾いた優しさ。
無自覚美少年(笑)聖矢くんの引き篭もりになった経緯の、いじめに対する血を吐くような告発。茉莉さんのこれまだ無自覚な才色兼備(笑)
物語の中心のにわかバンドメンバーから脇キャラまで、隅々にまで小路さんの目配りがきいたキャラクタたちが、涙が出るほど優しい大都会の片隅のワンシーンです。

Twitterとか「中の人」とか、iPodとか打ち込みとか、今のこの時代の当たり前の言葉がぽんぽん出てくるんですが。
小説、本というのは、時が経っても残ります。書かれた当時のままで。
このさき、十年後くらいに読むと、たぶんもうTwitterも廃れて「中の人」なんて死語になってて、アップル社の製品もどんどん様変わりしてるだろうし、つまり、古びていくんです。
そして、いずれ、「LPレコード」と同じような存在になる。
小路さんは、その古びていくものへの愛惜の気持ちを込めて、この物語を書かれたんじゃないのかな、とちらりと思ったりしました。
全てのものが色あせていくとしても、でも、音楽は、古びないって。
いい音楽、魂をかけて瞳を輝かせて作られた音楽というのは、いつまでも歌い継がれる。
小路さんが愛してやまない、往年のロックスターの、魂とグルーヴを放つ名曲のように。
この作品も、小路さんがこれまでに書いてきた物語やこれから紡がれていく物語も、そういう魂とグルーヴ感とともに、読み継がれていくことを心から祈ります。

この一夜限定の曲名とバンドの名前、これでもう完全にヤラレました…!
『東京バンドワゴン』だけじゃなく、小路さんの著作全てを追っかけてるファンにとっては、待ち焦がれたタイトルが!
てことは、角川書店からまず書き下ろしを1冊書いてから、という約束、順番にそって、次に角川から出るあの作品は、どこかでこの『東京ピーターパン』とリンクするってことでしょうかwww

この物語の、誰がピーターパンで、誰がウェンディで、誰がフック船長か。それは読者それぞれで違うはずです。
誰もがみんな子どもの魂で。
誰もが大人になることを受け入れていく。
『東京ピーターパン』というタイトルも、表紙カバーのイラストも、読み終えてみればなんとピッタリ嵌まっていることかと感心しました。

コジーさんが探している「キネ」氏、にドキドキしたひと、お友達ですね♪(←TM NETWORKは聖域です。ちなみにわたしはウツさんが好き。ですが、九十年代のTKプロデュースは好きくない。あくまでTM。…いかん暴走した★)


(2011.10 角川書店)
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