こんな本読みました。

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『探偵ザンティピーの仏心』 小路幸也 著

2011/11/14(月) 02:45:20 小路幸也 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 わーいwザンテさーんお久しぶりーwww
 …などと暢気にページを開いたら、のっけから予想外でびっくりしました。いやしかし、これこそがハードボイルド☆
 前作『探偵ザンティピーの休暇』から一年後のお話です。前作未読のかたは、先に読んでおいた方がぜったいいいです。
 ザンテさんのお江戸言葉といい、その器の大きさといい、『東京バンドワゴン』の勘一さんのアメリカ人版な印象がますますつよいので、『東京BW』ファンのかたにはぜひともオススメ!





えーと、まずね、ネットでポチッて、やっと届いたかと包装を解いてこの本を手に取ったらば。
す、すんまへん吹きました……いやこのオビが!まるで土ワイや火サス(あ今はもう無いんだった)や、あさみみつひこさんの二時間ドラマばりの惹句で☆
温泉、湯けむり、失踪した女…いやー長年のうちにパターン化した刷り込みってこわいw
もっとも、作者である小路さんご自身が、そういう感じにしようと狙われたのかもですが☆穿ちすぎ?

で、前作も感じたことなんですけど。
このザンテさんのシリーズは、ザンテさん一人称です。
小路さんの作品はほとんどが視点人物の一人称なので、それには差異はないはずなんですけど…、なんていうかこのザンテさんのシリーズは、Twitterで小路さんのツイートを読ませていただいてるような感じがします。なんというか、小路さんの素に近い、のかな?気のせいかな。

初期作品の『ホームタウン』も日本のハードボイルドでしたが、やっぱりアメリカ人が主人公であること、ザンテさんの仕事が日本を舞台にしてはいますが、もちろんアメリカの事務所や先輩や友人たちとのやりとりも出てくるので、さすがアメリカってハードボイルドの本場なんだなあ、と思うくらい、ストレートなハードボイルドです。ええと、ハードボイルドって何回書いたっけ?なんかゲシュタルト崩壊してきたんですけど……。

それと同じく小路さんの作品の特徴、子ども達がみんなめっちゃいい子!
現実にはこんなよく出来た子はそうそういないと思うんですけど、だからこそというか、小路さんがどれほど子ども達をあたたかく見つめているかがよく分かります。
そして、このシリーズに出てくる子ども達もそうですし、『HEARTBEAT』のあの子達、『僕たちの旅の話をしよう』のあの子達もそう、みんな、「少年探偵団」なんですよね。で、中にひとりリーダー格の子がいて、小林少年のポジションで。
探偵さんを助け、ときにはスパイみたいなこともして、その危険性や責任をちゃんと理解したうえで楽しんでる。
ザンテさんが大の子ども好きということもあって、子ども達とのシーンは、ほのぼのします。

ただ。
前作もそうでしたが、お話そのものは、その明かされた真相は、かなりシビアで重くつらいです。
思えばちゃんと伏線あった!うっかり読み飛ばしてた箇所もあって、しっかり覚えていれば真相の半分くらいは自分で気付けたのにぃ!と歯噛みしました(苦笑)
そして、ここで、ミステリとハードボイルドが分かれるんでしょう、ミステリならたとえどんなむごい真相が暴かれても関係者のほとんどはその悲しい事実を知ってより深く心に傷を負うんですが、ハードボイルドの場合、というかザンテさんの場合、知らせたくない人や知らなくてもこのまま幸せにいられる人には真相を明かしません。直接かかわった人はしょうがないですが、知らなくていいのならそのほうがと判断した人には隠す。そしてその秘密を墓場まで持って行く覚悟を徹底して見せる。
探偵、というものが、ただ機械のように真相を暴いて終わり、という装置の役割であるミステリに対して、ぐっと人間的ですよね。
ザンテさんも、事件の中心部に居た人も、魂かけた覚悟です。悲しいだけじゃない、清々しさも十分に感じます。

ところで、わたしさっきから、「ミステリ」と「ハードボイルド」を分けて書いてますが、わたし基準のこだわりです。
「ハードボイルド」は広義の「ミステリー小説」には含まれますが、「ミステリ」とは少し違うと思ってます。
ミステリの探偵は自称だったり素人(例・本業は作家など)だったり学者だったり行きがかり上だったりするのに対し、ハードボイルドは大抵は私立(プロ)探偵です。
また、探偵が謎を解くのは変わりませんが、たとえば安楽椅子探偵ものや、日常の謎(殺人事件の起こらないもの)をミステリとするなら、探偵がほぼ確実に外に出て(刑事のように足を使って調べる)、時に危険に晒されるハードボイルドは、かなり幅を拡げますよね。なのでハードボイルドを含める場合は、「ミステリー小説」としたほうがいいかな、と思うわけです。本格ミステリ作家クラブと日本推理作家協会の違いのようなものです。はい。

真相が明らかになって、思ったのは、「灯台下暗し」という言葉でした(笑)
過去の真相も、ザンテさんが見舞われた災難のとっかかりや過去へのヒントの撒き方も、振り返ればすぐそこにあったよ!という。
にしてもザンテさんて、耳がいいから何ヶ国語も話せるという特殊能力を抜きにしても、素晴らしく頭の回転はやいよね!
スパコンとまではいわないけど、コンピュータ演算能力のような。本格ミステリの探偵が脳内でパズルのピースを一つずつカチッカチッと嵌めていくのとは対照的です。頭の回転が速くないといけないのは同じなんですけど、動かし方の違いというか。

タイトルの「仏心」てどういうことかと思ったら。
途中までは、ツヨシくんの家というかお寺の修行僧のコスプレして僧侶の体験するからかと単純に思ってたんですけど、違いましたね。
ザンテさんを、「神仏」として見せたんですか。
罪を悔い過去を悔い懺悔の涙を流す人が、御仏にすがって手を合わせるように。
過去のつらくて重い記憶を、ザンテさんに懺悔することで少しでも心をラクにしたいという気持ち。
前作同様、過去をずっと背負ってきた人たちに、もうあまり時間はないんでしょう。だから、ザンテさんが来日すると知ったとき、それが御仏の思し召しかと思ったのなら、それは間違ってない。仏様が本当に、懺悔するタイミングを用意したんだと思えたのは自然なことだと思います。

キリスト教社会のアメリカの人であるザンテさんですが、むしろ日本への親和性が高くて、神父様や牧師様よりお坊さんになる方が似合ってる気もしますねえ(笑)
ザンテさんの目や心を通して語られる、日本という国の美しいこと。日本人という国民の素晴らしいこと。
日本人が忘れかけてる美質を、親日家のザンテさんにどこまでも褒めてもらえて、これは逆に襟を正して受け止めたいです。
小路さんがザンテさんに語らせたのはたぶん、消えかけてはいるけれどもまるっきり絶滅したわけじゃない、わたし達日本人が生まれ持つその遺伝子を、自然も文化もひっくるめて、次の世代に、子ども達に、手渡さないといけない。それが大人の義務。

わたし達大人の世代で、日本を潰してなるものか!という、気概と、覚悟だと。

小路さんらしい作品なのはもちろんですが、日本という国をもっと大切にしたいと思わせてくれる、素敵なシリーズですwww
また続編があるといいな☆☆☆



(2011.10 幻冬舎文庫書き下ろし)
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