こんな本読みました。

読んで感じて書き出して、そして忘れていく。備忘録ブログ。

スポンサー広告 > 『真夜中の探偵』 有栖川有栖 著
有栖川有栖 > 『真夜中の探偵』 有栖川有栖 著

スポンサーサイト

--/--/--(--) --:--:-- スポンサー広告 EDIT
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Comment (-)

『真夜中の探偵』 有栖川有栖 著

2011/10/17(月) 12:12:09 有栖川有栖 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 書き下ろし新作というと、ゲットしたらもう我慢できずに一気読みするのが常のわたしが。
 いつになく、ゆっくりゆっくり、読みました。
 読み終えてしばらく、余韻で心がじんじん痺れました。
 ソラのこの探偵(修行?)物語をシリーズで読めるなんて嬉しいなあwww
 犯人が誰かとかトリックがどうとかにはまったく触れていませんが、ああこの人は犯人じゃないのね、というネタばらしには十分になっております。くれぐれも読了後にわたしの感想にお付き合いくださいますよう、心よりお願いします。
 ミステリ好きのマナー、モラルとして、ぜっっったい書かないからねッ!真犯人の名前なんてッッッ!(←アク解、某ドラマの原作の感想で頭抱えたからさ……★)






火村先生の後天的な必然性、江神さんの情の深さゆえの解きほぐしかた、とは違う、まさに「探偵の業」としての存在であるソラ。

誠パパの弱さと脆さ。明神警視の慧眼と余裕。対極の立場なのにたぶん相似のふたり。明神警視、この人も家に帰れば父親なんだという反転。明神氏がソラを複雑な思いで追いかけ続けるのは、もしかしたら彼自身にもソラと同年代の娘がいて、ソラのような強さを隠し持っている可能性を見せ付けられるからだと思う。

言論統制、思想統制、国民総平均化という強力な制約下の息苦しさとマグマの溜まり。対する中央権力の側の正義。

少女が背伸びをすることの痛ましさと儚さ。感性ののびやかな時期を不自由な世界に抑圧されることの理不尽と反逆の若々しいエネルギーに、大人が真っ向勝負できることなんて実は少ない。

『名探偵コナン』に通じる、世界の縛り方。高校生が薬飲まされて死ぬはずのところがちっさくなっただけで生き延びて結果組織から命を狙われるから表立った行動はできなくなったけど、毛利のおっちゃんやそこらの手近な人に麻酔針ぶちこんで推理を披露するという定型。なんで小学生が事件現場をチョロチョロしてるんだとか、おっちゃんや刑事さんたちをわざとらしく誘導したりとか、時計型麻酔銃とかキック力増強シューズとか、始まった当初は「なんでやねん!」と突っ込んだ諸々が、シリーズが長く続いた今では当たり前になって誰も突っ込まなくなってる。
ソラがなるべく人の名前と顔を記憶しようと強く意識するのも、警察に反目し逃れようとするのも、探偵になろうと決意し努力するのも、日本が分断されてわたし達の世界とはほぼ裏返しの世界であることも、シリーズが続けばそれが当たり前になると思う。こういう世界設定の必要がどこにある?というツイートを見たけど、わたしは逆に、なんで別々に考えるの?と聞きたい。

社会システムの建前ではなく私情によって探偵の存在を憎む人を初めて身近にした探偵未満のソラ。探偵の存在を真夜中にたとえた仲介役の押井氏。信念があって探偵狩りをする明神警視もそれはたぶん教育の賜物なだけで、若い刑事と同じく自分自身の心と頭で感じ考えたことはないと思うな。
探偵の苦悩を知るのはプロの探偵だけ。

押井照雅氏とその仲間達、森脇弁護士、三瀬さん、そして明神警視も、ソラに楔を打つ役割。ヒビを入れ、砕き、そして形を整える。
ソラの心の中の両親は、彼女を褒めるしかしないから(ソラのパワーの源泉だけにこれはしょうがない)、厳しすぎるほどに辛辣な言葉の数々を浴びることで、ソラは探偵としてより奥深い人格をもつことができるような気がする。特に三瀬さんは、いい意味で裏切るキャラクタだったw

つまり、この世界の、この時点での日本は、ソラの住む日本と、あらびっくり独立しちゃった日ノ本共和国こと北海道と、日本をさらに分断しようとする勢力なわけね。
で、「BC」、これが、日本と日ノ本共和国両方にとってのアキレス腱で、そのカギを握るのが朱鷺子さんなわけか。
空閑家は、親子三人がそれぞれに分断されようとしてるのね。三瀬さんがこれで終わりとは思えんしなー。ていうか、団体は団体として、彼個人の感情ではソラの味方な気がする。

わたしはミステリ好きですが読む専門でトリックのあれこれについて偉そうなことは何も言えない。だから滅多にトリックについて書くことはないんやけど、今回のこのトリック(アリバイトリックも含め)の伏線と全体像は、さしずめマトリョーシカのような感じ、かな。

京都の描写が痛かった……たぶん、こういうことになってた確率はかなり高かったはず。

夕陽丘、新夕陽丘に反応したのはわたしだけじゃあるまいwww

第一作目の『喇叭』より、読みやすく感じた。いや世界設定は息苦しいんやけど、有栖川先生の筆致が、まるで学生編のように瑞々しく作家編のように苛烈で、いい感じにブレンドされてるなあと思うことと、フーダニットでありながらキャラクタが人間らしく自然に物語世界を闊歩していて、ミステリじゃない一般小説としても十分に読ませる熟練された技術。
あと、夕陽の情景や真夜中の闇の描写が素晴らしい!さすが、「夜を描く作家」www(文庫版『暗い宿』解説より/笑)
しかも、ラストがもう涙が出そうなくらいに美しい……!

印象的なセリフが多かった。

かつて朱鷺子ママがソラに言ったという、
「一番つらいとき、苦しいとき、その原因になることは通り過ぎていたりするの。だから、こわがらなくていい」(101ページ/第2章)

ソラが明神警視に切った啖呵
「私は世界を嫌っていません。世界なんていうのは人間の心の中にあるものだから、人間の数だけあって、戦うとしても自分の心の中のことだし、その人が死ねばその人の世界も消えます」
「そんなものを相手にしていません。(中略)目の前にある現実の社会を相手にしているから」(221ページ/第4章)

三瀬さんがソラに諭したなかの
「犯人を突きとめればいい、というものじゃない。きみのご両親は、事件をどのように処理すればいいかを考えながら探偵をしていたはずだ。そこを一番大事にしていたかもしれない。きみもしっかりとした思想を持ったほうがいい」(327ページ/第6章)↑これなんて、ソラへの応援にしか聞こえん。

この、『まよたん』で確信した。わたし、明神警視って嫌いじゃない。ついでに三瀬さんもポイント高しwww

最近、Twitterやらブログやらで原発のことなどについて国や官僚たちに都合の悪いことが書かれていたらプロバイダに削除させよう、とか、官僚が大ミスコミと組んで目障りな(ということは国民の側に立ってる)人を失脚させる、とか。いろいろキナ臭くなってきたけど。
でもまだ、オネエキャラは大活躍だし政府批判してる番組が動画で世界中に配信されてるしわたし達は当たり前のように方言を話してネットやコンビニって言えるし。
言論統制や思想教育が当たり前の、隣国のあっちやこっちは、こんなふうに言いたいことも言えず就きたい職業にも就けずまた職業に貴賎があって、国民は徹底的に管理されていて、ソラのような少年少女がひとりくらいは居るのかも…と思いました。

さてさて、来年春に刊行予定という第三弾、『論理爆弾』、エピローグでちらりとそれらしいキーワードがありましたねw楽しみ楽しみ♪♪早く読みたい~~早く次の春が来ないかねえ!(その前の冬は……)


(2011.9 講談社)
スポンサーサイト
Comment (-)

ページの最初に戻る

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。