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『皐月鬼』 田辺青蛙 著

2011/10/17(月) 12:11:40 田辺青蛙 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 読み終わっちゃった……もっと読んでいたかったなあ!
 シリーズ最終巻というわけで、著者あとがきもあります。どういう経緯でこのシリーズが生まれたのか、とか。
 タイトルの「皐月鬼」ですが、皐月ちゃんがずっと主役というわけじゃないです。ただ、皐月ちゃんの存在がずーっと静かに全編の根底に流れていて繋がってる。皐月ちゃんがいるからこの世界観が成立する、そういうお話です。





なんと切ないネバーエンディングストーリー!

この『皐月鬼』は、どちらかというと章立てのほとんどがスピンオフのような感じ。

ただ、意図的に時系列を書いていないので、この1冊に込められた時間がいったい何百年分なのかが曖昧。それだけに、皐月ちゃんの旅が、わたしの今生きてるこの時代でもまだ続いてるような気がする。
紫陽花の花を見るたびに、ぽやんとしたちっちゃい鬼の女の子と河童の姿を探しそう……。

皐月ちゃんや猫先生たち妖鬼もなかなか齢をとらないのでそうそう変わらないんですが、人間という生き物の特質もそう簡単には変わらないんだなあ。
皐月ちゃんが村人から袋叩きにあうシーンは、つらかった……。こういう群集心理は、鄙びた村に住むひとも都会に住むひとも一緒か。
と、ヒリヒリする痛みを感じつつ読んでました。新聞やテレビなどの大マスコミもネットマスコミやネトウヨたちの煽りで、不安やストレスをぶつけてもいい存在だと認識されたらもう社会的にも抹殺されてしまう今のご時世。そっくり。謝るぶんだけこの村人たちの方がまだマシとはどういうことだ。

縁の不安や苦悩も、皐月ちゃんの気苦労や家族を思う心も、猫先生なりの手回しも、狐妖の過去と現在も。そして村人たちや道士にいたるまで。
それぞれが、悩み惑い怯えながら、必死に生きてる。

狐妖さんの住んでた山の環境が激変したとか、さっきも書いたけど村人たちが見舞われる訳の分からない疫病の恐怖とか、わたし達の世界の事情に通じるエピソードもあるし、健気に頑張る皐月ちゃんと布団を応援したくもなるし、

雨のカーテンの向こうに見えるような世界の物語ですが、じっくり感じながら読めるシリーズです。

ところで。

ネネ。

アンタ、皐月ちゃんよりよっぽど鬼や!(苦笑)

悪いけどわたしはこんな子はとっととどこかにやるね。ネネ一人でも十分生きていけるもん。
皐月ちゃんに感謝こそすれ、いくら魂が火の山のねねこであっても酷すぎやしないかい?天の邪鬼でクソ生意気なことしか言わないくせに縁のことが大好きで、縁と離れるのは皐月が連れて帰るからって理由で「おまえは嫌い」という子ども論理が、生まれ変わりのような河童になっても影響するなんてねえ。

ただ、後半は、皐月ちゃんを罵倒しながらも導く役目なんですよね…それが最終章でよく分かる。ネネはきっと、こうして鬼や妖しを見ても驚かない人間のところに皐月ちゃんを誘導していってるんだと思う。
物言いや態度のひとつひとつは腹が立つけどな!(笑)

縁がどうなったのか、それは分からないまま。

それと、村人たちの皐月ちゃんへの密やかな反感と憧憬や、皐月ちゃんには隠されてた親戚(!)の悪意や、皐月ちゃんを何故構いつけるのかという理由をひた隠しにしてる狐妖とか。
それぞれの感情や思惑が、読者と、猫先生や縁といった、皐月ちゃんを大切に思う存在にだけ剥きだしになる。皐月ちゃんは何百年と生きていながらそれを知らないまま。

世間知らずな鬼として長い長い時を生きるということが、終わらない旅と真摯で健気で折れない心を持つヒロインには必須要素なんですね。

皐月ちゃんとネネは、今でも、大事な家族を探して、長い長い旅の途中。
布団が代替わりするほどの時間の中を。

最後になりましたが、この三作目を読んでて、お餅と胡桃味噌を食べたくなったです。
スイカ、にしんそば、そしてお餅、胡桃味噌……。

人間もですが、妖鬼も河童も、「食べること」は大好きで大切で、そして生きるうえでの何よりの愉しみなんだなあ…としみじみ思いました。

清流のほとりで、紫陽花の花の陰で、にしんそばの屋台で、皐月ちゃんと布団(小布団)にひょっこり出会えたらいいなあ。
 


(角川ホラー文庫)
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