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『毒蛇の園』 ジャック・カーリイ 著

2011/10/17(月) 12:11:13 ジャック・カーリイ THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 『百番目の男』『デス・コレクターズ』に続く、カーソン・ライダーシリーズの三作目。
 今月カーリイの新刊がーシリーズ四作目が出るーーwwwひゃっほう♪♪などと喜んでおったら、なんとこの三作目をうっかり読み落としておりました。なんでだ?!ええもう急いで読みましたとも。新作の四作目が傑作だ、などという評判を目にしておりますので。
 …読み終えて、なんで読み落としてたか分かった気がする…(苦笑)





お兄ちゃんが!あの、ジェレミー氏が出てこないー!ちょろっと弟が述懐してるだけ……そりゃインパクト弱いわ(爆)

ということで、サイコな前二作とは違い、カーソン・ライダーとハリー・ノーチラスの相棒コンビが陰惨な殺人事件にあたる、警察小説のような感じですね。

でもこの作者、ジャック・カーリイというひと。
シリーズ一作目の『百番目の男』ではイロモノ扱いだったそうですが(わたしはちっともそんなふうには思わなかったですけど。ものすごく緻密でイカレててガチガチの本格ミステリだと)、三作目ともなると筆致が安定してきたのか読みやすいんですよね。たぶんシリーズを最初から読んでなくてこの作品から入ったとしてその読みやすさに引き込まれると思う。

なんというか、本格ミステリというジャンルでくくるにはもったいない、「小説」を読んだなあって気になるんです。ミステリとしてはもちろん、ストーリー全体のリーダビリティが巧いんですよ。
ヘタな本格だと、伏線を頑張りすぎて展開が唐突だったり読者が置いてけぼりくらった感があったりする場合もあるんですが、カーリイさんというひとは、読者の腕をがっしり掴んで離れるなよって言ってるみたいに。
事件の陰惨さとジェレミー氏の突き抜けちゃった人格がシリーズの要だとしても、カーソンとハリーのコンビを丁寧に、でも書き込みすぎることもなく適度に突き放して、ストーリーを自然に盛り上げてる。

とはいえ、きっちり伏線も回収するし、危機に陥ったりとサスペンス要素も堪能できるし、とにかく読んでて楽しいんですよ。
本格ミステリの定型をウザイと思うひとでも、ぜったい大丈夫だと思う。

それと、キャラクタの動かし方が見事。
カーソンとハリーは当然忙しいんですが、シリーズキャラであるジェレミー(の存在)やクレア、カーソンとダニーの関係、ハリーとローガンの関係、どれも無駄になってない。関係の変化が事件の推移と連動してて、無駄なところがない。

事件に関わる相手はみんな隠し玉を持ってて、そのお宝をどうやってゲットできるか、というまるでRPGのような部分もあると思います。

ルーカスという謎の人物が差し挟まれて、カーリイ初心者はこのルーカスが正体不明のシリアルキラーだと思って読むだろうし、カーリイの作品を知ってる読者は犯人だとしても何かウラがあるに違いないと思うだろうし(前作のアレがねえ、アレだったからねえww)。

キンキャノンのプリン頭兄弟の叙述トリックはすぐに分かる。今まで国内ミステリでもさんざん使われたネタ。
ただ、そこにルーカスがどう絡むかで惑わせてあって、殺された精神科医のメモと合わせて巧い具合にミスリーディングされる。

真犯人の狡猾さがカーソンとハリーの想像よりも一枚上手だったせいで、二人とも絶体絶命だったりするんですが、…いやーローガンおじさんの活躍にニンマリ♪そもそも、この偏屈だと思われてたローガンおじさんがアナログ人間だと強調されてたことが、ココで活きますか!って。

警察小説としても、叩き上げのアナログ刑事VS高学歴でハイテクな若手刑事、カーソンとハリーの主役二人がかえって地味な捜査を続けてること、科学捜査のプロや似顔絵のプロに検死のプロ、アメリカらしいITのプロと、誰が敵で味方かはっきりしないなか、警察のプロフェッショナルを堪能できます。

で、横糸である、カーソンの恋愛事情。
わたしは常々、探偵役に愛だ恋だはまったく必要ないと公言して憚らないミステリ好きですが。
このシリーズに限っては、カーソンの私生活もちっきり伏線なんですよね。むーん。

ダニーとの関係、そして…。
わたしはコレでいいと思う。ジェレミーお兄ちゃんの予言を信じてたわけじゃないけど、たぶんジェレミーさんは面会したときに一発で本質を見抜いたんだろうなあ。
だいたい、一作目の『デス・コレクターズ』でのカーソンと彼女(ダニーじゃないよ)の関係って、微妙だったしね。カーソンが一方的に憧れてたっぽい。
ただ、今回いきなりキャラが女性っぽくなって若干びっくりしたけども。こんな人だったっけか?

タイトルの「毒蛇の園」って、読み終えてみるとじわじわクるなあ。
めっちゃ上手い。
キンキャノン一族を端的に表現したミズ・ベイカーさんのセリフもお見事。「片手で与え、片手で奪う。そして最後には儲かるようになってるわけね」
企業家ってそうしたもんだと思うけど、アメリカの富豪のように慈善事業に投資することがステータスな社会では、奪ったり儲けたりするのは与える相手と同じではダメで。歴史の長い国の王侯貴族制度のような上流階級社会ではないだけに、上品かそうでないかは資産の増やし方なんでしょうね。

成り上がりとはいえとにかく自慢できるだけの富を築いた自分達は、なんとしてもその上流階級の仲間入りをしたい、それでこそ社会に認められることになる、という信念だけが凝り固まってるキンキャノン一族。
赤い舌をチロチロさせて、毒々しい息をまわりじゅうに撒き散らして、その恐怖でもって人を支配しようとする歪み。まさしく毒蛇。
ラストは、びっくりしたというより、藪をつついて猛毒の大蛇が出てきて生存競争に勝った彼のぬるりと冷たい蛇の笑いに、なんというか…うげーってなったかな(苦笑)
ジェレミー氏とは別の、イカレたキャラだったなあ。

真犯人の冷酷さと割り切り方も同じようにイカレてるし、要は事件関係者(特にキンキャノン一族に近い人)でまともな人っていなかったわ…。

そんなわけで、大好きなお兄ちゃんは出てこなかったものの、面白く読みました。

さて!
これでやっと新刊が読めるーwww
新作『ブラッド・ブラザー』はそのタイトルどおり、カーソンとジェレミーお兄ちゃんてんこ盛りらしいので、めっちゃ楽しみです♪♪


(文春文庫)
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