こんな本読みました。

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『夜の写本師』 乾石智子 著

2011/09/21(水) 10:39:16 乾石智子 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 ………すっっっっっげぇぇぇええええ!
 『ジェノサイド』以来のコーフンですwwwwなんだこれ!!!
 これもTwitterでフォローしてる書店員さんたちが大絶賛されてた1冊で、ファンタジーなんですがもうすごい!ありがとうありがとう!
 





今の世界史、地球史とは別の、でももしかしたらこの世界が地球上にあったかもしれない、そんな世界。

魔法使いも魔道師も写本師も、それぞれが魔力を持った世界。

そしてやっぱり、骨肉相争い、他国を侵略し、大切なものを奪い大切なものを守る世界。

殺戮と復讐に燃える男たちと、ときに蹂躙されながらも世界を支えることをやめない女性性の物語。

こんな黒々と緻密で、白金のごとく冷たく、炎と水にまかれ、呪詛に喘ぐ世界を紡いだ、この著者の乾石さんて、本当に新人なの?これ、ガチでデビュー作なの?!信じられん……。

梓崎さんに匹敵する衝撃です。
ミステリ読みですけど、ファンタジーはあまり読まないけど、デビュー作でこんなものを書き上げてしまった乾石さんの、このさきが楽しみでもありちょびっと心配でもあり。

いや、ミステリは、世界をそのままでもスピンオフにしても、まったく別の物理法則にしても、謎があってトリックがあって解決シーンがあればミステリですが。
ファンタジーはもう、シリーズものにするか(ゆびわものがたりとかはりぽったくんとか)、いっそSFちっくにするとか。

いやそれにしてもすごい。
体調悪いのに一気読みさせられたわ。
で、そのままの衝動でこうして感想書いてる。

カリュドウの成長が、普通なら瑞々しく青々しくなるべきところ、闇の深淵におちていく中からどうやって人を信じるか笑っているかというとぐろを巻くような悲しみに満ちていて。
復讐のために生き、復讐のために学ぶ姿があるわけですが、そんななかにあっても誰かを尊敬し初恋をし師を気遣い、近道はないと知る彼は、自分で思う以上に成長してるし、また子どものままでもある。

いずれ、直接対決するとき、生き残るのは果たしてどっち?
普通は主人公が生き残り、敵は倒されるんですけど、カリュドウも身近な人の死の責任を負ってるしアンジストなんてもう血塗れだから、どっちが死んでもしょうがない…とか思った。

でも、どうしても悲観的になれなかったのは、さっきも書いたけど、女性性の存在。
エイリャをはじめ、カリュドウを導き嘲り励まし寄り添う女性たち。
そして、敵もまた、母性を宝物に生きてきた。

男性が敵わないとひれ伏す、世界樹のような女性の存在を、呪いの中から感じ取る。
呪いも、守護なのかもしれないですね。

写本、というと、これまた評価の高い『古書の来歴』を思い出すけど、わたしはあれよりこの『夜の写本師』の方がはるかに素晴らしいと思う。
いや『古書の来歴』は、ざっくりミステリーなんで展開は違って当たり前ですが。でも似てるのよ。時空を遡るところとか。そう思うと、この『夜の写本師』のクオリティはものすごい!

魔道師であろうと写本師であろうと、ちからを持たない市井の人々であろうと、生きているものはどうしたって一人では生きられない。
誰かの支えになり支えてもらい、誰かを助けて助けられ、誰かのちからで自分は生かされてる。
自分ひとりで生きていこうとするものの、なんと傲慢なことか。

孤独、がテーマの物語でもあります。

ネタばらしになりそうなので詳しくは書かないけど、カリュドウの仇敵でさえ、読者はたぶん嫌いになれないと思う。どうしても悲しみの影を感じ取ると思う。何度か名前を変えてきたらしいその最後の名前が、存在と魂を縛り付けてきた彼の本質だったのもかなしい。
それくらい、キャラクタも生き生きしてるし、人形のように殺された少女にさえ作者の乾石さんは惜しみなく愛情を注いでいました。このクライマックスのこのシーンは涙が出そうだった。

カリュドウも、アンジストも、孤独だった。アンジストは、自分の孤独と闇を正当化し、全てに祝福されたひとを憎み、求めた。
最初の心を間違えなければ、こんなに長い孤独と惨劇はなかったのに。カリュドウが男として生まれたことは、アンジストへの「赦し」のようにも感じました。

確かに、新人さんならではの書き方ではあると思う。何度かの過去生のシーンは、一人称の時代があるけど、三人称とあんまり変わらない印象ではある。センテンスが短いものが連続してる気もする。
けれどそんなもの、「夢中になって読んだ」という事実の前には、大した瑕疵にはならないはず。ファンタジーの世界を描ききる丁寧さと形容の素晴らしさばかりが残る。

読んで損はないです。
もう今年、何回めですか、このセリフ。

出せば必ずベストセラーな某先生方のはまったく読んでませんが(おい)、それでも今年はこういう素晴らしい作品が多いです。
『ジェノサイド』とこの『夜の写本師』、それと大ファンゆえの強引さですが小路さんの『猫と妻と暮らす 蘆野腹偲郷』は、今年読んだ新刊のなかでも特にすごいと断言します。勢いが加速して止まらない『ジェノサイド』と『夜の写本師』、逆にゆるゆるとほろほろとゆったりした時間のなかに浸っていつのまにか浄化されているような『蘆野原偲郷』。

ともかく。

読んで読んで!きっと時間を忘れて、自分が生きるこの世界もしばし忘れて堪能するから。

そして、最後のページを読み終えたとき、円環がカチリと動き出して新たな輪廻に入ったこの世界の、続編を読んでみたいと心から思うに違いないです。

映像化とかコミカライズされてもおかくしないですよこれ。

はー…久々に鳥肌たちました。


(2011 東京創元社)
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