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『生き屏風』 田辺青蛙 著

2011/09/11(日) 10:24:33 田辺青蛙 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 田辺青蛙さん。最初、なんとお読みするのか分からなくて。以前、大森望氏編集のアンソロジー『NOVA2』を買ったとき(小路さん目当てでしたよもちろん)、田辺さんの掌編も収録されていてそこで初めて、「せいあ」さんとお読みするのだと知りました。ちなみにこの『NOVA2』、小路さんは鉄板として、他に印象深かったのはこの田辺さんでした。
 そのあとからTwitterでフォローしてて(アカウント見ればすぐ分かった。@Seia_Tanabeって)、有難くもあちらからもリフォローしていただいてたのに、アンソロじゃなくて田辺さんの本を初めて読んだ不届き者です。ごめんなさいごめんなさい。
 ホラー文庫から出たものですが、そんなにエグくないです。ホラーファンタジー(という言葉があるのかないのか)だと思いますので、たぶんホラーはダメな人でも大丈夫。


もう、「生き屏風」ってタイトルからソソラレましてね♪
それほど分厚いものでもないし、さらっと読めるかなと思って手に取ったんですけど。

うわーなにこれいい!
怖くないし時間の流れは曖昧になるしキャラクタもみんな素敵だしwww

連作短編というかたちで、「生き屏風」「猫雪」「狐妖の宴」の三編。「生き屏風」は【第15回日本ホラー小説大賞短編賞】受賞作、続く二編が書き下ろし。
でもさっきも書いたけど、ホラー小説大賞受賞、というわりには、怖いと思わなかった。
ていうか、冒頭の一文でびっくりしてちょっと意味が分からなくて何これどーゆーこと?と思いながらぐいぐい読んでた♪
このツカミはすごいなあ。これで続きが気にならない人はいないと思うわ。

村の境界近くにひっそりと住む皐月(※妖鬼)のもとに持ち込まれた依頼。
酒屋の屏風に憑り付いた奥方の霊の相手をしてほしいというもの。

この屏風が不思議で、憑り付いてる奥方はそのままで食べたり飲んだり煙草吸ったりできるし、もちろん話せるからやりたい放題で、酒屋の主人が困ってどうにかならんかと。

いやーいいよねえ、屏風に憑り付く死者の霊。生きてるときと同じように食べたり話したりできる霊。

退屈しきってる奥方の話し相手になれ、というのが皐月に与えられたミッションなんですが、皐月は奥方とうまく向き合ってる。
そのなりゆきもさることながら。

お金持ちの酒屋ということでふるまわれるご馳走を生唾ごっくんで見てる皐月と、遠慮せずにお食べという奥方のお金持ちらしい大らかさ。
皐月がそのように口にする食べ物の描写が素晴らしいわ!
スイカを食べるシーンなんてもう、わたし今度からスイカ食べるときは必ずこのシーンを思い出すと思う!ってくらい、すごい。
珍しくはないはずのスイカがものすごくご馳走で、種一粒でさえそっと摘んでお皿に乗せてみたい。皐月の味わい方がすごくいい。

食べ物の描写の上手い作家さんというと、わたしはまず、よしもとばななさんを思い出します。
最近のはちょっと読んでないんですけど、初期、というかデビュー作からずっと追いかけてて(思えば、わたしが作家買いした初めての人だ)やれパイナップル入りカレーが食べたくなったり(『哀しい予感』)かきあげ丼食べたくなったり(『ムーンライト・シャドウ』)夏のカキ氷もいいなあ(『海のふた』)…とまあこんな感じ。作品それぞれに、テーマになる食べ物があってそれが素晴らしく美味しそうに描かれてる。
ばななさんが、いかに食べ物と食べることを大事に思ってるかが分かって、生きるっていいなあ、とそういう面からも思うのです。

で、この『生き屏風』に出てくるスイカしかり、青梅しかり。
ばななさんとは違う表現ですが、また素晴らしいんだ!
『アムリタ』で「甘い」ことを作品全体にみっしり書き込んだばななさん。
でも、この「こるこると甘い」という表現はなかったわ。なんという美味しそうな青梅!これだけで、汁の滴る甘い梅が一段とご馳走に感じません?こるこるってwww
この部分は序盤に出てくるんですけど、もうこれでわたしのハートは鷲掴みにされました☆

奥方様、わたしも嫌いじゃないなー。皐月と同じく。
屏風がどうなったのかは読んで見て。奥方もりっぱに妖しだし(笑)、妖鬼でも相性ってあるんやねえw

いかん。食べ物の話で長くなった…こんなに字数使ってどーすんだ(汗)
皐月の父親の話とか、いいシーンがいっぱいあるのに!皐月のいないところで、酒屋の主人と愛人と奥方の思いが交錯して、深いシーンなのに!

続く「猫雪」にも美味しそうな銀杏が…っていやいや。
この次男さんが、そこはかとなくエロくてでも何よりも面倒嫌いが優先されるからモメることもなく。
ちょっとシャッキリ座ったらどうえ?と言いたくなりますが、この人はこれで生き延びたというかこうでしか生きられない人なんでしょうね。
雪をこういう風に捉えるのも一興かと。
たとえば、若い人が片想いしてる人のもとに。
離れて暮らす親子の切れない縁のように。
わたしは、冬の寒さに震える野良にゃんこちゃんたちを思いました。彼らをあたためてあげたい、その気持ちが雪になったら本末転倒やんか!ってそれはともかく、肌に融ける雪はそういう、誰かの思いや祈りや妄想なのかもしれません。

「狐妖の宴」の銀華さん。実際に化かされたらへたりこむでしょうが、なんというかこの人(正しくは狐)(もっと正しくは妖鬼)になら化かされてもいいからその舞を見せてほしいなあ。美しいんだろうなあ。
皐月の敵でも見方でもなく、ただ先生と一緒に一段高いところから皐月を見てる。
デカイ猫じゃなくてイケメンにもなれる先生!ウチに来てくださいお願いします!ねこもイケメンも大歓迎さwww
この話にでてくる人間がムカつくんですが、こういう人っているよね確かに。
妖鬼相手だからこうなのか、人間同士であってもこんな風なのか…この娘さんはロクな親にはならんなと思う。モンスターペアレント予備軍。うん。

人間も妖しも、そうたいして変わらないのかも。


面白かったーとツイートしたら、田辺さんから直接リプをいただいて(相互ですからあちらのTLにもばっちり流れてます当然)。
これではずみがつきました、続編の2冊も早く読みます!次の『魂追い』は長編だそうで、楽しみ楽しみ♪♪

ホラーらしくキモチワルイ描写があるとしたら、布団、ですが。
読んでいけば布団もまた可愛いwww
続編でも皐月を守ってくれてるのかな。


(2008年 角川ホラー文庫)
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