こんな本読みました。

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『真夜中のパン屋さん』 大沼紀子

2011/09/02(金) 09:26:16 大沼紀子 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 ツイッターで書店員さんをフォローしてると、コレよかったよオススメ!次はコレ仕掛けるぞー!…とかそういう本をいくつも目にします。こないだの『ジェノサイド』もそう。発売前のモニター募集を散々迷って見送ったのにそういうのに限って傑作だったりして書店員さんたちがもう大興奮でいいから読みなさいとか猛プッシュで。…あんまり好きじゃないタイプの書店員さん推しならスルーしたけど(じゃあなんでフォローしてるのとか聞かないでお願い)、お友達の書店員さんや大好きな書店員さんや誠実なお人柄だと思う書店員さんが揃ってオススメなら読んでみよう☆という流れです。
 ひとつだけ注意。
 これ、夜~深夜に読んではいけませんよ!とにかくパン食べたくなってもうそわそわもぞもぞしてきますから。朝一にパン屋さんに駆け込んでいっぱい買ってしまいますから!理性の働くように、午前中に読んでお昼に買い物に行ってパン買ってきておやつにするのがいいです。
 ………なんの話だ…??


前にも書いたと思うんですが、わたしの妹は、パン屋勤務です。それも、お店のひとつをほぼ任されてる責任者です。
そもそもが、わたしの実家はパン好きで、子どもの頃、日曜の朝、姉妹で家の近所のパン屋さんに駆け込んで焼けたマヨネーズがいい香りのパンや甘いお菓子パンを買うのが楽しみだったんです。
今でもパン屋さんに入るのは家族の趣味みたいなもんだし、妹が持って帰ってくる売れ残りのパンや試作品のパンで、うちの父は生きてます(笑)

だからこのタイトル、『真夜中のパン屋さん』(最近は「まよパン」という略語で通じますよツイッター)なんてもう、わたし読まずに居られないですってば!

うん、本当、パンが食べたいとにかくパン食べたくてしょうがないっ!

というのが読後すぐの感想。
おそらく読者のほぼ全員がそう思うんじゃないかなあ。

タイトルのとおり、真夜中にだけ営業するパン屋さんが中心の連作短編集なんですけど、パン屋さんが添え物になってないの。
いろんなキャラクタが出てくるけど、そのキャラが巻き起こす出来事と、パン屋さんのイーストの香りがちょうどいいパランスw

パン屋さんという舞台が成功の鍵でしょうね。
他にもいろんな業種があるけど、庶民的で馴染み深くて前を通るといいにおいが漂ってる…よく、「匂いが最も記憶に直結する」というけど、焼肉屋さんや鰻屋さんではなんというかお箸とご飯茶碗が欲しくなるでしょ?
両手が塞がるの。
でもパンなら、片手でも食べられる。
あいたもう片方の手で、コーヒーや紅茶のカップを持ってもいいけど、誰かの頭をくしゃくしゃっと撫でてあげるのもいい感じだと思いません?

そんなふうに、美味しいパンをもぐもぐ食べながら、誰かとただ並んで座って、町並みを眺めているような。
これはこのお話の中のことなのか、それともわたしの記憶の光景なのか、ちょっと曖昧になるほど。

茫洋とした雰囲気のクレさんこと暮林さんや自信家でイケメンの弘基くん、とにかくいつも怒ってる希実ちゃん。
それから一話ずつ、キャラが増えていくけど、みんなリンクしてて、最終的には一斉に纏まるんですけどね。

希実ちゃんからこだま、変態・斑目氏、ソフィアさん、織絵さんも弘基さんもクレさんも。
みんな何か抱えてて、その抱えてる重いものが繋がっていく。多くはトラウマやPTSDやけど、弘基さんとクレさんは人格そのものが。

わたし、押しの強い女の子キャラというか肉食系女子キャラって嫌いなんですけど、希実ちゃんは大丈夫でしたw
ていうか、この子は。
生きてきた十数年の短いあいだに、かなりいびつになったけどそれでも可愛い。
ソフィアさんなんてツボったよわたしwww
残念だったのは、斑目氏。最後まで変態を貫いてほしかったなあ!なんでこんなにかっこよくなるのもったいない!←?

出てくるパンの工程とか。
パンに込めた思いとか。意味とか。
そもそもなんでパン屋さん?とか。

ラストは、小麦粉やバターやイーストの焼けた匂いをのせた風が吹きましたよ。

クレさんの人生がなかなかヘヴィなんですが(まあそれは最初から想像つくけど、そうだったのかー!とびっくりする)、たぶん彼一人だったらとっくに押し潰されていた後悔だらけの毎日を、助けてあげようとした美和子さんの心が、弘基さんや希実ちゃんたちを呼び寄せたんだろうと思う。そしてそれを誰も不満に思ってないから、読んでて安心する。

とにかく、無理矢理何かをしたりさせたり、する割にはそんな風に感じさせない巧さがあって、それはひとりひとりの心が共鳴してるからなので、これからまだ難しい人生のひともいるけどでも爽やかな読後感です。
てか、続編あるような気がする。
何しろ、希実ちゃんの母が!
希実ちゃんは少しずつ受け止めてはいるけど、この破壊力抜群なくせに眼力と頭の回転がすこぶるいいらしいハハがたったこれだけなんてもったいない!もっと出番があってもいいのにw

子はどんな仕打ちをされても本能で親を求めるし、親は子を好き勝手にするくせに本能で抱きしめる。
大人は子どもを導いているようで、実は子どもの存在が大人を導いてる。
そんな描写に、なにかを求め続けながら生きている読者はきっと、パンの香りとあたたかさに乗って思い出すシンプルな自分の願いを垣間見るのかもしれません。

パンというものの定義というか、パンの存在をこんな風に優しく愛情たっぷりに読ませる小説、わたしは初めて読みました。
日本人ならコメを食え!という話とは別にして、

美和子さんが弘基さんとクレさんに、二人から希実ちゃんやこだまや斑目氏やソフィアさんや織絵さんに、パンって美味しいよ、と言って聞かせるその言葉。オビにも書いてありますが。
パンを焼ける人なら焼いてみたくなる、食べる専門なら買いに行きたくなる、焼きたてのパンをさくっと食べたくなります!

わたしはまず、実家の妹に読ませて(厳命)、お店の職人さんにも広めて、この「まよパン」にインスパイアされたあたたかいパンを開発させようと思います!

マジです。


(2011年 ポプラ社)
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