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鳥飼否宇 > 『激走 福岡国際マラソン 42.195キロの謎』 鳥飼否宇 著

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『激走 福岡国際マラソン 42.195キロの謎』 鳥飼否宇 著

2008/09/03(水) 11:22:20 鳥飼否宇 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 とある書評ブログでこの作品を知りました。2005年12月刊行。全くノーマークとは、どういうことかな私?
 なんでも、かの『X』があまりにも光輝いていて、その影にすっかり隠れてしまったみたいになっていたそうで。災難ですね本当に。
 めちゃめちゃ面白い作品ですよ!話題にならなかったのは残念すぎるし、もっと読まれていてもいいはず。まだ読んでないかたは是非是非v
 未読のかた、ネタバレは許せないというかたは、これより先にはお進みになりませんよう。




物語の一応の核は、市川尚久、かな。この福岡国際マラソンのペスメーカーとしてエントリーした、かつてはハーフマラソンの日本記録樹立経験者。しかし、長距離を走るにはスタミナが続かず、いつも30キロあたりで失速していた。そんな折、この福岡でペースメーカーの募集を知って、名乗りを挙げた。所属は、一時はトップランナーを幾人も輩出していたが、親会社の懐事情で縮小を余儀なくされた弱小陸上部。このレースには、そのうちの後輩である、洪 康彦(在日韓国人二世で、韓国籍)もエントリーしていた。

北京オリンピックの代表選考を兼ねるこのレースには、花形選手も多数招待されている。
高校時代から実力はトップの小笠原寛明。実業団に入ってから頭角を現し、また二枚目で長身というルックスで女性ファンも多い二階堂公治。地元九州では知名度抜群の谷口鉄夫。またケニアやエチオピアからの外国勢も世界記録を狙う選手が名前を連ねている。
穴馬としては、市川とペースメーカーの選考会で競り合った岡村雪則。「テレビに出て目立ちたい」という志望動機だった為、市川にペースメーカーを奪われた彼は、一般選手としてエントリーしていた。また、学生時代からお互いの存在を知っていた小笠原と二階堂の、トラブルの原因を何故か知っていて、レース直前の記者会見で暴露し、一躍注目を浴びた。

そしてまた、この福岡国際マラソンは、パラリンピックの選考会でもあり、視覚障害者も同時にスタートを切るレースだった。そのうちの一人、野口も伴走者と共に障害者としては幾分早いレース展開をしている。

そんな風に、ランナー各人の思惑、作戦、ライバル意識が交錯しながらレースは進みます。
沿道には、市川をずっと支え続けたマネージャーの松滝洋子の姿が絶えずあり、彼女が作った鈴を付けたお守りが彼を励ましている。

序盤で市川と彼女には、ある計画があることはほのめかされていますが、それは市川のランナーとしての本能が綴られることで、単純に30キロ地点までのペースメーカーとしての役割を超えたものなのだろう、と思い…いえ、思わされます。
また、合間に挟まれる視覚障害者の彼の心の中の声が、構成上、大変重要になっています。

事件は、ライバルの二階堂と小笠原の駆け引きのうちに起こります。
レース途中での、経験豊富なランナーの急死。
先頭集団を先導していた白バイ隊の長田は、異変を察知して駆けつけますが、救うことは出来ずに、死者を見送ることに。そのうち、このアクシデントが事故ではなく事件ではないか、との疑いを持ち、なんと白バイに乗ったまま頭の中で推理を開始!危ないなあ(笑)

色んな可能性を一つずつ排除していって辿り着いた真相は、やはり事件。でも、後に明かされる首謀者は、殺人を計画した訳ではなくただの悪戯のつもりだった。……これは途中でランナーの思い出が巡るうちに顕になる、救いようの無い自己中心的な人格と浅はか過ぎる行動の延長上にあって、なんと本人にも自分の仕出かした悪戯が人を殺してしまったことに思い至らないとは。

そして、その彼が過去に犯した罪が、実はこのレースにも影響していて、その多重構造が見えてくるともう、面白くてしょうがない!
何故パラリンピックの選手がクローズアップされているのか、ものの見事に騙されましたよ!!(実は、しっかり伏線があって、ある部分に引っかかればこの物語の仕掛けが分かってしまう仕組みなのですよ。ギリギリの線ですね)
ペースメーカーとしての市川が自分の走りを見せた時、沈みそうな意識をお守りの鈴の音に引き上げられながらも何故そこまでトップに喰らい付くのか、その隠されていた意図が明かされた最後の最後、ああっっ!と膝を打ちました。
そーだったのかー!ヤラレター!って。

サングラスにも、お守りの鈴の音にも、そしてコースのライン取りにまで全てに意味があって、それが分からないように煙幕が。
ペースメーカーを志願したところから、実は全て計画されていたことなんですね。
ということは、この物語の始めから終わりまで、一貫した影の主役がいるわけで。

うーん、気が付かなかったよー。

死者を出した事件までもが、煙幕の一部なんですから。ミステリ慣れした読者は、この事件の方に意識が持っていかれることを予め計算してあるのですね。

お見事ですよう、鳥飼先生♪
読後感も爽やかな、それでいてしっかり騙されてたのに気持ちいい、素敵なスポーツミステリでした!
楽しかったです♪


(2008.02.25)
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