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『ランプリィ家の殺人』ナイオ・マーシュ 著

2008/09/03(水) 11:19:55 海外ミステリ THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 1996年に刊行された、国書刊行会の世界探偵小説全集の17番目の作品です。
 実はナイオ・マーシュは初読。つい最近発売され話題になった『道化の死』を、読もうかどうしようか迷っていて、試しに昔の作品を図書館から借りてきました。
 読了済みのかた、この作品を手に取るつもりのないかた、ネタバレOKのかたのみ、お進みください。



まず、作者のナイオ・マーシュについての情報すら持っていませんから、後書きの紹介の部分を読みました。
1895年4月にニュージーランドで誕生。趣味は演劇と絵画。学業を終えてイギリスに渡り、その後は二国間を往復して過ごした。
なんでも「1931年の雨の日に、暇つぶしに探偵小説を読んでいて、自分も書けないかと思った事がきっかけ」だったそうな。すごい才能です。

あらすじを自分なりに書こうかと思いましたが、表紙折り返しの部分の文章が端的で一番分かりやすいので、丸写し★

 「心はいつも朗らかながら経済観念まるでなしのランプリイ家は、何度目かの深刻な財政危機に瀕していた。
 頼みは裕福な親戚の侯爵ゲイブリエル伯父だけ。
 ところがこの侯爵、一家とは正反対の吝嗇で狷介な人物、その奥方は黒魔術に夢中のこれまた一癖ある女性。
 援助を求めた一家の楽観的希望もむなしく、交渉は決裂、侯爵はフラットをあとにした。
 ところが数分後、エレベーターの中で侯爵は、眼を金串でえぐられた無残な死体となって発見された。 
 わずかな空白の時間に犯行が可能だったのは誰か?
 はたしてこの愛すべき一家の中に冷酷非情な殺人者がいるのだろうか?」

ナイオ・マーシュが生涯のお気に入りだったという、貴族探偵でスコットランド・ヤードの主席警部、ロデリック・アレンのシリーズです。
イギリスの貴族探偵、主席警部といえば私はドロシー・L・セイヤーズなんですが、マーシュのこのアレンはセイヤーズが二人に割り振った肩書きをアレン一人に授けています。おまけに物静かで、長身の美男子。ウィムジィ卿とは対照的★
部下には実直なフォックス警部、指紋係のベイリー巡査部長と写真専門のトンプソン、警察医のカーティス、アレンの友人で新聞記者、ワトソン役のナイジェル・バスゲイト。(ただ、このバスゲイトは、次第に登場しなくなっているそうですが)

対するランプリイ家が、これまたどーしよーもない一家で、決して悪人ではないけれどもお金に関することを考えるのが苦手な上に、いよいよ困ったら誰かが助けてくれるものだという呆れた家族。
ニュージーランドからイギリスに渡って、旧知のランプリイ家に身を寄せることになったロバータ・グレイは、心配ではらはらしながら成り行きを見守っています。
なにせ、《相続税》というものを全く考慮しないし、その前に知らないし説明も出来ない。…だめだこりゃ。

そんなランプリイ家の中で起こった殺人事件に臨場したアレン警部ですが、この家族にいいように遊ばれているようで、実はしっかりその裏を読んでいるのですから、たいしたものです。「腹を立てたところでむだだよ、ランプリイ一家相手にただの一度でも、頭に血を昇らせたらおしまいだ」ですって(笑)。
作者のマーシュは、セイヤーズがウィムジィ卿を愛したように、アレン警部を王子様のように造形したのでしょうね。

事件も大詰め、アレンが事件の全体像を把握して、犯人の見当をつけたあたりからの進み方はドラマティックで、演出家としても活躍したマーシュの手馴れた感じが窺えます。というより、この『ランプリイ家の殺人』そのものを舞台化しても十分愉しめるくらい、場面転換にメリハリがありますね。

物語のほとんどは、事件の関係者への聞き取り調査の描写なので、全ての手がかりは関係者がいつ、どうやって動いたか、その供述の中に含まれていました。各々の供述の齟齬を見つけ出してアリバイを崩していく、というやりかたです。
ただ、その関係者が多い上に、双子がいたりしてちょっとややこしい。
まあでも、解決場面では伏線がきちんと回収されていたので、何だかよく分からん、なんてことはなかったです。こんなギリギリの犯罪を突発的に組み立てた真犯人の頭脳に驚きますが。現代作家の先生が書いたら、ちょっと無理矢理ちゃうか!と突っ込みが入るかもしれませんね。

そしてそして、何よりも素晴らしいのはやはり、訳者の浅羽莢子さん!
もうなんて素敵な文章でしょうか!
セイヤーズの『誰の死体?』から始まるシリーズ長編の時も思ったけど、女性作家のミステリが苦手な私が何の苦も無くすいすいと読めたのは、間違いなく浅羽さんのおかげです。
ロバータの不安な心も、アレンの快活でスマートな内面も、妙ちくりんなランプリイ家の人々の立ち居振る舞いも、頭にするすると入ってきます。
セイヤーズといいマーシュといい、浅羽さんの訳による作品は、英国貴族の描写が生き生きとしていて、明るくユーモアに溢れていて、イギリスとミステリの密接な関係が不可分であることがよく分かります。
惜しい人を亡くしましたね、ミステリ界は……(涙)

さて。これで、マーシュの作風とアレン主席警部のイメージはつかめましたが、『道化の死』を読むかどうか…。訳者はもう浅羽さんじゃないわけですし、考えますねー……むむ。
その前に、シリーズの他の作品も読んでみたいのですが、図書館にあったかな……?


(2008.02.11)
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