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『精霊火の鬼剣 やわら侍・竜巻誠十郎』 翔田 寛 著 

2011/08/23(火) 13:23:17 翔田 寛 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 うっうっうっ………(涙)
 シリーズを追うごとに、どんどん悲愴感が増していきますよ…。
 面白いんだけど、もうどんどん笑顔が少なくなっていく。誠十郎さんはじめ、主要キャラはみんな自分の信念に基づいて従って行動しているというだけで、どうしてこんなに厳しいんでしょう。
 江戸時代を舞台にはしていますが、よくある捕物帖じゃなく、今で言う表には出せない仕事の依頼をする官僚と極貧探偵のような。相変わらず女性キャラがあまり出てこないので何ですがそれでもシリーズを通して読む価値はありますよwww





これまでにもこのシリーズの感想を書いてきて、毎回ぼやくことですが、主人公の誠十郎さんてまだ二十歳かそこらなんです。
なのにこの過酷な運命はいったい。
人格者の両親に育てられた誠十郎さん自身も素直な人で、だから俗な娯楽や衣食住の楽しみなどにはとんと疎いとはいえこれほど純粋で誠実な人は、それこそフィクションにしか存在しそうにない。だからこそ、もういつ命を落としても不思議じゃないほどフラグが立ちっぱなしということなのか。こんなにまっすぐな人は濁った俗社会では生きていけないだろうということか。

シリーズを読んでいれば、だいたい、見当はつきますよね。誠十郎さんの前に立ちはだかるのは誰か。
義兄だったり尾張藩の黒幕だったり。
その意味では、今回は一際つらかったなあ(涙)

一方で、シリーズ一作目の『五月雨の凶刀』で誠十郎さんの運命が大きく動き出した、親友からの闇討ち、義父の割腹、シリーズを貫く大きくて漠然とした謎の輪郭が、この『精霊火』でかなりくっきりしてきます。
その闇の部分と、尾張藩が果たしてどこまで繋がっているのか。
次回作はそれがキーポイントになるんでしょうね。

で、その次回作でシリーズを終わってしまうのかも…淋しいなあ。

今から終わりを嘆いてもしょうがないので、この『精霊火』について。
ミステリーというよりは、事件の真相、と日本語で書く方がぴったりな気がする。
真っ正直に生きていた庄屋が何故死んだのか。
物盗りじゃなく意図した殺人だったとしたら、犯人は誰で動機は何か。
それを調べる密命を帯びた誠十郎さんですが、もう敵は既に網を張り巡らせているらしいので、読者は誠十郎さんに近付く人のほとんどを信用できないの。庄屋さんの娘と息子以外は。
誠十郎さんを陥れる役目を負ったのは、人の良さそうなこの人?あるいは裏表のなさそうなこの人?

真相はもちろん尾張藩の嶋信綱が大ボスでコイツが暗躍して糸を引いてることに違いはないんですけど、勘次さんの仇の小笠原ナントカいうくだらない奴が実働部隊なんですけど、場所が江戸市中じゃないだけに敵方の手先はどこまで及んでいるのかというのがひとつ。
川面での大立ち回りでとりあえず陰謀を阻止した後、とある人物についての種明かしがあって、そうか誠十郎さんが気付いたのはこれか!と。その問題のシーンがあまりにイイ感じに描写されてたのでスルーしちゃったよ。言われてみれば、確かに、おかしい。

もうひとつのポイントは、やっぱり千恵さん、そして梶田さん夫婦。
想い合った仲の千恵さんと前作『炎天下』で和解してまた将来のことを考えてもいいような雰囲気になってきたけど。
とにかく誠十郎さんはもう、いつ殺されても不思議じゃない人なので、無事に結婚なんてできるのか。婚前未亡人なんて嫌ですよ女性は。
そして梶田さん。
あれほど信頼しあって助け合ってきた2人が、嶋信綱の陰謀で敵になってしまって、いつかは対峙しないといけないのは分かってても、できれば2人とも生き延びてほしい。どちらかが倒れることでしか歩み寄れないのは気の毒すぎる。
この読者の願い。
翔田さんてば、厳しすぎます……。さすが、『参議怪死ス』を書いた人です。

まだ救いはあります。
大活躍の勘次さんと彼を支えるおたかさん。名前忘れちゃったけど顔見知りの十手持ちさんや仕事を世話してくれるしっかりものの娘さん(今回は出てこなかった)。この『精霊火』で庄屋の息子として頑張った七太郎くんもひょっとしたらまた出番があるのかな。なんかシンパシー感じてたからね誠十郎さん。
味方してくれる人はまだ居る。
でも闘いが熾烈を極めてくれば、生き残ってくれるだろうか。
…なんか、いい人たちの屍が累々と広がるシーンが出てきそうで怖いです…。

シリーズを追うごとに、誠十郎さんの、その日その日を精一杯生きる庶民に対する憐憫と愛惜の視線が深まっていって、それは彼が背負う宿命の過酷さと引き換えのご褒美なんじゃないかと思います。
実の両親が健在であったなら、きっと知ることはなかったかもしれない、綺麗ごとじゃない厳しい暮らし。そんな毎日を笑顔で頑張る市井の人々。
複雑怪奇で般若のような血みどろの江戸城の常識をとっぱらい、シンプルにただ生き抜く人々の暮らしの尊さと愛しさを、誠十郎さんの眼を通して感じます。
現在にも通じる、人生と人間へのひとつの答え。

どうか、竜巻誠十郎という綺麗な人が、幸せを感じ取る瞬間がありますように☆


(小学館文庫)
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