こんな本読みました。

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『折れた竜骨』 米澤穂信 著 

2011/06/24(金) 09:24:30 米澤穂信 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 超ーーーー面白かったっっっ!これはすごい!
 刊行された時期がなんちゅーかえらいもったいない気がします。9月末もしくは10月末に出ていれば、間違いなく今年の年末ベストのトップ3には入ってた。1位でもおかしくない。えーと、だから。
 再来年(…よね?来年の5月のじゃ候補に間にあわないからその次の5月。てことは再来年よね?)の本格ミステリ大賞、この『折れた竜骨』が取っても当然です。メモにチェックしとかないと!
 …ただ、感想を書こうとすると、ネタばれを回避するのに一苦労しそうな……楽しい苦労だww
 未読のかたはご注意を☆






ミステリ・フロンティア初じゃないですかね、二段組。その上この厚み。
最初はビビリましたが、いやもう一気読みでした!めっちゃくちゃ面白かった!
さっきも書きましたが、鬼が爆笑しそうなのを承知で来年末の『2012本ミス』の1位とか、再来年の本格ミステリ大賞を受賞していいです(何様)いやもう傑作!
米澤作品といえば古典部などの有名シリーズがありますが、わたしはこれまでの米澤作品の中で、この『折れた竜骨』が一番好きかもwww

作者のあとがきにもありましたが、当初は異世界を舞台に書かれたこの作品、時代を十二世紀末のヨーロッパにスライドさせて、魔法や魔術がまだ人々の間にしっかり息づいていることを屋台骨にしてこれだけの本格ミステリに仕立て上げるのは大変だっただろうと思います。
ジェイムズ・P・ホーガンが(ご本人の自覚があったかどうかは別にして)SFとロジック炸裂の本格ミステリを見事に融合させた『星を継ぐもの』。
三津田さんは刀城言耶シリーズで毎作毎作みっちりとホラーと本格ミステリを融和させてる。
そしてこの『折れた竜骨』はこれから先、「ファンタジーと本格ミステリが美しく融合した傑作」と評されることと確信します。

べた褒めです。
いやもう凄かった!

実は、誰がアミーナの父を手にかけた“走狗”なのか、最初からうっすら見当つくんです。で、中盤のとあるシーンで確信に変わる。
懸賞金付き推理ドラマ【安楽椅子探偵】で、いつも絶対的に揺るがない「犯人足りえる条件」を挙げますよね。それに当てはまらない者から外していき一人また一人と容疑者を絞りこんで最終的に犯人を特定する。
あの感覚、そのまま使えるんです。
なぜなら、「剣と魔法の世界」の設定で、なおかつ「魔法は無条件ではなく、魔法なりのルールがある」から。
そのルールに則って読んでいけば、ストーリーの容疑者たち、探偵役の彼らが追う「容疑者たち」はもちろん、登場人物の全てを疑わないわけにはいかないんです。
おまけに、作者は何といっても米澤穂信☆一筋縄ではいきませんて。
そんなわけで、わたしは最初からアノ人とアノ人も疑ってました。で、中盤で分かりました。そしたらそのとおりでした。いぇいv
じゃなくて。
たぶん、作者ご本人は、ことさら隠そうとはしてなかったんでしょうね。
それよりも、何故この人は“走狗”になってしまったのか。そのホワイダニットの方が強くなるラスト。そのロジックが素晴らしかった!血を吐くような叫びや悲しみと、宿命の遣り切れなさと、信頼関係・主従関係の絆の深さと。ひとつバランスを間違えば一部のマニアにしかウケないパズラーになってしまうところを、人間と魔術師が確かに息づくまでに到達した論理。

暗殺騎士は自分の使い手にする人間の「生き血」を事前に盗まなければならない。
傀儡にするのに必要なものが決められている。
“走狗”は自分が殺人をおかしたことなどの記憶をなくしている。
そして、現場検証により特定された犯人の条件。

これらを、胡散臭い容疑者たちのそれぞれと自然に結びつけ、また“呪われたデーン人”の「呪い」も上手く機能させ、容疑者たちから聴取した内容や僅かな目撃証言も全て使い切り、また中盤でアミーナ達までもが命の危機に晒される毒殺未遂のシーンの不合理すら、ラストですっきりさせてくれます。伏線のあからさまなものもそうと気付かなかったものも全て回収!
何書いてるんだか分からなくなってきたけど、とにかくお見事!

これだけ濃密にロジックが炸裂した犯人特定シーンは、久しぶりな気がします。
ページを捲る手が止まらない止まらないwww

アミーナの父を殺害した“走狗”は誰かというメインのフーダニットだけではなく、堅牢な密室からの脱出という不可能モノ、警告どおり本当に襲来した化け物じみたデーン人とのハリウッドばりの戦闘シーン、その中でもファルクとニコラが霞むほどの傭兵達の活躍となによりアミーナの名領主の娘としての風格。(実はこれらのシーンのひとつひとつまでもがラストへの伏線でヒントにもなってる!凄すぎる…!)
吟遊詩人のバラッドでさえ、あますところなくラストまで使い切ってる!
贅沢で読みどころ満載で、一切の緩み弛みがなく、ミステリとしてだけではなくて物語(小説)としても十分以上に読ませます。もしかしたらN木賞とかそういうタイトルも狙えるんじゃないかとマジで思うよ。

オーラスの、別れのシーン。
装丁の情景、そしてタイトルがこんなにびしっと決まったのも素晴らしいな。

えーとね、そのオーラスの中で、アミーナ・エイルウィンを含むエイルウィン家の秘密も明らかにされてソロンの危機はアミーナの父・ローレントの過去と現在が円環になって未来に繋がるという美しさなんですけど、実はじゃあ何故ローレントは暗殺されなければならなかったのか、暗殺騎士エドリックに依頼したのがソロンを狙う者で「呪い」によって不死に近いデーン人にとってその秘密を知らないということがあるのかな?とちらりと思ったりもしたんですけど。重箱の隅突きすぎですかそうですか。

とにかく。わたしの、オールタイムベスト入り決定!

ああ素晴らしい本格ミステリを読ませていただきました♪至福です。 

(東京創元社ミステリ・フロンティア)
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