こんな本読みました。

読んで感じて書き出して、そして忘れていく。備忘録ブログ。

アンソロジー > 『ミステリ・オールスターズ』本格ミステリ作家クラブ・編

『ミステリ・オールスターズ』本格ミステリ作家クラブ・編

2010/12/15(水) 10:38:48 アンソロジー THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 今年で設立10周年を迎えた、本格ミステリ作家クラブの記念本の1冊。他2冊が、会員の先生方による自著のガイドと、これまで10回を数える本格ミステリ大賞の全選評、という、既読といえば既読な感じなのに比べて、この『ミステリ・オールスターズ』はラストのリレー小説を除き全部が書き下ろし超短編。そのリレー小説にしたって、読んでないという人も多いと思うので、これはもうお得感満載の1冊です。




紀伊國屋書店でのイベントで芦辺先生が仰ってましたが、長編ならいくらでも書けるミステリ作家さんが、そのプライドにかけて30枚という極短い枚数の中で本格ミステリを書いてみようじゃないか、という企画本。
とにかく30枚以内におさまっていればOK、特にテーマもないよただ本格であればという、ユルイ縛り。
編者の芦辺先生は、集まった原稿を分類・流れに分けただけだそうですが、見事に綺麗なアンソロジーでしたwww

第一セクションはオーソドックスなタイプの謎解きもの。
第二セクションは歪んだ心理や心の闇に焦点をあてたもの。
第三セクションは本格ミステリのパロディや、自己ツッコミだそうです(笑)
第四セクションはロジックを突き詰めたらカオスになっちゃったもの。
そして最後は2003年の朝日新聞大阪版に掲載されたリレー小説。有栖川有栖、光原百合、綾辻行人、法月綸太郎、西澤保彦の各先生方。

この第一から第四までがすべて、書き下ろし。
いくら30枚という短編といえども、読み応えはたっぷりですww

一編一編はあっという間に読めてしまうので、興味のあるかた、長編はしんどいけど短編は好きというかたは、是非手にとって読んでいただくとして、くわしくあらすじ書いてしまうのは野暮ですわね。

なのでさらっと、わたしが印象深くおもったものだけ。

まずはなんといっても、トップバッターの深水さんの作品。
この短い中に、よくこれだけ綺麗に仕込んだよねえ。
作中の書き手がどういう状態なのかは読んでいくうちに分かるんですが、さてどうしてそうなったのか?というのがキモで。
こうきたかーー!と。
長編には向かないネタだろうけど、だからこそこの短編でピシッと決まってます。
これまで深水さんの作品読んだことないって人には、こんな感じのを書くんですよーという自己紹介がわりの作品にうってつけじゃないでしょうか。

次の北村先生の!
イベントで仰った裏話、てことはこの脳みそ引き千切れそうな暗号モノを、一日で書いちゃったんですか!うわうわうわ!
それでいて、タイトルからもわかるように、江戸川乱歩へのオマージュにもなってて。凄い!さすがです。

こるものさんのタナトス番外編は、番外編っちゅーてもやっぱりあの双子はそのまんまで高槻さんがオモチャ扱いww
事件そのものは残酷なのに、キャラがはっちゃけてる分その重さをそれほどまともに受けなくて済みます。

鳥飼先生のコレ…は、はははーどうしましょう…★いや鳥飼先生の本領発揮っちゃそうなんですケド…。

で、第一セクションのトリ、山沢さんのはね。
以前、刊行された『離れた家』を読んでたからまあ山沢さんらしい作品、と思えますけど。
これが山沢作品初読だったら、ちょっと昭和の香りが強いかなあ。だからといって鮎川作品ほどのこっくり感もアレで、でもこれが山沢作品なんですよね。うん。

第二セクションの中で、一番ブラックだったのは奥田先生の作品ですね。
で、小島さんの視点コロコロ変わるあの感じの後に、森谷さんの森谷さんらしい女性一人称のみの話を読むと、これは読む人によって好きなタイプかそうでないかに気付くチャンスかもしれんとおもう。
飛鳥部さんのはやっぱり情景もグロいがキャラも怖い(苦笑)

第三セクション。
ここはもう、柄刀さんのが突き抜けてて!
このアイデアを、このアンソロに持ってきた度胸がすごすぎる!
確かに確かに、長編どころか中編でも無理やもんコレ(笑)この枚数だからできたこと。
この本全体の中でも特に異彩を放つというか異形というか。視覚に訴えるし、読者のイメージをかきたててくれるし、物騒な事件でなくても普段からこういう遊びはしてみると楽しいはず。とにかくぱらりとしてみてくださいwww

第四セクションは。
確かにどれもロジック炸裂。
中でもわたしが一番好きなのは、斎藤さんのでしょうか。いいわーこの崩壊っぷりwwwていうか、斎藤さんの扉の著者略歴がね、愉快ですwwこれまでたぶん、斎藤作品は読んだことなかったはずなんですけど、ちょっと読んでみようかな♪

最後はリレー小説。
有栖川先生たちがイベントで仰ってましたけど、ほんまにようこれだけのモノを、一切の打ち合わせなしにリレーしていかれたものです。すごいです。
ちゃんと一人ひとりの雰囲気というか特徴を感じつつ、それでも1本の道筋をずんずん進んでいく様子。
そんでもって、最後の西澤先生のあの、いやーなラスト(笑)爽快感ゼロwww
書き終えた先生ですら、どうなっていくのか分からなかったでしょうね。いやー、リレー小説の醍醐味と完成形を一度に味わえました!


さっきも書きましたけど、本当にお腹いっぱいになるアンソロジーです。
豪華すぎるからでしょうか。
でもここに、たとえば宮部みゆきさんとか東野さんとかそういう、何でも書けて大衆受けが良くてそれでレベルがどれも水準以上というかたの作品が紛れ込んでたら、このバランスは崩壊していたはず。(このお二方は本格ミステリ作家クラブの会員じゃないので、ありえないんですけどね)
メジャーとは言えないけど本格ミステリ好きの世界でなら、という作家さんが多いことが、このアンソロは本格ミステリ好きにとっての成功だったと思います。

わたしとしては、このラインナップに三雲岳斗さんと大山誠一郎さんと三津田信三さんも入れてほしかったけど。スケジュールの都合とか大人の事情とか、あったんでしょうか…。 
スポンサーサイト
Comment (-)

ページの最初に戻る