こんな本読みました。

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『さくらの丘で』 小路幸也 著

2010/11/16(火) 02:05:38 小路幸也 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT

 可愛い赤い表紙、なぜか残暑が厳しすぎるこの時期に、桜のモチーフ(笑)でも夏に出ることにもちゃんと意味がありました。確かに、「女子力」という何が「力」なのかイマイチ説明しづらいけど優しくて新しい言葉にぴったりの、凛とした優しい本です。
 もちろん、誰が読んでもいいけれども、一番読んでほしいのはティーンエイジャーから嫁入り前のお嬢さん。感情移入しやすいというのもあるし、でもそれ以上に、女性として学ぶことの多いお話。肩で風切って颯爽と町を闊歩する女性もカッコイイけど、女性差別じゃなくてただ優しい母性と眼差しを持つ人に憧れるのもいいもんでしょう?

このお話、本当の意味での「男性」って出てこないんですよね。
おじさんだったり町役場のひとだったり、そういう男性はもちろんいるんですけど、そうじゃなくて、「女性性」とでもいうのかな。子どもをまもる、人生を見守る、こころを護る、そういう「守護」の役割の、男性たち。

まあ、満ちるさんのおじさんの楓さん(最初はどきっとしましたよ☆ウチは猫ですが…)の容貌人柄そして生き方がまず、ぐいぐいと分かりやすい力強さではないし。ただ、この楓さんの生き方は、確かに大変だとおもう。その合わせ鏡が、さくらの木がある土地の元々の持ち主の人生ですよね。

ミッちゃんときりちゃんとはなちゃんを、村の宝だと言う、村の人たち。ミッちゃんのおばあちゃんも、厳しいけどすごく綺麗な人で。

出てくる男の人はみんな、戦争を嫌いだとはっきり言う。まだ大きな声では言えないだろう時代に。
お国のためと大切に育てた息子を戦場にかりだされて、息子はお国のために死んでいったと言わなければならなかった時代に。

戦勝国のアメリカ人であっても、戦争を憎む人がいる。
敵国として戦う相手の国民なんだけど、自分達の国と同じ人間なんだと正しく識るアメリカ人もきっといる。
日本のいいところを好きになってくれる人がいる。

戦争なんて嫌い、大嫌いときっぱり言い放つ人たちの物語だから、戦争の申し子(落とし子?)である「男性」らしい男性が出てこないんだなあきっと。

戦争において、本当に許せないのは誰か、を言えるのは、生命を産み落とす女性の特権でしょうが、このお話に出てくる男性もそれを明言するのはやっぱり、女性性の高い男の人なんだろうなあとおもうわけで。
その上で、「男性」として出来ることは惜しみなく助けてあげる、男の人としての優しさも。
楓さん、たぶん実はモテモテですよ?(笑)
…ただ、綺麗なオトコの人の横に立つのは、ちょっと勇気が要るけどね☆


そして、3人の孫娘にそれぞれ託された、鍵。
西洋館、または〈学校〉の、秘密。
建物の所有者の変遷や、関わりのある人物の謎。

実は、かなり綺麗なミステリー小説です。

読んでてどう繋がるのかなーと一応想像もしたんですが、キーになる人物名が過去の章と現代の章に隣り合わせに出てきたあたりから、カチカチと嵌まっていくような。

そうだ、意外におもったことがひとつ。

普通、昭和の、戦中戦後を生き抜いた人の方が、教育というか躾は厳しくて、それは言葉の端々にまで出るものだとおもうんです。
でも、どういうわけか、おばあちゃんたちが娘時代だった過去の章よりも、満ちるさんたちの現代の章が、モノローグの部分が丁寧なですます調になってる。

この書き分けが、ものすごく効果的でした。
過去の章が懐古的なセピア色になるんじゃなくて生き生きと躍動的に迫ってくる、むしろミッちゃんきりちゃんはなちゃんの3人が満ちるさん紗代さん香織ちゃんの孫娘3人の世界を笑いながら見ていて現代側こそがセピア色してるんじゃないかな、と、なんというか双方向の映画のようなイメージ。
もちろん。
その書き分けの意味が、ラストでちゃんと明かされるんですけど。
満ちるさんたちが全てを知ったとき、ですます調よりはぐっとリアリティがあるとおもう、確かに。

ミツさんて、満ちるさんに〈学校〉の思い出話を聞かせて、鍵と〈学校〉を託そうと決めたとき、きっと楓さんが彼女を助けることまで織り込み済みですよね(笑)

そして、満ちるさんたち孫娘3人よりももっと、真実を知りたかったに違いない、彼女。ある意味、一番のキーパーソン。
自分のルーツを知りたいと、まして複雑な家庭環境だと知らされたなら余計にそうだっただろうに、時が来るのをひたすらに待ってた彼女のことをおもうと。

皆で仲良く暮らしましたとさ、ちゃんちゃん♪という御伽噺じゃなくて、やりきれない事実があってそれを〈学校〉の秘密と一緒に封印した、その悲しみを乗り越えて、思い出を磨き続けてきたミッちゃんきりちゃんはなちゃんの3人の強い絆。

満ちるさんたち孫娘3人が、おばあちゃんの思い出話を受け止められるくらい、心の真っ直ぐなお嬢さんたちで、現実にはなかなか居そうもないファンタジーなんですけど、居たって不思議じゃないし居てほしいと思わせてくれる、優しくて柔らかい物語でした。

ラストで、満ちるさんたち3人の孫娘は、おばあちゃんの思い出を宝物に、これからもずっとさくらの丘に集うことでしょうけど、きっと楓さんが必ず一緒にいるとおもう。たぶん、満ちるさんを除く3人の女性のうちの、いずれかの人の伴侶として。あくまで妄想ですけどね。
生命を産み育て、社会を繋いでいく物語だから、社会の最小構成である「家族」を作る視点で読めば。うん。

男性読者が読むとまた違う印象なんでしょうけど、女性(の端くれであるはず)のわたしが読んだら、こういう感想になりました。


(2010.9 翔伝社)
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