こんな本読みました。

読んで感じて書き出して、そして忘れていく。備忘録ブログ。

翔田 寛 > 『やわら侍・竜巻誠十郎』シリーズ3、4、5

『やわら侍・竜巻誠十郎』シリーズ3、4、5

2010/08/17(火) 15:10:04 翔田 寛 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 …溜めたわたしが悪いとはいえ、見出しのタイトルひどいよね(苦笑)ごめんなさい。
 この3冊のタイトルを全部書こうとしたら、↑こうなるんですもん。
 それにしても、なんでネット書評でも書店の棚でも、まったく話題にならないんだろうと残念でならないこのシリーズ。時代小説ファンは多いと聞くのですが…。
 こういう書き方は語弊がありますが、読みやすいんですよ、フォントもでっかいし文章がぎっちぎちに詰まってるわけじゃないし。たぶん、集中してこのシリーズを1作目から5作目まで一気に読んでもそれほど時間かからないはず、で、時代劇を見てるみたいな気分で楽しいです。オススメ。




まずは、シリーズ3作目の『秋疾風の悲愴』から。

暴れん坊将軍ですっかりヒーローな徳川吉宗ですが、やっぱりどこかにしわ寄せがくるもので、このシリーズはその享保年間がかなり締め付けの厳しい時代であったという前提。この3作目は、幕府の財政を諸大名からこれでもかと搾り取る税で立て直そうという無茶をするので、吉宗の治世がぐらついています。
そんな中、江戸でも超有名な《検校》(本文によると、「琵琶による平曲や按摩、鍼などを生業とする座頭らの頂点に立つ」地位の人物のこと)が月のない闇夜に殺された。その事件を調べてさせていた加納久通は、状況に整合性がないことを懸念し、《目安箱改め方》の竜巻誠十郎に隠密に調べるように命令する……。
という1話完結の事件と、幕府転覆を画策しているらしい尾張藩の不穏な動きと、誠十郎さんの不遇をかこつ事になった謎、を少しずつ絡ませながら展開します。

この巻から、誠十郎さんの周囲にも尾張藩の影がちらつくようになり、義兄の康之は既に取り込まれてるし、長屋暮らしで共に支えあったなにより大切な友人の梶田夫婦にも新展開が…。
相変わらず不況で一日仕事ですらなかなかありつけない誠十郎さんと梶田さんたち、それでもあったかい長屋のおかみさんたちや道場主の富樫さんの存在に、誠十郎さんと一緒にホッとする一方で、事件の方は、警戒心の強い用心棒がなすすべも無く殺されている不可解とか。緩急の付けかたがうまいですよ。

これ、事件の込み入り具合と終盤での解し方がいいなあとつくづくおもう。誰一人救われないんですけど。
誠十郎さんが聞き込みをして掴んだ一見バラバラな状況が、暗躍する尾張藩の思惑のもとに全てが収斂していく様子は、まさしくミステリーの常道ですね。
その上で、康之が尾張に取り込まれた事実を知り、敵に自分の顔を見られ、いよいよ誠十郎さんの身辺も危なくなってきたという、おそらく次からはますます苛烈になっていく予感。
梶田さん夫妻が可哀想でしょうがないです。誠十郎さんの存在が梶田さんの運命まで狂わせたんでしょうね…。夫婦とも出来すぎなくらいにいい人なのに…(涙)

さてさて、その嫌な予感が的中する4作目、『寒新月の魔刃』。

相変わらず倹約倹約と無茶を言う幕府にますます不満が募る中、嵐に見舞われた江戸の川に、ふたつの死体が流れ着く。
妻を流されたので助けてくれと縋った、ある同心が怠慢をして見殺しにした、という町人の夫からの訴状を見た加納久通は、誠十郎さんにこの同心を調べるように指示。すると、誠実で人望の厚い、およそ怠慢などしそうにない人物であることがわかり…。

で、不思議に思った誠十郎さんが、訴状を投げ込んだ本人に訊いてみたり。
もう一方の遺体の、弟が、兄が殺されたことを確信して独自に調べ始めたり。
誠十郎さんと、弟・勘次の動きがどこで繋がるのか、というのがね、ちょっと意外だった。間にもう1人挟んで、誠十郎さんは又聞きで勘次の動きを知るんですけど。

この巻は、絵を描くとしたらまさしくエンターテイメントですね。クライマックスが本当にド迫力。
何故、同心たちが助けられたはずの女性を助けられなかったのか、何故、銅の相場が高騰しているのか。
時間のズレ、ピリピリしている荒くれ者たち、茂蔵が決死の覚悟で持ち去った何か。
その全てが、このシーンのためにある。
誠十郎さんを逆恨みして元々捻じ曲がってた人格がもはやぐねぐねになってる康之の思惑、直接の敵・嶋信綱との対峙、加納久通と小松門左衛門との間に確かにある絆、そして、千恵さんと梶田さん…。
誠十郎さんにはもう未来はないかのような、捨て身の闘いの4作目です。

探偵として十分に優秀な誠十郎さんが辿りついた真相の先に、自分の未来がないことまで見えているのが可哀想で…。


で、最新刊の『炎天華の惨刀』。

シリーズ第五弾として続いている以上、誠十郎さんは生きているのは分かっていても、いったいどんな容態なのか。
刀を持たず素手で闘う柔の者として、その身体能力が殺がれていないのか。
もし寝たきりになったとしたら、もう安楽椅子探偵にでもなるしかないよねえ…などと考えてましたよ。

そしたらっ。
誠十郎さん、元気でしたっw
かなり時間はかかったけど、リハビリに励み、社会復帰できましたよ!
……ただし、誠十郎さんが生きていることを味方である加納久通さん側に伝えたいけど、誠十郎さんが誰の密命を帯びていたのかも全て知られているために迂闊に加納屋敷に近づけない。
この巻のラストに至るまで、加納さんサイドは誠十郎さんの生還を知らされずに気を揉むわけで。
その上、前作で尾張藩の大掛かりな陰謀を阻止した功績で、お上・吉宗にまで覚えめでたくなんとしても誠十郎さんに褒美をとらせるんだから早う探せとせっつかれる加納さん(笑)

尾張側の嶋信綱が、主君・尾張公の性格を見切った上で仕えているのと、同じスタンスなんですが加納さんと信綱では天と地ほど何もかもが違います。その対比が印象的。

この巻は誠十郎さん自身もですが、行きがかり上調べ始める事件の方もリハビリですね(笑)
この巻だけは、犯人と共犯とがかなり分かりやすいです。

それよりも、ラストで千恵さんと和解したこと、そして新たに知った、誠十郎さんの実父と義父・千恵さんの父と兄、その秘密の繋がりが次回作に繋がるらしいので、もう今からわくわくです♪
一体どんな経緯で、誠十郎さんは千恵さんの兄に闇討ちにされることになったのか?
また、最後まで分かり合えなかった康之、宿敵・嶋信綱との直接対決、誠十郎さんにはなかなか安穏の日々が訪れないのですが、千恵さんと並んでいる姿があって、それだけでも本当によかったーwww

ええと、1作ごとの事件のことにはほとんど触れていませんが、わざとです。読んでくださいなww
ていうか、ネタばらしせずに感想文らしきものを書こうとしたら、シリーズを貫く謎と陰謀の方にスポットを当てるしかないのですよ(笑)

《目安箱改め方》という役目を帯びてから、次第しだいに嘘が上手くなる誠十郎さん、リハビリの『炎天華の惨刀』では、その密命も嘘もなくただ正直に調べていけばいいことに少し拍子抜けしている様子が、ああ誠十郎さんも男というかお侍さんなんやなあ、とおもう。誠実な人柄は変わりないし俗世に汚れてもおらずバカ正直もいいけど、自分に使命が与えられると男は自分の命を軽く見積もったりどんな嘘もつけるのかな。

《やわら侍》のファンとして、これからもどんどんシリーズを重ねていってほしいけど、やがて来るシリーズ最終巻が、どうか『参議怪死ス』のラストのようなものすごいことにならないように、それだけが心配です★

それと、このシリーズを読んでると、いかに現代のわたし達が飽食の時代に生きているかがよく分かります。
いくら極貧生活とはいえ、武道の師範でもある誠十郎さんの長屋での食事風景は、質素を通り越して栄養失調まっしぐらですよ(苦笑)
その分、調査中に食事に入るお店ではまあ贅沢しない程度には食べてるので、これって経費で落ちてるのかなー(笑)とかそんなこと考えてみたりもする。

あまりにもよく出来た人格の誠十郎さんなのですが、忘れてるかもですが実はまだ二十歳そこそこです。
この時代ではそれほど子どもでもないでしょうが、今で二十歳っつったらまだまだです。まだ育つ人もいます(笑)
もっとちゃんと食べて、若者らしく少しは羽目をはずしてもいいような気がするよ、わたしのようなオバサンから見ると。
千恵さんと幸せになってほしいなー。


スポンサーサイト
Comment (-)

ページの最初に戻る