こんな本読みました。

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『僕は長い昼と長い夜を過ごす』 小路幸也 著

2010/08/17(火) 15:02:49 小路幸也 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 やっと読めた小路さんの新刊!既に手元にあるのに、諸々の事情でどーしてもゆっくり読めなかったのです。
 はーーー。驚いた。
 小路さんのミステリーでありサスペンス風であり、飄々としたハードボイルドタッチという作風をミックスすると、こういう感じになるんですねえ。
 どこか『HEART BEAT』を思い起こさせる流れなんですけど、書いて書いて書きまくっておられる小路さんなので、なんとなく雰囲気に余裕というかゆとりが感じられたんですけど。いい意味でですよ?こなれたと言ってもいいのかも。
 ネタばらしはしないで感想書くのは無理なんですが、頑張ってみます。
 (でもやっぱりネタばれってますので、なるべく読了後にお付き合いくださいませ)



んーと、ミステリマガジンでの連載の謳い文句(という単語が適当なのかは分からないです)、《五十時間起きて二十時間眠る》主人公・メイジくん。森田明二(26歳)。
単行本に纏まるまで連載を追いたいのをじっと我慢してたんですけど、そうかー。
もうちょっと、タイムサスペンスの要素が強いかなと想像してました。

んーでも、なんかハヤカワらしい感じ。同じミステリの老舗の東京創元社にはあまりない印象です。
どこがどうとは言えませんが…、強いて言うなら、「正体不明の敵がいっぱい!」(笑)。東京創元社のミステリは割りとかっちりしてるので楽しむポイントを読者が選ぶんです。ロジックか、トリックか、犯人当てか倒叙サスペンスか。ハヤカワから出るものはもっと視界が広いというか自由というか、だから風呂敷を畳み切れなかった作品もちらほら(自分比)。

札幌出身で、兄と妹の三兄妹。
その、「五十時間起きて二十時間眠る」という病気(一種の睡眠障害には違いないですが、さて病気にしては元気だし☆)のために、そして両親、特に父親の存在のせいでますます結束が固くなった三人。
幼かった彼らをあたたかく見守る、工場で働く職人さんたち。

とにかくその妙な睡眠サイクルのせいでマトモに9時5時の勤めができるわけもなく、それでも諦めなかった彼を理解し採用してくれたボス・バンさんの影の仕事、「監視」に励むメイジでしたが、そのターゲットの急展開に巻き込まれて、メイジはいきなり二億円を手にすることに…。

謎の「種苗屋」ナタネさん、ネットで知り合ったハッカーのリロー、会社内でも明るくて気のいい人たちに囲まれて、うまくやっていたはずの人生が、メイジたち兄妹の両親の事件も絡み合って、めまぐるしく状況が変化していく。

監視対象者である三島の不可解な行動と、二億円の存在が、ミステリーで。
メイジくんの、一度寝てしまうと何があろうとちょっとやそっとじゃ起きない睡眠サイクルと、大金と自分をどこまでも追ってくるという身の危険がサスペンス。

でもわたしが一番おお!あのシーンがココに繋がるかーー!と驚いたのが、ナタネさんの昔話でしたー。
そりゃそうですよ、アレ伏線だったの?!って。なんちゅーか、キャラクタの描写にすっかり惑わされたなあ。
一応年齢設定があるので、ちゃんと計算していれば分かったはずなんですけど、それまでにもう愉快で強引なキャラ達に振り回されすぎてて。
(あ、メイジくんとナタネさんが札幌に飛ぶ道すがらに、ナタネさんの軽い自己紹介のなかに年齢も申告されてましたよね。105ページで。まあまだナタネさんをどこまで信用していいのか分からなかったメイジくんは聞き流したか信じられなかったのかな。281ページのラスト一行。)
あーいやそれがなくても、メイジくんの年齢がヒントになってたのかー☆

メイジくんも相当過酷な過去を背負ってそれでも前向きに生きてるけど、この物語に出てくるメイジくんの味方の多くがメイジくんにも負けないくらいの重い記憶を携えて、その上でメイジくんにシンパシーを感じて好きになる。
普通は、自分の思い出したくない過去を見せ付けられるようで敬遠しがちなんですけどね、当のメイジくんがそんな暗さを感じさせないのが気持ちいいんでしょうね。
いくら辛い記憶を持ってても、だからって自分が卑屈になったり性格歪んだり自分を可哀想ぶるのは、見ていて気持ちのいいものじゃないですもん。

もうちょっとメイジくんの睡眠サイクルがネックになって危機一髪!の展開なのかと思ったらほとんどディテールで、やっぱり肝心の部分は、逃げないで前を向いて建設的に事態を打開していく目線とこころの強さ。
小路さんの作品にしては珍しく、まったくフォローされてない悪い人がいるんですが、(父親でさえ、ケン兄さんにほんの少しだけ理解されようとしてましたからね)、この人その後どうなったんだろう。この人サイドで書けばクライムノベルになってしまいますが、もう手出しできない時点で姿を消して、じゃあこのあとバンさんとメイジくんの影の仕事はどうしたんだろう(苦笑)
あ、そんなヒマないのか。1年で二億以上を稼ぐソフトを作らないといけないということは、バンさんもメイジくんを契約扱いじゃなく正社員にして起きてる間はフルに動かないとね。バイトなんてしてられないわ。

えーと、読み始めた前半部分でうわーヤダこの娘、と思ったのは、はいそう麻衣子ちゃん。
わたしの苦手なキャラ全開だったんですもん!

で、小路さんも執筆途中で気が付かれたんでしょうこの麻衣子ってキャラはみけねこが一番嫌がるタイプだなーキャラ読みしやがって~とかなんとかで、ちっと舌打ちなんかして、じゃあ麻衣子を好きにさせてやるぞ待ってろよーみけねこめ~!とか。←嘘ですありえないので安心してください。いやいやいやそんなわけないから。妄想もココまでくると羞恥心より逆に感心するわ我ながら。

ミステリばりの展開になると目を輝かせて話に参加するくせに(笑)、話が進めば進むほど自分の分相応の姿でそこにいるので、最後にはかっこよく思えちゃったじゃないですか☆
からかわれていちいち真っ赤になるわりに、ハナからメイジくんのプライバシーを知ってるちょっと品がないねお嬢さんな心理を見せたり、冷たいような当然なような複雑なメイジくんの心境に顔を顰めたりと、妙にちぐはぐだったんですけど、まあメイジくんがそれでいいならいいのかな。

トリックやロジックといったミステリとしてのお約束はなくて、背後関係や二億円の謎を追うミステリーであり家族小説でありロードノベルでもあり。
きょうだいの絆、過去と現在の交錯、そういう手法は、パルプ町シリーズや『ホームタウン』を思い出すし、そしてラストの伏線の回収や驚き具合は『HEARTBAET』っぽい。でもそれらを、現在の小路さんでしか書けない滑らかさですいすい読ませます。

実を言うと、ラストの真相は、どうとでも取れる、というよりは、これ以上絞れないようになってますよね。
ナタネさんか、メイジくんか、それとも三人のうちの誰かか。
誰でもおかしくないし、かといってもう知る必要もない。

真相が明らかになったところで、誰一人救われない、むしろ知らないままの方が丸く収まる。
なんでもかんでも白黒つけなくても、グレーのままでいいこともある。
大切なのは、今を生きる自分達が、重いものをお腹の底に飲み込んで、前を向いて明るく建設的に考えて進むこと。

余談ですが、ツイッターのハヤカワの編集者さんたちのツイートにあった、ナタネさん萌える~という感想は、わたしはちっとも持てなかった。
それよりも。
新島刑事であり、安藤くんでしょう♪♪
過去は明かされないからこそ萌えるんですもん、じゃあナタネさんはというと、このラストで納得しちゃったよわたし。
安藤くんのお兄ちゃんにちょっとぐっときたwww

自分は何をしたいのか。自分は何を守りたいか。何の為に決心するのか。
そんなシャープさと、友達っていいよね♪というあたたかさとが交じり合った、不思議な読後感の小説でした。

コーヒーはともかく、ミスドのチョコファッションが食べたい!(笑)


(2010.6 早川書房)
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