こんな本読みました。

読んで感じて書き出して、そして忘れていく。備忘録ブログ。

スポンサー広告 > 『蝦蟇倉市事件2』 
アンソロジー > 『蝦蟇倉市事件2』 

スポンサーサイト

--/--/--(--) --:--:-- スポンサー広告 EDIT
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Comment (-)

『蝦蟇倉市事件2』 

2010/05/01(土) 11:42:15 アンソロジー THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 ようやく『2』を読みました~。ずっと読みたかったんですけど、諸事情あってなかなか手に取ることが出来ずにいたもので。
 『1』は明らかに大山さん狙いで読んでいて、初っ端の道尾さんのアレで今も引きずるほどある意味話題になってもいますし、私にとっては伯方さんのように初読の作家さんに触れて以前のタイトルも読んでみようかと興味がわいたんですが、この『2』に関しては、正直なところ『1』の続きだからという気持ちしかありませんでした。ここに深くお詫びします。
 全部がぜんぶ印象深いというわけではないですが、これはイイかもーwと思える作品と作家さんに出会えたことは、やっぱり収穫です。




前回と同じく、まずは収録順に。敬称略です。

【さくら炎上】 北山猛邦
【毒入りローストビーフ事件】 桜坂 洋
【密室の本 真知博士 五十番目の事件】 村崎 友
【観客席からの眺め】 越谷オサム
【消えた左腕事件】 秋月涼介
【ナイフを失われた思い出の中に】 米澤穂信

以上、六篇。

まずは、トップバッターの北山さんから。
【さくら炎上】
本格ミステリというよりはサスペンスに近い気がする。ただ、動機はエグイなあ。
北山さんの作品というと、国内ミステリの名探偵最弱かもしれない音野クンのシリーズや異世界の少年検閲官たちのアレとかをパッと思い浮かべるんですけど、ああいうロジックやトリックの炸裂じゃないですよね、ミッシングリンクものなんですけど犯人と被害者の身元そのものは最初から分かってるので、夢オチというバカミスにならない限りは信用できる。なのでホワイダニットの一点に尽きます。いやでもこれは…伏線はちゃんと出てたけど、かなりエグイ動機にぞわりとした。

【毒入りローストビーフ事件】
タイトルからしてバークリーの『毒入りチョコレート』のパロディと言えると思いますけど、展開までちゃんと踏襲してあって思わず拍手!(訂正・追記。私、ちょっと勘違いしてたみたいで…んーと、これはメタなのかアンチなのか?ネットで調べてみたらたぶん、この作品の場合はアンチミステリに近い気がします…合ってる?)
いやこれは面白かった!この中で一番好き。
目の前に被害者が死んでて、容疑者は自分達3人の中にしかいなくて、1人ずつ推理を披露すればそれぞれがみんな犯行可能で、ラストには動機も出てくる。…この動機の出し方(特に薬屋の)が若干ギリギリかもしれないなあとは思うものの、でもちらりと一箇所だけ書いてあったところが効いていたり、演繹法に帰納法、物理系ロジックと、パズラー好きにも楽しめた作品でした。誰が本当の犯人かは明かされないという曖昧なラストは『1』の道尾さんの【弓投げ~】と似ていますが、道尾さんのと違うところは、誰が犯人であっても納得できるのでモヤモヤ感が残らないトコですね(笑)
桜坂さんの他の作品も読んでみたくなりました。

次、村崎さんの【密室の本~】ですが。
ええと、この短編から五番目の秋月さんのまで、『1』の大山さんが作り出したらしい不可能犯罪捜査課の真知博士がフィーチャーされてます。

そして、それもちょっと可哀想な使われ方かも…(苦笑)バークリーのシェリンガム氏ほどではないですが、えーとね、ストリブリングのポジオリ教授っぽい。

まず、【密室の本】…うーん、これはどんでん返しを狙ったものなんでしょうか…?ていうか、真犯人の動機がキーポイントなんでしょうけど、トリックそのものは簡単。トラップなんてモロバレでしょう。
次の【観客席からの眺め】に真知博士は登場しませんが、この蝦蟇倉市という異常に不可能犯罪が多い田舎町そのものがガジェットとして作用しているので、真知博士の存在も否定できないでしょう。
そして【消えた左腕事件】ですよ、これは完全に真知博士は狂言回しキャラにしてやられてます。ていうか、真知博士自身が狂言回しなのか。

なんにしても、蝦蟇倉市という不可能犯罪のデパートみたいな土地を創造して、そこに真知博士という専門の探偵がいれば、大山さんのように正統派に動かすことも、こうして裏をかかれる役回りに使うこともできるので、ユルイ縛りのアンソロジーを生かしたラインナップになってます。もちろん『2』だけを読んでもいいけど、先に『1』を読んでからの方が、より楽しめるという趣向。

【観客席からの眺め】…コレに関しても、やっぱりどんでん返しと言えるのかな。あんまり好きな話じゃないし、ミステリーにしてはゆるゆるですが、残酷ではある。そしてコレが一番、蝦蟇倉市という特殊な設定を客観と主観に分けているのでところどころで夢から覚めたような気になる。もしくは、蝦蟇倉市の特殊な状況の中で不可能犯罪の軽さを自覚的に使ってるというか。

まあそれは、次の【消えた左腕】でも同じですが、こちらは『1』の伊坂さんの作品にも共通する要素があって不可能犯罪のデパートである蝦蟇倉市を隠れ蓑にしているので、真知博士を悩ませる事件とは別に、大きな皮肉に満ちている。それにしても、この秋月さんのを読んでいてやたら中国茶が飲みたくなったよ(笑)いやそれだけじゃなくて、事件の謎の方も、それぞれが推理を組み立てるシーンでは刑事ドラマに出てきそうなアリバイトリックに頭を使う。…惜しいのは、そのアリバイトリックが事件の真相と乖離してるんじゃないかと思ったところですかね。

そしてラストの、米澤さん!うわーい、これは嬉しい!
【ナイフは~】れっきとした本格ミステリであり、また『さよなら妖精』のスピンオフとしての痛ましさと懐かしさに溢れた短編でした!
他に書かれた短編とシリーズになっているので、いずれ1冊にまとまるのかな?

<米澤穂信さんのブログより、【ナイフは~】の告知ページ>

事件の方も米澤さんらしく隠されたメッセージがカチッカチッと嵌まっていく本格モノ、また登場人物としては実質2人だけなのでこの2人のやりとりの静かさと激しさと、時間の降り積もりの優しさと痛みに満ちた会話。まぎれもなく彼女の存在がそうさせているんですが、見つけ出した真実と、真実の扱い方や第三者の心理操作、現在のマスメディアの偽悪なのか偽善なのかのライン、思わず唸ってしまいました。

本格ミステリとしては米澤さんがダントツ、たぶん忘れられないのは桜坂さんのローストビーフ、そして北山さんの作品のラストと米澤さんのリンクのさせ方にブラボー!

アンソロジーとしては『1』『2』とも本格モノからサスペンスに青春ミステリとバラエティに富んでいて、それぞれの先生の持ち味を活かした短編が揃っているので、ミステリー初心者さんや色んな作家さんのをちょっとずつ楽しみたいという読者にはオススメできるシリーズです。
ただし、蝦蟇倉市という特殊すぎるほど特殊な設定をすんなり受け入れられることが大前提ですが☆


(2010.2 東京創元社ミステリ・フロンティア)
スポンサーサイト
Comment (-)

ページの最初に戻る

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。