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『名文どろぼう』 竹内政明 著

2010/05/01(土) 11:26:47 新書 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 私は実家暮らしの頃も結婚してからもずっと新聞は地方紙なので、読売新聞の名コラム執筆者という著者のことも何も知らず。新聞読んでない人間には、まったくノーマークだったこのタイトルですが、元トリトラの戸川さんのブログで知りました。んで、へぇとおもって取り寄せてみた次第。
 はい、確かにタイトルどおり、古今東西の名作から落語に六法全書まで、とにかく文章であれば片っ端から「名文」を引用して、それについて一言書き記す、というまさしく「どろぼう」行為(笑)。他人の褌で…、はたまた、虎の威を借る狐、は違うか…。



とはいうものの、どの作品から(中には法律から)どの部分をチョイスするかは、やっぱりセンスが必要ですよね。
うん、どれもこれも、よかったとおもいます。
こころに沁みる一文から、悲哀を感じるもの、ポジティヴなものネガティヴなもの、ブラックな名文に、そして、この世知辛い世の中で生き抜くために少しラクに呼吸ができるようなものまで。

構成がね、前半はやっぱり楽しいものが多いです。
くすくす笑ったり膝を打ったりしつつ、あるある!とおもいながらさくさく読める。

ところが、後半に入ると少しずつ憂愁の色を帯びはじめ、最後の第三部になるともう、涙が出てくる。いいものでも哀しいものでも。

ひとつひとつの章は短いので、その短い尺の中でどれだけ気の利いた名文を引っ張ってこられるか。同時に著者自身のおもいを乗せられるか。
日頃から文字数とたたかっている新聞の人だけに、そのセンスとリズムの良さは気持ちいいです。

はじめに、のところで既にいくつかの名文が引用してあって、こういう風に進みますよ、というツカミがあり。
その、はじめに、の最後に書かれた一文、「書いていて楽しかった。日本語にまさる娯楽はないと思っている」がもうれっきとした名文やん!とツッコミ(笑)
文筆業の人が、「書いていて楽しかった」といえるなんて、幸せなお仕事じゃないですか。
そして日本語は、ただの意思伝達だけじゃない遊び心に満ちた言語であることを、これから一緒にみていきましょう、というご案内ですよね。
人に自分の書いた文章を不特定多数の人に読んでもらう上で、こういう言葉で次のページにいざなえるのは、羨ましいなあ。


面白い引用、納得の引用、と数ある中で、私が特に印象に残ったのは、

【正と誤】、大学生から先生への手紙。…先生はもちろん怒っていいけど、学生さん、アナタの勘違いはそのトシではかなり厳しいとおもうよ(苦笑)。他、この“なるほどシリーズ”はどれも確かに「なるほど~(ただしいくつかの文は失笑つき)」ですね。
【答案と白旗】…学生時代、数学や物理や化学のテストにこれくらい気の利いたことがかけるだけの才能が欲しかった…そしたら先生もちょっとはおまけしてくれたかもしれん…。
【母親と涙腺】これを涙なしに読める日本人がいたら名を名乗れ。成敗してくれる。
【批評と悪口】…………ごめんなさいごめんなさい(涙)批評家ではなくただの本読みですけど、こうして面白かった駄作だったと好き勝手に書き散らしている身としては、襟を正すというより穴掘って埋まりたい気分…。
【手紙と名文】、これが一番、参考になるというか自分でもこんな手紙(または電報)が書いてみたいとおもった。
次の【雨と傘】の最後から2番目の引用、子どもならではの発想ですけどこれは素晴らしいとおもう。梅雨の時期も、こうおもえば悪くはないよね。
そのまた次の【マイクと声】の、“旧中仙道”のコレ、私リアルタイムで観てた…さすがに呆れたけど、ああなるほどーとおもう自分もいたり。

第三部、ここからはもう、全部が全部、ぐっとくる。
現代ならではの誤変換から日本語の奥深さまで、考えさせられました。

そしてね。
やっぱりラストに引用されているだけあって、こころに残る名文がこの本の一番最後に。
…今、かなりしんどいおもいをしている人、イイコトなんかなんにもないとやさぐれている人、そして絶好調ーーー♪と天狗になっている人、そういう人生の山と谷に立つ人には、この名文の意味が発想の転換になったり心の支えになったり、また戒めになったりするとおもいます。そして人生は、トータルすればプラスマイナスゼロなんじゃないかなあ、と。

日本語という私たちが誰に文法を教わるでもない年齢の頃からずっと使い続けてきたこの言語は、英語とかドイツ語とかよりも絶対にセンスがあるとおもう。
その込められた意味を、「名文」という形で紹介してもらいましたが、さてじゃあ私がそんな気の利いた名文を書けるとはおもえないし……逆に、この著者が名コムラニストというのをまざまざと見せ付けられた気がします。いいなあ、センスのある人って。

と、腐っていてもしょうがないので、精進します。できるだけ。

(2010. 文春新書)
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