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『猫は知っていた 仁木兄妹の事件簿』 仁木悦子 著

2010/05/01(土) 11:24:33 仁木悦子 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 なんか今さら、仁木悦子さんについてあつく語るのもなあ…とおもいますが、実はその反対で、わたしこれまで仁木作品を一度も読んでなかったんです。ていうか、老後の楽しみに取っといたミステリ作家さんのお一人でした。(ちなみにミヤベせんせも、以前は苦手でしたが今はやっぱり老後の楽しみカテゴリ作家さん)
 でもまあ、先日書いたような理由で、そんなときにいつもの本屋さんで棚にささってるのを見かけて、頭真っ白のまま衝動買いでした。



はあぁぁぁ、なんか、ひさびさに、素直でまっとうな本格ミステリを読んだーーって感じ。

とにかく、一切のクセがない。
どんでん返しのサプライズとか、叙述トリックとか、そういう読者にストレスかけるんじゃなくて、ただ作者と読者の知恵比べ、犯人当てを楽しんでねwというストレートさ。
ただひたすら、まっすぐで楽しくて純粋な謎解きをしてみせる、オーソドックスというよりは保守本流の正統派本格ミステリ。
だからものすごーく読みやすい。
時代背景は昭和、固定電話もテレビもまだ一般家庭に普及してないし、自家用車も珍しい、なにより防空壕がまだそこここにあっても不思議じゃない頃。
一部もう古びた言い回しもあるけど、でもまだ綺麗な日本語で会話文が成立する時代。

それでいて、事件の真相は、現代でも十分に通用するほど鮮やかな謎解き。
今のミステリ作家さんに、仁木悦子さんのファンが多いというのも分かります。
たぶん、だれでも一度は、こういう正統派スタイルの本格ミステリを書いてみたいと目指すような、お手本としてぴったりな気がします。

探偵役となる仁木雄太郎と悦子の兄妹が、新たな下宿先でいきなり殺人事件に遭遇するんですから、ポプラ文庫ピュアフルというレーベルの対象である若い世代にとっては、じっちゃんの名にかけて!とか見た目は子ども中身も子どもな高校生探偵のようなミステリコミックの延長線上にある作品として、わくわくできるとおもいます。

仁木悦子さんの数ある作品をとうに読んでおられるかたには今さらですし、このレーベルで新たに文庫化されたことで初めて手に取ったティーンエイジャーたちの興を削ぐのも嫌なので、ネタばらしになるようなことは書きたくないのですが。大丈夫かな(汗)

殺人事件が起こるまでは、関係者の誰も彼もが怪しく感じるように描写されてるし、事件後の聞き込みやら実証段階では、それまでの伏線を丁寧に回収し、レッドヘリングをひとつずつ潰していき、クライマックスの事件の謎解きのシーンはドキドキさせてロジックで圧倒して、そして最後は冷徹な断罪者ではなく血の通った人間として思い遣る。
兄妹の会話もテンポがよくてあたたかくて、こんなお兄ちゃんや妹がいたらいいなwって思わせてくれる。
また、兄の雄太郎くんの洞察力に感心したり、妹の悦子さんのまっすぐな視線と行動力に拍手。関係者(容疑者)の消し込み方が上手いなさすがだ!

これから本格ミステリというものに挑戦するなら、これほど素晴らしい入門書もないでしょうね。
私もやっぱり、こういうのを子どもの時に読みたかったなあと思うわ。

んーとね、なんとなく、有栖川先生の『虹果て村の秘密』を思い出した。
あの作品も、ものすごくオーソドックスな、綺麗にまとまったミステリで、ジュヴナイルとしてはとにかくミステリ入門1冊目に最適だと。
そういう、奇をてらわない、純粋に犯人当てを楽しむ、若い世代がより楽しめる本格ミステリ。

ところで。
悦子さんの体型について。
この当時でもさすがにこのスタイルはちょっとどうかと……まして今の基準だったら、悦子さんはぜったい音楽どころじゃないよねダイエットに血眼になってるはず(笑)
男性の探偵役がひょろひょろなのは珍しくないし、逆にカーの創造した名探偵たちのように巨漢なのもあるけど、女性の主人公でコレは……★
いや別にモデル体型の女性探偵が素晴らしいというわけではないんですが、そりゃシンパシィを感じる女性読者も多いかもですが。
悦子さん、これで運動神経はいいっていうのは不思議…。

うーん、本当に楽しい時間を体験しました。
こういうのがやっぱり一番ですよ。サプライズとかなんとか、そういうのもいいけど、基本はやっぱり、純粋な犯人当て♪
私、ほんまにこういう系統がいちばん好きなんやなあ、と改めて感じた作品でした。


(2010.3 ポプラ文庫ピュアフル)
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