こんな本読みました。

読んで感じて書き出して、そして忘れていく。備忘録ブログ。

スポンサー広告 > 『ラガド 煉獄の教室』 両角長彦 著
ミステリ・その他 > 『ラガド 煉獄の教室』 両角長彦 著

スポンサーサイト

--/--/--(--) --:--:-- スポンサー広告 EDIT
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Comment (-)

『ラガド 煉獄の教室』 両角長彦 著

2010/05/01(土) 11:16:18 ミステリ・その他 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 綾辻先生の帯コメントを見て衝動買い。第13回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品だそうです。
 うーん、新人さんというと、私にとっては、こないだの梓崎さんという超新人離れしたデビュー作品を読んだ後といういささか分が悪いタイミングだったので、フェアに感想を書けるかどうか微妙なところですが…。
 ただ、読み出したら一気に最後まで突き進んでおりました。
 ええと、とにかくミステリーです。感想を書くということはネタばれってると思ってください。これより先、未読のかたは自己判断で。




全ページにわたって、下の部分が視覚的(再現シーンというか、それぞれの動きを盤上の駒のように見せる)試みのために空けてあるので、文字数にしたらそれほど多くはないのかも。
こういうページの使い方って、EQにありましたよね。著者はそれを意識してアレンジしたのかな。

で、まあ、この試みは概ね成功してるとおもいます。
…ただ、ミステリ的には伏線にもなってなくて、ただ上の文章を補強する役割でしかないのが残念。ある人物の不自然な動きと、それに関係するラストの集中する矢印を効果的に見せるためにしか機能してない。これが三津田さんだったら、中にひとつふたつ、謎解きの伏線になるような仕掛けをしてくるとおもうんですけどね。

んーでもこの作品、どっちかというと謎解きではなくてタイムサスペンス要素が強いし、なによりラストがどうにもこうにも……それまでが圧倒的に面白かっただけにもったいない。

だいたい、教室に男が包丁持って入ってきて生徒をメッタ刺しにした、という、現実にも似たような事件があったくらいで刺した犯人はその場で取り押さえられてる。じゃあ何故この犯人はこんな事件を起こしたのか、というホワイダニットでひっぱるのかとおもったら、どうやらそれも違う。
警察はアテにならない。ということで、テレビのプロデューサーや学園理事長の秘書さんたちが真相に迫ろうとするわけで、主にこの2人が素人探偵役として話を進めます。
テレビ側の甲田さんが秘書の飯沢さんに宣言して、「お互いに一切の隠し事をしない」というのが、いわば探偵役をフェアに動かしますよ、という作者からの宣言のようなものだと思うんですが…。

酒びたりで犯行に及んだために、犯行時の記憶がほとんど吹っ飛んだ犯人。
犠牲になった女子生徒の、あまりの美談。
担任教師の隠し事、他のクラスメイトの影の薄さ。で、イジメがあったのかなかったのか、クラスのボスの存在…。

こういう雰囲気は、あのイヤミスの女王というべき『告白』の著者・湊かなえさんを思わせますが、彼女はもっと書き込んでるし徹底してる。その分読後感はもうしばらくなにもかもが嫌になるくらいのヘヴィーさ。
対してこの両角さんという人は、そこまで話を掘り下げなかった。それが意図してのことかそれとも天然で掘らなかったのかは分かりませんが、それが読者に分かるのはおそらく2作目が発表されたときになるのでしょう。

何かが引っかかる、どこか不自然だ、という甲田さんや飯沢さん、また物語の早々退場扱いになったけど冬島さんが探っていく事件の核。やってることは無茶苦茶で警察に通報されても文句は言えないほど強引ですが、まあそうでもしないと何一つ分からないままうやむやになる、という流れなので、それはしょうがないとしても。

ひとつ仮説を立てる、もしくはキーワードやちょっとした手掛かりを掴んで真相に一歩近づく、その様子はめっちゃ面白いし、二転三転する推論におおまだウラがあるのか!と驚かせる構成は上手いなあとおもいます。
特に放送が迫るタイムリミットが近づくにつれて、その放送内容を全て覆すような証言が出てきたあたりは、もうページを捲る手が止まらなかったよ。

なので。
ラストというか、落としどころがアレで、マジで脱力。ていうか、残念でしょうがない。もうちょっとそれなりに納得させるだけの着地点はなかったのかなあ。
えええこれで終わり?!
…てか、ブルース・リーっていうのは、いったいどういう人なのかもうちょい説明してほしかった。

だいたい、問題のクラス全員の、家庭内での親子の会話までも盗聴しているというなんかしっくりこない枠組みと、ラガドがそんなちまちましたことまでするのかという違和感がずっとあったです。

犠牲になった藤村綾、この子のしたことのなんというかある意味超常的な能力は、いったいどこでラガドに目をつけられたのか?
美談ではなかったという真相はいいんですけど、なんでそこなんですか!というがっくり感が…。

2つ持っていたらしい携帯が、なぜかひとつしか発見されていない、もうひとつの携帯はどこに消えたのか誰との回線に使っていたのか?というこんなにイイ謎もあったのに…。

2か月前に自殺し女子生徒の死の真相と、彼女のある意味精神科に通ったほうがいい病気(強迫神経症じゃないかとおもう)と文章能力に致命的な欠陥を持っていたこと、彼女の遺書の意味。
たぶんこれがミステリーとしては一番の謎、キーになる部分で、ここの展開は面白かった。
一番印象深いのもここらへんでした。

逆に急速にしぼんじゃった、クラスのボス的存在。
えええそんな伏線あったー?!…っという感じです。
せっかく「本人が自覚しないボス的存在」なんてアンビバレンツな設定なんだから、(いえその説明はちゃんとありましたけど…)、彼に視線が集中したという終盤のアレ、もう少し説得力が欲しかったです。そこだけリンクが切れてる。この操りをしたのは彼女なのか、それとももう1人の彼女なのか?なんで彼が「××の●」なのかに、読者が辿り着かないのではないかと。

この「××の●」という概念・比喩を書きたいためにこの小説を組み立てた、ような気がしました。なので、そこだけ作者の思い入れが強すぎたのかも。なんとなくしっくりこないというか、浮いてしまってる感じ。

終盤を除けば、めっちゃ面白いんです。マジで。
それだけにラストが腰砕け。もったいなくてしょうがない。

さっきも書きましたが、この作者の両角さんの次回作を読んで、それから期待の新人さんなのか一発屋さんで終わりそうなのかを見てみようとおもいます。それまで保留。

(2010.2 光文社)
スポンサーサイト
Comment (-)

ページの最初に戻る

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。