こんな本読みました。

読んで感じて書き出して、そして忘れていく。備忘録ブログ。

スポンサー広告 > 『隠蔽捜査』 今野 敏 著
今野敏 > 『隠蔽捜査』 今野 敏 著

スポンサーサイト

--/--/--(--) --:--:-- スポンサー広告 EDIT
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Comment (-)

『隠蔽捜査』 今野 敏 著

2010/05/01(土) 11:15:23 今野敏 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 私がミステリを読み始めた頃には既に膨大な冊数が出ていて、どれから読んでいいのやら分からなくて指くわえて眺めているだけだったんですが、思い切って今野作品の先輩読者さんであるお友達に教えていただきました。そしたらものすごく丁寧なリストを作ってくださって、安積班とか有名なシリーズもこれでイケる♪と喜びました、けど何しろ既に積読はバベル状態だし図書館本の予約もひっきりなしに入れてるし、で、まずは一番シリーズものとして作品数の少ないこのタイトルから。
 そんなわけで、今さらの今野作品の感想です。



ミステリーというジャンルは幅広くて、もちろん私の愛する本格ミステリも、それから松本清張作品に代表される社会派も、コンゲームやらハードボイルド、そして警察小説も広義ではミステリーです。
ただ、何故かミステリ読みというかミステリ好きという人種は、まず好きなルートのをガーッと読み続けてその派生で同じ系譜の古典やら海外モノやら有望な新人作家のミステリを追いかけるので、たとえば本格好きな人が社会派にもハマるということはあまりないような気がします。
自分の中で、好きなジャンルと肌に合わないジャンルがきっちり区別されてしまって、書評家さんライターさんのように文筆業とかプロならともかく、素人でただ好きで読んでるだけのミステリファンは、よほど評判が良くなければあっちもこっちも手を出さない。本格好きなら本格一辺倒、ハードボイルドが好きならやっぱりハードボイルド系を追いかけ続けるんじゃないかと思います。

でも、そうしているうちに、どうしても傑作名作を取りこぼしてしまうんですよね。

私の場合もお恥ずかしながら、ロジック炸裂トリックバリバリの本格を愛するゆえに、今回の今野先生の作品のようなガチの警察小説ってなかなかとっつきにくかったんです。

いやでもやっぱり、興味のあるシリーズであることには変わりないし、いつか読んでみたいと思ってて。
そしたらオンラインでのお友達が先に今野作品に取り掛かられて面白-い♪というコメントだったので、これはもう私もいっちょ読まねばなるまい!と、教えてもらったというわけです。

で、とりあえず図書館で借りてきたこの『隠蔽捜査』。
シリーズ第1作目ですね。

いーやー、確かに面白いわ!

100%警察小説なので(昨年秋に出た貫井先生の某作品のように、ミステリと警察小説との融合、という作風ではないので)、事件の犯人が誰か、という謎解きには重きを置かれていません。もっぱら警察庁警視庁の内部事情の話です。
でもその狭さが、より展開をスピーディーにしていて、読みやすい読みやすい♪

東大出身のエリートキャリア官僚、警察庁の総務課長(階級は警視長)竜崎さん。
一方、私大出で警視庁の刑事部長、現場の責任者である、伊丹さん。
小学校のときのクラスメイトで、竜崎さんは当時、クラスのリーダー的存在だった伊丹さんに(正確には彼の取り巻きに)イジメられつづけ、その静かな恨みと屈託を抱いたまま国家公務員試験甲種に合格して警察官僚に。するとそこに何故か伊丹さんが同期入庁して再会するという皮肉。
当然竜崎さんはモヤモヤしますが、一方の伊丹さんは全く覚えていない様子。
そのやりとりが、周りに「2人は幼なじみ」と認識させてしまうのですが…。

これが上手いですよねえ。

周りから「変人」とみなされるほど堅物で融通の利かないエリート至上主義の竜崎さん。
伊丹さんを私大出だからと見下したり、上司であっても口には出さないものの辛辣だったり。国家公務員なんだから天下りさえ当たり前、そういう「ザ・官僚」な一方、自分は国家のために心身ともに捧げているという信念をもって、能力を最大限に活かす努力を怠らない人。

正反対の印象の伊丹さんと、距離を取りつつも対等の会話を交わし、やがてお互いの窮地を切り抜ける方法を、お互いの主義主張をぶつけ合いつつクライマックスでは…。

前半部分で竜崎さんのまったく空気読めない正論マシンのような人物像を丁寧に書き込んであるおかげで、竜崎さんのピンチに対して揺れ動く内面に、読者は「こんな組織第一主義の人やし流されるの?それとも自分の主義を貫くの?」と一緒に悩む。そのうち彼の取る行動、思惑が、拍手したいほどカッコよくなってくる。
たぶん、ドラマ【相棒】の杉下右京さんのようなカンジなんでしょうが、もっとガチガチでパッと見イヤな人です。こんな人が身近に居たら、距離を置きたくなるよね誰でも。
その内面は、正義の人であり、一方で俗物であり、でもぜったいに筋を曲げない静かな強さを兼ね備えた人。なのに本人はそれを自覚していないという天然っぷりwww

友達いないけどそれが何か?という竜崎さんですが、奥さんといい部下といい、見てる人はちゃんと見てる。てか、自分の夫を、直属の上司を、自分の人生を左右するほど近くに居る人なら余計に、リスペクトできる人なのかどうかはきっちり観察するでしょう。その上で夫婦になったり部下として命令を受諾したりするんですから、どんなに変人でもついてきてくれる人がいるというのはやっぱり、人間として尊敬できるものを持ってるということですよね。
奥さんの冴子さんが物語の一番の要だとおもうし、部下の谷岡さんも上司の牛島さんもちゃんと竜崎さんという人を分かってる。
もちろん、どこまでも嫌な奴、敵キャラにあたる人物も登場するので、そのメリハリが楽しかった。

タイトルからして、警察内部のどうしようもない部分や組織の危機管理・優先事項は何かを軸に書かれていますが、竜崎さんのプライベートな事との絡ませ方もいいし、キャラクタが立っててもちろんそこにある苦悩も含まれていてフィクションなんだけども絵空事には思えない。
ラストはさすがに無傷ではいられなかったけど、それでも切り替え方は爽やかで、やっぱり奥さんはナイスな女性で、続編はどうなるんだろうと期待大です。

これほど正論を吐き続ける、裏表のない超エリート官僚が主人公というのも珍しいですよね。
竜崎さんのものの捉え方がものすごく真っ当で潔癖で、でも柔軟性もある(なんでこれほど東大出にこだわるのか、その真意に目の覚めるおもいでした)、中年なんだけどカッコいい男性、と言っていいでしょうね。確かに変人ですが★
一度竜崎さんの真の部分を垣間見ると、惹かれずにはいられない、ピュアな人だともおもいます。
これはお気に入りのキャラがまた1人増えましたよーwww


(新潮社)
スポンサーサイト
Comment (-)

ページの最初に戻る

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。