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『ルピナス探偵団』シリーズ 津原泰水 著

2008/09/03(水) 11:06:53 津原泰水 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
『ルピナス探偵団の当惑』
『ルピナス探偵団の憂愁』
 昨年末に『憂愁』が刊行されたのを機に、積読だった文庫版『当惑』をサルベージ。シリーズとして一気に読みました。
 色んなジャンルの小説を書かれる著者ですから、ミステリとして意識したことはあまりなかったのですが、これはれっきとした謎解きです。
 未読のかた、ネタバレしておりますので、まずは本書を読了されることをオススメします。

いやー、面白い!
特に『当惑』。がちがちの本格ミステリじゃないですか。なんで今まで読まなかったんだろう。
というより、講談社X文庫ティーンズハートなどという、オバサンにはこっ恥ずかしいところから出版された、その先入観ですね。いやもったいない。(文庫版のは創元推理文庫を入手してます)
確かに、少女小説向けにかなりキャラが立ってるし、というか立ち過ぎてるし、主人公の彩子の一人称だし、容疑者以外のレギュラーキャラはみーんなかっ飛んでるし。
でも、その一人称で進む物語とあまりにあまりなキャラ設定(特に彩子の姉、不二子なんてもう…)の為に、最初は読みにくかったのも本当。コーコーセーの時はこんなのばっかり読んでたのに……。

主人公の吾魚彩子。彩子の親友、桐江泉と京野摩耶。彩子の片思いの相手であり、博覧強記の祀島龍彦。そして、彩子の姉で警察官の不二子と、彼女の上司(であるはず)の庚午くん。
彩子は以前、偶然か必然か密室の謎を解いてしまったことがあり、その直観を庚午くんは高く評価している、というより頼りきっている。そんな事件になんぞ関わりあいたくないのに、姉の不二子は協力しないと逮捕するとか策略を仕掛けるとかもうとんでもないし、親友で頭の回転の速いキリエが摩耶を巻き込んで首を突っ込んでくるし、なのに片想いの祀島君には伝わってない上に化石の話ばっかりだし。

会話のテンポがよくて笑ってしまう箇所が随所にあるのに、それがちっとも浮いていない。それどころか、そのバランスの良さが推理や解決シーンにとてもマッチしていて、ぐいぐいと引き込まれる。
後に出た『憂愁』では冒頭で、そのうちの一人が病に倒れて還らぬ人になり、そこから時系列が順を追って遡っていく。それがより一層エピソードを引き立てているし、一人がいなくなってしまった喪失感に囚われずに読める、その構成の妙に感心しました。普通なら、過去にこんなことがあった、で現在に戻り、また過去の回想シーンに飛んで……というふうに故人を偲んで涙に暮れる、というパターンですよね。
でも、最後に、高校生活最後の日の彩子たちの変わらない友情を誓い合う場面を描いてあると、たとえ姿は見えなくても、ずっと親友であり続けるだろう爽やかな読後感を残してくれる。もう二度と還らない友、戻らない時間が、奇跡のように輝き続ける素敵な青春小説でもあります。

ところが、ミステリとしても面白くてもう。
先にも書きましたが特に『当惑』。
最初の【冷えたピザはいかが?】は倒叙ものなんですが、かなり捻ってあって、人物一覧表に「この人が犯人」とまでちゃんと書いてあるのにもかかわらず、サスペンスタッチじゃないのです。倒叙ミステリにアレルギーのある私が、どきどきしながら読んだんですもん。そして、彩子だけじゃなくて祀島くんも探偵役を果たすことも明記されます。
二作目の【ようこそ雪の館へ】は、もうこのタイトルからしてわかるように、雪の密室ですね。足跡の謎、鍵の謎、そして、被害者と容疑者たちの秘密。これでもかってくらいに、ミステリの手順をふんでいます。
んでやっぱり、彩子たちのキャラが飛び跳ねてて笑うんだけれど、推理の過程は『毒入りチョコレート事件』のような趣向に満ちていて、嬉しくなります。この話から、祀島くんのほうがメインの探偵役になっていますね。勿論、彩子の閃きが合ってのことですが。
最後の【大女優の右手】。これは凄い!
犯人特定の為の伏線はかなり始めのほうにちゃんと書いてあるし、消えた死体と消えた容疑者の動かし方も面白い。これはビジュアル化しても耐えうるほど、完成した謎解きだと思う。でももっと感心したのが、最後の最後、犯人の本当の目的。何故、被害者の右手を切り落としたのか、その隠された意図は、事件の様相をひっくり返すもので。唸りましたよ。

…ただねえ、この二作目と三作目、現場の見取り図が欲しかった……。

続編の『憂愁』は、フーダニットというよりも、ホワイダニットの色合いが強いですね。特に一作目の【百合の木陰】と続く【犬には歓迎されざる】なんてそうです。三作目の【初めての密室】は、彩子が解決に一役買ったという、例の事件の続きのようなもの。でも密室には隠された裏側があって、その当時は明るみにされなかった。彩子の閃きは間違っていなかったけれど、その後の警察の捜査がお粗末だった、というお話です。
そして最後の【慈悲の花園】。これはフーダニットですが、彩子たちの通う《私立ルピナス学園》そのものがクローズアップされています。卒業を控えた彩子たちの、学園に対する思いの強さと罪深さ。なによりここで、職業探偵でも警察官でもない彩子たちの、事件との向き合い方がはっきり現れます。名探偵○ナンで高校生探偵を自負してる彼等とは逆に(笑)、犯人を気遣って真相を明かさない選択をよしとするキリエや祀島くん(いえ、結局、犯人は名指しされますが)は、それはそれで人間らしくて好感が持てました。

彩子の姉、不二子サン。こんなのがもし私の姉だったら、とっとと縁を切ります。
普通の人生を送れないよう。
妹が一箇月かがりで書いたラブレターをこっそりすり替えて、本物の手紙を警察署の掲示板に張り出すなんて、どーゆーことよ!常識がないとか言う前に、人間としておかしいよ!

というわけで、楽しいお話でした。

(2008.01.21)
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