こんな本読みました。

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『DOWN TOWN』 小路幸也 著

2010/04/01(木) 12:34:37 小路幸也 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 一昨年~昨年、KAWADE WEB MAGAZINEにて月に2回ペースで連載されていたものが、めでたく1冊にまとまりました♪
 連載中はあんまり実感しなかったんですが、こうして単行本になると結構な枚数になってたんですね!読み応えありましたよー☆
 で、これはぜひとも、お気に入りの喫茶店、美味しいコーヒーを出してくれる静かなお店で読むと、なかなかよろしいのではないかとおもいますv
 本当ーにコーヒーを読みたくなりますよw




この物語は、小路さんご自身の経験がふんだんに盛り込まれているそうで、カバー表紙の喫茶店のイラストもその思い出のイメージに近いのだとか。

高校生の省吾(ショーゴ)くんの一人称でお話は進みますが、彼の未完成なところ、非力さ、自分なりの生き方への模索、……いまどきの高校生ってここまでちゃんと考えてるでしょうか。
自分たちにはまだ分からない、「大人の社会」や「社会人の常識」、「自分たちにはどうしようもないこと」「大人だからできること」…そういう、経験値の不足や今まで知らなかったこと、そんなことを少しずつ垣間見る彼の視線は、澄んでいて誠実で、良くも悪くも好奇心に満ちています。

偶然入った喫茶店<ぶろっく>の圧倒的な女性の雰囲気、狭い店内にコーヒーのいい香り、選ばれたBGM、そして常連さんたちが何故ショーゴくんを最初から受け入れたのか、ショーゴくんに何を見ているのか、常連さん同士の繋がり、少しずつ彼を深いところに招き入れていく様子が、逆に彼に「終わり」を絶えず感じさせているような気がしました。すべてを知ったとき、居心地のいい場所からの旅立ちになるような。守られるだけの子ども時代の、終わり。

それにしても、高校生って、こんなに自分自身を否定するもんでしたっけ。
そんなに突き詰めて考えなくてもいいよーと思わず言いたくなるのは、やっぱりトシなんですかね(苦笑)
ていうか、私自身にそんな経験がないから。

私自身の高校時代はもう(…うーん、小学校からと言った方が正しいか…)、深く考えると生きてはいられない状態だったので、今にして思えば、すっからかんでした。いえ、かけがえのない友達はできたし、そういうことではなくて、将来のこととか自分にできることとか、そんな「今の自分・これからの私」というものを考えられる環境じゃなく。ただ一日いちにちを息をつめてやり過ごす、というのが一番しっくりくる毎日でした。24時間交感神経振り切れっぱなし★…なりたいものやりたいこと、そうした夢を親と話したことなんかないもん。私の親はたぶん、娘の夢なんて一切興味はなかったはずだし話しても聞く気なかったとおもうし。

省吾くんは、暖かい家の存在を感謝する一方で疎ましくて、でもいざそれが壊れる可能性に行き当たったときにやっぱり大切なものなんだと自覚できる素直なこころを持っていて、
また自分が誰かの身代わりとしての存在でもあると勘付いても、実際に教えられてもいじけたりしない強いこころも持っていて。
(自分自身を受け入れてくれたわけじゃないんだ!とか言って拗ねる人だっているしね)
たぶん、<ぶろっく>の皆も、孝生くんややよいちゃんも、武田さんにいたるまで、まわりの皆が憧れたしなやかさと強さなんだろうなあ。いえ皆それぞれに強いし柔軟性はあるけど、彼の視線を通して見る世界はきっと綺麗で幸せなんだろうなあと思わせてくれるような。きちんと育てられたというのがよく分かる子、ていうのかな。

大人の一歩手前の段階だからこそ、「子ども」と「大人」の違いに敏感で、「自立したい」「大人のオーラ」を早く身につけたいと急いでいる姿が、反対に大人の私たちが一番気をつけないといけない鏡なんですよね。
思春期の子どもとの距離の取り方。
自分のそばで、無理をしている人がいないか。

印象的だったのが、視線の使い方。アイコンタクト。
省吾くんと孝生くんの間で。カンさんやケンゾーさんの、言わなくても分かるだろうという目の言葉。そして先を読み促す動き。信頼関係が成り立っていないと通用しないものだから、よりその視線があたたかい。
また、女性陣の輪の中にいる省吾くんの中性的な目線と、カンさんやケンゾーさんやお父さんと男同士で話し合うときの強い眼差し、そのギャップ。

あ、それと、後半の急展開というか、前半が静だとすると後半は動なんですけど、その見せ場の描写が素晴らしかった。
サッキさんのことで後半の大部分を構成することもできたでしょうに、そうではなくて<ぶろっく>の仲間のことを全員が一丸となって心配し身体を張って助ける。
そのスピード感が省吾くんには振り落とされそうなくらいでギリギリしがみついていく、でもそれすらもやっぱり大人の理解があってこそだと知る、彼の心の成長。
そうして省吾くんがひとつ経験を積んでより深く仲間のことや両親のことを思いやれるようになってから、サッキさんの衝撃を受け止めて<ぶろっく>の一員としてカオリさんやりょうさんを心配することができるようになるという自然な流れ。父親と腹を割って話し合うことの大切さを知ること。

今現在のご時勢だとちょっと煙たがられるかもしれない、わりに濃密な人間関係がまだ当たり前だったほんの少し前の時代のお話なので、こういう仲間のために家族のために心を砕いて頑張る姿は、羨ましくて懐かしい。
今なら携帯でスムーズに連絡が取れるところを、昔はこうしてみんな走ったんですよね♪

省吾くん孝生くんの一番若い世代、つぎにユーミさんの世代、カオリさんやりょうさんケンゾーさんたちのもう少しお姉さんお兄さん世代、そしてカンさんという全体を見守っている存在。
絶妙なバランスの<ぶろっく>の中で、省吾くんも孝生くんも色んなことを学んで、そして自立していく。いつでも帰っておいでと待っていてくれる場所があることを喜びながら。
心底羨ましいぞ(笑)

…それと、『ホームタウン』が読みたくなりましたー(苦笑)
そして東京に出た省吾くんは、『モーニング』のダイさんの経営するお店に、「また偶然」出会って常連さんになるんだきっと♪←暴走
で、貰ったカメラで東京の風景を撮ってたら、ひょっこり通りかかったヒロさんに声かけられるんだよ『東京公園』♪♪←大暴走
……こんなことしてたら、伊坂さんばりのリンクの仕方になりますよね(爆)すいません調子に乗りました☆


(2010.2 河出書房新社)
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