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『タルト・タタンの夢』 近藤史恵 著

2008/09/03(水) 11:03:52 近藤史恵 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 東京創元社の『ミステリーズ!』で2003~2006年までに掲載されていた短編が一冊に纏まりました。
 日常の謎系なので、どっしり重いミステリばかり読んでる私には、いい息抜きになりました。
 未読のかたは、これより先にお進みになりませんよう。




《ビストロ・パ・マル》という、気取らない小さなフランス料理店に持ち込まれる、ちょっとした謎の数々。
店でただ一人のギャルソン、高築智行を語り手に、ソムリエールの金子ゆき、シェフの志村洋二、そして、店長兼料理長の三舟忍。この三舟シェフが探偵役として活躍?しています。

常連客が婚約者を連れて来店。ふたりは料理を堪能した。その二週間後に仕事関係者と訪れたその常連さんは、何故か体調を崩していた。〔タルト・タタンの夢〕
極端な偏食家なのに、よく来店するお客。彼の食に関わる人間関係って?〔ロニョン・ド・ヴォーの決意〕
志村シェフと彼の妻の、クリスマスの思い出。志村シェフの不機嫌の理由。〔ガレット・デ・ロワの秘密〕
季節はずれの台風の夜に、ふらりと一人で訪れた男性。連日の来店で家庭料理の大切さに気付いた彼に、三舟シェフが差し出した一皿。〔オッソ・イラティをめぐる不和〕
真夏のある日、近所の商店街の和菓子屋の二代目主人が友人を連れて食べに来た。彼らの口から語られる、不愉快な夏の思い出と謎。そして、オチにはちゃっかりシェフ(笑)〔理不尽な酔っぱらい〕
ある日、一件の予約が入った。その注文の中に、鴨ではなくガチョウのコンフィを使ったカスレを、というものが。何故ガチョウなのか?フランスと日本との料理に対する認識の差。〔ぬけがらのカスレ〕
店で異様な雰囲気にあった一組の男女。その男性から、最後に出したボンボン・ショコラについてクレームをつけられた。舌の確かな印象の男性の正体は?〔割り切れないチョコレート〕

どれも短編で深い謎ではないので、さらっと読めます。
ただ、困った…お腹すいてしょうがない(苦笑)。昔よく行った、フランス家庭料理のお店を思い出して、また行きたくなってしまいました。美味しかったんですよねえ…(遠い目)

マメに料理をする人なら、すんなり腑に落ちるお話ばかり。
まあ、鴨やガチョウやフォワグラやらを日常的につかう人なんてプロの料理人ぐらいでしょうが…。
でも、お店で出される料理の原点は、やはり家庭にあるのだと、改めて思う短編集でした。
私個人は、お菓子を作る者の知識として実はすぐにわかっちゃった(笑)、〔ガレット・デ・ロワ〕とか、デパートのチーズ売り場にある商品をほぼ一通り食べたくらいにハマった経験者として全部知ってたチーズの薀蓄満載の〔オッソ・イラティ〕など、愉しんで読んでました。

初期の『モップシリーズ』や前作『サクリファイス』でも思ったことですが、近藤先生の作品は、派手なトリックやアリバイ崩しなどがあまり無いかわりに、人間のささやかな悪意や敵意が事件の鍵になっていることに、なんだかじくじくとした感じがします。
敢えて見ないようにしているネガティヴな感情、毎日の生活でぽわんと浮かび上がる自己嫌悪に似た怒りや妬み…。それがこうして文章になると、もしかしたら私自身がうっかり人を傷つけたかもしれない可能性に、心の中のどこかのささくれ立った部分を探してしまうのです。
そんな何気ない毎日の積み重ねが、それでも大切な思い出になることを、この作品でも教わった気がしました。

これを読んでから、フランス料理のお店に行ってみるのも目先が変わって楽しいかも♪

(2008.01.18)
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