こんな本読みました。

読んで感じて書き出して、そして忘れていく。備忘録ブログ。

スポンサー広告 > 『本格ミステリの王国』 有栖川有栖 著
有栖川有栖 > 『本格ミステリの王国』 有栖川有栖 著

スポンサーサイト

--/--/--(--) --:--:-- スポンサー広告 EDIT
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Comment (-)

『本格ミステリの王国』 有栖川有栖 著

2009/12/21(月) 23:14:57 有栖川有栖 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 
 今年デビュー20周年というおめでたくも節目の年、記念企画として出版されたエッセイ集。
 これまでにも講談社からは数冊のエッセイ集が出ていますが、今回は、ちょっと内容が違いますね。(主にミステリ)作家になりたい人には、これほど適した指南書は他にないでしょう。
 こないだの講演会はこの本のサイン会を兼ねていたことからも分かるように、このエッセイの、特に最後の書き下ろし部分のことを話されていましたから、聴講した私にとっては再確認というか、ああこの話もされていたなあ、とうんうん頷きつつ読んでました。




ということで、この前のレポと被るのですが、第一章は新聞や文庫解説その他あちこちに寄稿されたものが纏まったカテゴリ。もちろん一度読んだものばかりですが、それでも今までになくじんわりくるものがあります。
『女王国の城』が本格ミステリ大賞を受賞したときのコメントや、エラリアンなら当然持ってる創元推理文庫の“梗概”『間違いの悲劇』のあのエピソード。大変な重責だったとはおもいますが、私としては有栖川先生と綾辻先生の「合作EQ」を読んでみたかったなあ。泡坂先生の訃報、【安楽椅子探偵】のこと、そして愉快だったのがパズル雑誌《ナンプレファン》に寄せられた、「名探偵にとって迷惑な犯人像ベスト9」ww有栖川先生らしい軽妙な語り口で、もしこれを先生が私の真正面で口頭で話してくださっていたら、さぞ大笑いしただろうなあ。

第二章の「ミステリが書きたいあなたへ」。
先生が選考委員を務められた新人賞の選評があり、そんな未来のライバルへの激励があって、注目は《トリックの分類》でしょう。
『マジミ』で《アリバイの分類》はありましたが、このトリックの仕分け方も分かりやすいです。新人賞に応募しようとするなら絶対に読んで頭に叩き込むべき。
ミステリ作家になりたいと思い続けた先生が、念願叶ってデビューしてから20年、そのキャリアで蓄積されたものを惜しげもなく読者に差し出してくださってます。いいんやろかここまで書いて、とおもうほど。
別に作家を目指してなくても、一読者としてミステリを読むのにも有用です。ああこの作品は、あのパターンの隙間を見つけたんやなあ、と。

そして、たぶんこの章が有栖川ファンにとってもっとも価値のあるところでしょうか。第三章の「ミステリ作家未満」。
先生が大学時代に書かれたミス研での犯人当て。それも、当時の直筆原稿!
ほとんどのファンは、先生の肉筆なんてサインしか知りませんから、まして今はキーボードを叩かれていますから、肉筆の原稿なんてそうそう拝めるもんじゃありませんよね♪
後の作家シリーズ第一長編『46番目の密室』での、アリスさんが火村先生との出会いを邂逅するシーン、階段教室の、春の日差しが降り注ぐ中を一心不乱に原稿用紙に書いていた、そのイメージのままです。ああこんな感じなのかー、と。
私にはそれこそ国語の時間の読書感想文くらいしか原稿用紙をがりがり埋めた経験なんてないですが、それでも筆が乗ってくると走り書きのように読みにくくなってくると思うんです。でも先生のこの生原稿、読みやすーい!漢字を使うべきところは字画が多くてもちゃんと漢字になってるし、ルビもふってある。
なにより、江神部長にモチに信長、そしてアリス。まだマリアはいないけど、もう学生シリーズの青写真が出来上がってたんですね!

まだ小説というには肉付きは薄いと思うんですが、犯人当てとしてちゃんとフェアプレイになってて、この原稿までにいったいどれくらいの習作を書かれてきたのか、そのスキルの高さに驚きました。
デビュー作『月光ゲーム』が、まだ青臭いと言うレビューも見ますけど、いえいえ全然!デビュー作はやっぱりプロとして書かれたものなんですね。
伏線も手がかりも、今の先生には及ばなくてもちゃんと先生らしさを感じ取れるし、何より読んでいて楽しい!わくわくしました♪
“犯人当て”の原稿なので、どこか【安楽椅子探偵】の下敷きのようでもあり。
先生、ほんっとーに骨の髄まで本格ミステリ作家なんですね。

もうひとつ、『殺刃の家』。これも犯人当てですが、これもますます先生らしいアリバイトリック。そして解決編のエレガント(?)なQ.E.D☆
枚数で言えば掌編だとおもうので、まるでJ-ミスでのショートミステリを読んでるみたいでした!

最後に、第四章、「ミステリに関する二十の断想」書き下ろし。
今までのエッセイ集よりもさらにミステリ度、それも本格度の高いエッセイ。
この前の講演会で話されていたのも含まれてるし、綾辻先生から始まる「新本格第一世代」のこと。先生のふたつのシリーズのこと。
私が特に愉快に笑って読んだのは、その二つのシリーズの前、先生がどんな小説を書いてこられたか、という《幻の小説》のあたりから。
自虐ネタというのは言いすぎかもですが、先生の1人ツッコミが面白い♪
プロとして20年、また選考委員でアマチュアの作品を数多く読んでこられた先生が、その目線で自らの無邪気な物語を振り返っておられますが、普通の人なら恥ずかしくて穴掘って埋めたくなるような昔の自分の物語を、それでもこうしてプロットを披露できるというのは先生のキャリアと自信のなせる業ですね。
そうそう、《火村シリーズのこと》の中で、火村先生の例の過去のこと、にも触れられていますが、私がうんうん!とニンマリしたのが、最後の文章。
そうなんですよねー、ただの一度も出てこない、この背景。
だからこそ、同人界では様々に捏造あるいは妄想されているわけですが。
その次の《キャラなんとかについて》←もうこのタイトルで既に先生らしいですよね(笑)
この同人について、以前、『乱読』の中でも触れられていましたが、それは今でも変わらないんですね。良かったですねー、同人サイトさんw
ていうか、直筆原稿が掲載されたことで、ますます活気付くんじゃないやろか…。
自作品のパロディ、にこんなに寛容な先生も珍しい。
そのおもいの全ては、「本格ミステリを好きになってくれる読者が増えて欲しい」というその一点に尽きるのが、本格ミステリ作家クラブ初代会長がいかに適任だったかを改めて実感したしだいです。

今までのエッセイ集の中で、私はたぶん一番好きです。

20年。走り続けてこられた先生。
お疲れ様でしたなんてまだ言いません。早すぎますから。
これからも、わくわくどきどきの本格ミステリを、たくさん書いて私達を楽しませてくださいね!
それと、超多忙なスケジュールだとおもいます、くれぐれもご自愛くださいませ。

(2009.12 講談社)
スポンサーサイト
Comment (-)

ページの最初に戻る

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。