こんな本読みました。

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『水魑の如き沈むもの』 三津田信三 著

2009/12/15(火) 13:47:34 三津田信三 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 『首無の如き祟るもの』から、このシリーズは単行本で購入していますが、この新作はちと分厚いですね。そして装丁がわりにまとも(笑)。少なくとも『首無』や『山魔』のような、何にも知らない人が夜中に見たら、ひぃぃぃぃ!と叫びそうなそんなホラーではなく。でも、この表紙イラストが、読了した後に改めて見ると二重三重の意味が重ねてある気がしますよ。
 刀城言耶シリーズファンなら問答無用でゲットされたとおもわれますが、とにかくこれから先は、おそらくネタばらしせずには書けないはずですので、未読のかたはぜっっったいにここでストップしてくださいねっ!




さぁて。
この新作、『水魑』、読み終えてすぐの感想は。

………あれ?

でした(笑)

『首無』の目の覚めるようなカタルシスが忘れられない身としては、そういうクライマックスでの大技を期待しすぎたのかもしれませんね。

でも、バリバリ本格ミステリですww
がっつり楽しませていただきました♪

伏線の回収の仕方は相変わらずお見事!ですし、いやそれはさておき、まずお約束の<東城雅哉こと刀城言耶記す>と銘記される「はじめに」がね(あ、『首無』はちょっと例外か)。
シリーズの時系列においてこの事件がだいたいいつ頃のこと、というのが今回かなり明確であることと、途中に出てくるある人物の出自が、過去のある作品とリンクしていていて当然シリーズなわけですから刀城言耶氏は両方の事件に関わってることは当然なので、「え?おっ?!あれっ?」てな気持ちになって、その過去のタイトルを引っ張り出すことになるという…(笑)するとついつい、その前の作品まで読み耽る自分がいて、ああもしかしたらこれって作者の三津田さんの思うツボかも?って苦笑いしましたよ。
で。
その「はじめに」の中に、記述方法についての断りがあるのですが、これの最後の一文が大胆ですよね。こういう書き方をするってことは、例の『首無』のようなアクロバティックなことではないですよー、という宣言でしょう。だとしたらこれは誰のことなのかと、わくわくしながら読むわけです。
で、その当該箇所に辿り着いたとき、もしくは最後まで読み終えたとき、笑うか怒るか(笑)たぶん作者のシャレっ気だとおもう方に私は一票ですが、…もしかしたら私の勘違いで全然違う人物のことかも?だとしたら恥ずかしいなあ。

酷い旱魃か、反対に大雨による村の被害をおさめるために、四つの村の四つの神社が持ち回りでその儀礼を執り行うというしきたり。
その四つの村、四つの神社は、ひとつの川というかひとつの水源を祀っているので、全ての儀礼に協力してあたることになっている、その衆人環視の中で、ましてや過去に何度も難事件を解決してきたと有名な刀城言耶がいる前での、神男殺人事件。やがてそれは、連続殺人に発展していく…。

ということで私は<後期クイーン問題>を連想したのですが、結局、この<名探偵・刀城言耶>の目の前で繰り広げられる惨劇という構図を軸にして推理しても犯人が絞れるような気がします。作中にはそういうくだりはなかったですけど。
「何故、儀礼の最中に殺す必要があったのか?」
という疑問は、そのまま
「何故、刀城言耶の見ている前で殺す必要があったのか?」=「どうして刀城言耶がいるその時でなければならなかったのか?」
という問いかけになりません?
もともと鶴子の身に危険が迫っているという状況だったところに、ちょっとしたアクシデントがあって事態が変わり、ちょうどその時に当地に言耶さんが到着した。
で、一応は刀城言耶という人が村に入った目的は関係者全員が知っていたとは思いますが、彼がどれほどの名探偵なのか、その頭脳の働き方を知っているのと知らないのとでは、犯人の動きも違うと思うんです。言耶さんと話していて彼の推理の裏をかくこともできますが、おそらく言耶さんと直接話したことのある人物ならあえてその後の犯行に移ることに躊躇いが芽生えるんじゃないかな。するとそれは、名探偵の目には矛盾として見える。でもこの一連の事件に、そういうブレがないということは、彼に直接対峙していない人物なんじゃないかな、と。でも『山魔』のような例もあるしなー…。
登場人物の探偵の推理ではなく、一読者としての俯瞰から、私はそう考えました。
すると怪しいのは…。

最後の最後まで、あの人なんじゃないのかなーとずっと疑いつつ読んでましたが、……やられたなあ!最後の最後でこうくるか!
言耶さんと、ある人物との会話を、言耶さんがわざわざ場所を変えてまで配慮したのに、それを逆手にとっていたとはねえ。

今回の事件の前、龍一の事件のときから始まる、水使神社宮司の龍璽の腹の中が人間じゃないことが明らかになってきて、その真っ黒さに鳥肌がたちましたが、同時に神饌の内容の意味に膝を打った!
なんてこったい、そういうことか。
水を祀り水に悩まされる山間の村なのに、いくら儀式とはいえなんでそんな山海の高級品が取り寄せられるのか、そして大きさや量や張りが重要視されるのは、……いややなあ……。

過去のシリーズとのリンクと書きましたが、その作品でも同じですが今回はホラーというよりオカルト的な要素が強いです。
正一くんの能力が一番ですけど。

そしてその能力をもたない普通の人間が考え出したおぞましい儀礼と、それが引き金になった今回の殺人事件。
また、村一番の実力者とはいえ村の警察官を手足のように扱いまた介入を妨げる閉鎖性。

三津田さんのこのシリーズは、その閉鎖性によるところが大きいので、すっきりと全面解決にしなくてもいいわけです。
という事件後の、エピローグ。
これ、どっちだろう?
ただ名前を変えたのか、それとももともと性別が違っていたのか(この表紙イラストの意味がこういうこと?)。もしくは言耶さんの目をごまかすための偽装か。
水庭神社の彼が、彼らを心底心配するような親交があることが書かれているせいで、どちらの人物でもアリな気がするんですよね。
そしてもう一人は、どうなったんだろう。

そんな割り切れない感じのエンディングではありましたが、事件の数多い疑問点の洗い出しや、推理を立てては壊しつつ進む名探偵、偲ちゃんのナイスアシストと言耶さんとの噛み合っているようないないような会話のリズム、堪能しましたw

(2009.12 原書房)
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