こんな本読みました。

読んで感じて書き出して、そして忘れていく。備忘録ブログ。

スポンサー広告 > 『牧逸馬の世界怪奇実話』 島田荘司・編
ミステリ・その他 > 『牧逸馬の世界怪奇実話』 島田荘司・編

スポンサーサイト

--/--/--(--) --:--:-- スポンサー広告 EDIT
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Comment (-)

『牧逸馬の世界怪奇実話』 島田荘司・編

2008/09/03(水) 11:01:41 ミステリ・その他 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
田中芳樹先生オススメの一冊。ミステリ作家としての田中先生の言ですから、読まずにはいられない!
 実話、というくらいですから勿論、小説ではありません。でも普通に面白い読み物でした。文庫にしては厚いし文字も小さいですが、読んで損はありません。
 これから読もうと思っているかた、お楽しみを邪魔されたくないかたは、これより先にはお進みになりませんよう。



牧逸馬、といわれても、勉強不足の私は知りませんでした。
島田先生の解説によると、牧逸馬、谷譲次、林不忘という三つのペンネームを使い分けていたそうで、本名、長谷川海太郎、1900年生まれ、三十五歳の若さで死去。

この実話集には、有名な事件もあまり知らなかった事件もあります。
<切り裂きジャック>
<ハノーヴァーの人肉売り事件>
<マリー・セレスト号>
<タイタニック号沈没>
<マタ・ハリ>
<テネシー州、猿裁判>
<ローモン街の自殺ホテル>
<双面獣>
<クリッペン事件>
<ウンベルト夫人の財産>
<ドクター・ノースカット事件>
<ブダペストの大量女殺し>
<浴槽の花嫁>
……実は、もう一つトピックスがあるのですが、…その漢字だけはどーしても書きたくない~(泣)…それが何かは本屋さんで確認してクダサイ…ごめんなさい。

例えば<切り裂きジャック>。
ロンドンで、売春婦ばかりが狙われた大量殺人事件。犯人は捕まらず、ついに迷宮入り。
でも、これ以上の詳しいことはあまりよく知りませんでした。
それがこの本の中で、事細かに書かれています。どういう殺害方法だったのか、どういう場所で、何時頃で、捜査はどういう風だったのか。
それより何より、犯人の風貌を証言できる目撃者がいたこと、犯人の直筆メッセージと思しきものがあったこと、そして犯人まであと少しで手が届きそうなくらい、警察の捜査が犯人に迫っていたこと!どこからこの資料を入手したのかと驚きました。

また、<タイタニック>。
映画でさえ、テレビで残り三十分のあたりをさらっと流して観たくらいで全く興味が無かったのですが、この本では、タイタニック号の数少ない生還者の証言はもとより、周辺海域の様子が何より興味深い。
タイタニック号の沈没を起点に、その周辺の船の様子が皮肉たっぷりに描写されていて、まるで出来すぎた小説のようです。これが実話だというから、より悲惨ですね。牧逸馬氏の小説家としての技量は凄いものだと思いました。

他にも<人肉売り事件>や<自殺ホテル>、<双面獣>など、陰惨極まる事件の数々。どれも大層興味深い事件です。

その中で異彩を放つ、<テネシー州、猿裁判>。
なんですかこれ!もう、笑いながら読みましたよ。1925年というから確かに二十世紀に入っているのに、なんでこんな馬鹿馬鹿しい裁判を、心底真剣にやってんだー!いやさすがアメリカというべきか。そういや、今でも進化論を信じていない人が沢山いるお国なのでしたね…。

また、ちょっと愉快なのが<クリッペン事件>。
この中に、あのコナン・ドイルが出てくるのです。ちょうどシャーロック・ホームズが生み出されて、探偵小説として広く読まれだした頃のようで、ドイルは本当にちらっとではありますが登場するのですよ。ホームズの人気がこういう影響を及ぼしたかと思うと、何とも複雑なものがありますね…。


この本に取り上げられているのは、ヨーロッパかアメリカの事件ばかり。
事件の内容の為か、お国柄の違いか、それとも牧逸馬氏の中で欧州と米国にかなり心証の差があったのか、ヨーロッパで起きた事件とアメリカの事件では雰囲気が異なります。

欧州の事件は、じめじめした暗い雰囲気の漂う、それでいて上流階級の煌びやかさが散りばめられた印象があります。事件の舞台となった町並みも、田舎の一小作人であっても、連綿と続く歴史の重みを背負ったプライドを内包しています。

他方、アメリカの事件は何と言っても外野がやかましい!牧氏がある事件の文中に書いているのですが、“日本とはだいぶ考え方が違っていて、警察は怖いところではない。都会生活者の共同出資による番犬ぐらいにしか心得ていない”とされる警察の前で、群集はぎゃんぎゃんとヒステリックに喚き立て、死者を悼むよりも物珍しそうに見物する為に行列を作る。絶望のどん底に突き落とされた遺族や関係者とのあまりの対比に、まるでテレビのクライムストーリーを観ているような気がします。

ただ、どの事件にしてもそうですが、警察の働きは素晴らしいものです。事件の糸口を掴んだ時の警官の姿なんて、まるで警察小説を読んでいるような、カッコイイ探偵譚ですね。

文庫としては厚いほうだし、文字は小さい。でも、楽しく読みました。興味を持たれたら是非。……ただし、立ち込めるような生暖かい血の匂いで、むせ返るというかくらくらしますけれど…。

解説で島田先生が書かれていますが、これほど詳細で尚且つ面白い事件簿は、是非とも広く読まれるべきだと思います。編纂してくださった島田先生に感謝。

(2008.01.13)
スポンサーサイト
Comment (-)

ページの最初に戻る

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。