こんな本読みました。

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『僕たちの旅の話をしよう』 小路幸也 著

2009/11/17(火) 21:13:19 小路幸也 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 2008年11月号から2009年1月号までの3か月間に雑誌『ダ・ヴィンチ』で連載されたものに、続きが書き下ろされた作品。連載時からあったかくてわくわくして大好きでしたw
 そしてこうして一編の小説になって私の手元にも届いたわけですが、うむむむむ、こういう展開が待ってたとは…!予想外で、かつものすごくイイです!!
 もちろん大人も登場しますが視点人物は子ども達。なのにかなりの社会派です(社会派というミステリ用語を使っていいのか微妙なんですけど)。大人は当然、でももっと小学校高学年からの子ども達に是非読んでほしい。



ネットはもちろん携帯も当然のごとく圏外、子どもの姿はたった一人、村の住民のほとんどが高齢者という、山間の限界集落で暮らす女の子、藤倉舞。
彼女が飛ばした赤い風船に、彼女の心を込めた手紙を付けておいた。
やがて、東京にまでたどりついたその赤い風船を、偶然、同年代の男の子2人と女の子1人が拾い上げ、そして舞と彼ら3人の文通が始まった。

いつか、会えることを夢見て。

そこまでが、ダ・ヴィンチ連載時のざっくりとした流れでした。

で、その続きはどんなかな~♪と夢中になって読み耽り。

うーわー……。
こうきたか!
うんでも、これは、小路さんらしい小説ですね!
ということで、いいお話でしたwww

えーとね、子どもを見くびっちゃいかん!というお話(笑)

千里眼のような眼を持つ少年、芳野健一。
人並み以上に優れた嗅覚を持ち、そして人間の内面を匂いで嗅ぎ分けることのできる少女、喜田麻里安。
聴覚がずば抜けてどころか最新鋭の機器でさえ太刀打ちできないくらいに発達している少年、米沢隼人。

この3人は、それぞれ家庭環境が複雑で、子どもらしいあけっぴろげさとは一線を画した緊張状態の中で生活していて。
見たくもないものまで見えてしまう眼。
小学生で既に人間の善悪や裏表を嗅ぎ分けてしまう鼻。
聞きたくないと思っても聞こえてしまう耳。
そして、嗅覚に優れた麻里安は別にして、他の2人はこの能力のことは家族にも秘密にしている。直接的な表現はないんですが、3人とも精神的にもう疲弊していたんですよね。

そんな中、文字通り舞い込んだ、舞からの手紙。
人間の醜い部分なんてこれっぽっちも無さそうな、静かな山の暮らしの様子。
そりゃー、行ってみたいとおもうよね。

で、冒頭が舞ちゃんが風船にくくりつけた最初の手紙だったので、このお話は舞ちゃんが中心人物なのかと思ったら。
彼女は、マドンナの役どころでしたね。
あるいは、イスカンダルの女王・スターシャとかシャルバート星のルダ王女とか(なんつー譬えだ★笑)さしずめ3人は、宇宙戦艦ヤマトの古代君と雪ちゃんと島君(あるいは真田さん)てとこ?←大暴走

とにかく、今度の夏休みに舞ちゃんのところに行きたい。
山の中で思いっきり遊びたい。

ただそれだけのことが、実はこの3人には困難で。
それどころか事態はどんどん悪くなっていく。

健一くんの両親の問題。
麻里安ちゃんの母親の心の弱さとカンザキの存在。
隼人くんが一番平穏な生活で、でも父親と兄貴の過干渉が。

舞ちゃんは舞ちゃんで、手紙をやりとりするうちに明かされる彼女のこと。おじいさんの心配。

この子たちは、親よりも大人で、でも本当は子どもでいたかったと思ってるんですよね。
そして当の、この子たちの親は、そのことに全く気が付いていない。

彼らの味方は、健一くんの叔父さんで探偵業を営むユウジさんと健一くんの世話を一手に引き受けるハウスキーパーでユウジさんの恋人の真屋さん。
それともう1人。これは後々のお楽しみ♪

ミステリに慣れた人間が読んでも、このお話は、ミステリ風だと言っていいと思う。あるいはハードボイルドタッチ。
キャラクタが要所要所で待ち受けていて、カチッカチッと嵌まっていって、事態が動く。謎がどうこうより、子ども目線でなら冒険てところですが、ユウジさんはじめ大人の動き方はミステリっぽい。
でも最後は、ちゃんと子ども達の為に収束していく。大人の責任の取り方なんて、子どもは見なくていいんですよね実は。

自由でありたいのに、親がいなければ何もできない、生きていけないというジレンマを抱える4人。舞ちゃんでさえ、大人に対する子どもの自分の無力さを噛み締めていて、それがもうすっかり折り合いを付けてしまった感じで、こんなに急いで成長しなくても、と切なくなりました。
一方で、隼人くんをリーダーにして、大人との駆け引きができる。その毅さが頼もしいなあとも。
ユウジさんを頼りにしながら、少しずつ大人の秘密に迫って行く隼人くんと麻里安ちゃん、そして暗闇の中の健一くんの、現状把握能力の高さ。

それにしても、ちょっと皮肉な関係になってますよね。
健一くんの眼の能力を、一番欲しいのはおそらく彼の父親。
隼人くんの聴覚は、過干渉気味な父親と兄貴の好奇心の裏返し。
麻里安ちゃんの嗅覚は、本来守ってくれるべき母親の替わりでありまた母親を支える為のもので。

自分で考えることを放棄した大人、確かに愛情はあるけれど子どもに依存している親、自分の好奇心を善意にすり替えて相手を傷付けることに思い至らない大人。
現代社会の、全部が全部じゃないけれど確実に存在する、大人になりきれない大人たち。
そこにつけこむ人もいるし、その場所から動かない人もいる。
そんな姿を、子どもはちゃんと見ているってことです。
子どもの為に、大人は何が出来るのか。どこからどこまでが大人の責任か。
自分の息子や娘に、どこまで個を認めてやれるのか。そして庇護してやれるのか。

自分の子を信頼することと、放置したり過干渉だったり子どもの言葉を先取りすることは違うんです。それは依存です。親という自分のポジションを守る為の。

静かな山のなかで、一時の安らぎを求めて、旅に出ようとする3人。
旅の話をしよう、というタイトルですから。
無事に辿り着いた後はもう、思いっきり弾けて遊び倒して、くたくたになるまで。
そんな、子どもに戻って。
そうして、彼らの友情は、どこまでも続いていくのでしょう。
舞ちゃんの住む山の高さと、健一くんたちの東京のビルの高さ、彼らの中のものさしがこれで通じることが子どもらしくて印象的でした。この共通言語がある限り、この子たちは大丈夫ですよねw

このお話、講談社のミステリーランドがぴったりだと思うのは私だけですか?
子ども達にも読んで欲しい。
そして自分の友達を大事にしてほしい。
つらつらとそんなことを思いました。

(2009.10 メディアファクトリーMF文庫)
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