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『死者を起こせ』フレッド・ヴァルガス 著

2009/11/03(火) 02:50:07 フレッド・ヴァルガス THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 こないだ読んだ『青チョークの男』がたいそう好みだったので、このアダムズベルグ署長のシリーズの続編はまだ邦訳されてないみたいだし、じゃあ別のシリーズものを読んでみようかと手に取った、《三聖人シリーズ》の第一弾。
 ああ面白かった~!やっぱりいいわーwww
 フレンチミステリを見直した!



《三聖人》。
三十代半ばの3人の歴史学者。
中世専門のマルク(愛称マルコ)、先史時代専門のマティアス(愛称マタイ)、第一次大戦専門のリュシアン(愛称ルカ)。
就職難のフランスにあって、やはり無職の、超貧乏な学者が生活のためにボロ館で同居することになり、そこにマルクは伯父のアルマン・ヴァンドスレールも連れてきて、4人の共同生活が始まった。
両隣には、ピエールとソフィアのモリヴォー夫妻と、ジュリエットとジョルジュのゴスラン姉弟。
4人の新しい隣人を観察していたソフィアは、ある日、相談をもちかける。自宅の庭に突然現れたブナの木を調べてほしいと…。

巻末の著作リストによると、このタイトルが発表されたのは1995年、『青チョークの男』の4年後です。
その間にも1作出てるみたいですが未邦訳のようです…『青チョーク』を読んだ後でこの《三聖人》シリーズを読むと、魅力的なキャラクタ造形が一層際立ってますね!

とにかく、なんといっても三聖人のマルコ、マタイ、ルカ。
それぞれがそれぞれの研究分野を全く理解不能と見なしているのに、同居するうちにお互いの良いところがちゃんと見えてくる、その柔軟性。

マルコことマルクは強情で頑固でカッとしやすくて、去っていった妻が忘れられないくせに美しい女性にめっぽう弱い。3人の中で一番の理論家で、考えすぎる傾向ではあるけれど、研究者としての素質からか生来のものかはともかく、様々な思考の末にロジックを構築する、本書の主な探偵役。

マタイことマティアスは、大男で寡黙で落ち着いていて、人に安心感を与えるタイプ。一番思い遣りがあって、ルカはともかくマルコは大好きな友達。先史時代専門だからか、言葉によらない天才的な本能で行動し、服を着るのが大嫌い(笑)せめて女性の前に出るときは少なくとも全裸はやめようね★

ルカことリュシアン。とにかくお喋りでそして声がデカイ。自分の基準はあくまでも第一次大戦で、会話が軍隊めいているけれど何故か周囲が受け入れている。
長広舌で脱線しやすいのにポイントはちゃんと押さえてるし、馬鹿じゃないと本人も言うように、言っていいことと悪いことの区別はできるし、美的感覚も3人の中でピカイチ。そして、最初は理解できないと思ってたマルコやマタイのことを、早い段階で認める目を持っている。

この3人を指導(誘導?)するのが元刑事である伯父さんのアルマン・ヴァンドスレールで、その高圧的なところや途中で口を挟まれるのを嫌う性格と老年になっても衰えない美丈夫であること。特に甥のマルコのことはかなり正確に理解していて、そして3人との同居生活を一番楽しんでいるふうに見えます。

キャラ説明はこんなところにして、本当ーにこの3人はいいトリオ。で、魅力的です。3人とも文系の学者なせいか根本的に互いを理解するのは早い。

ソフィアから多額の報酬でもちかけられたブナの木の調査。ソフィアのことに全く関心を払わない夫。そのうちブナのことなど皆が忘れていく中、マルクはずっとそれに引っかかっている。そして彼女は失踪する。

この、突然現れたブナの木、という謎を提示して、失踪、そして死体。
フーダニットなんですが、失踪したのか殺されたのかの確信が持てないまま、ある日ソフィアの家を訪ねてきた男性によって、事件は急展開します。その一見繋がりのなさそうな過去の事件と今回のソフィアの事件が、ある人物(たち)を軸にぐいぐいと繋がっていくそのリズム感がすごくいい!
もともとリズムのいい文体だなあと思っていたんですが、中弛みすることもなくちょうどいいところで事態が動く。これはもちろん作者のプロットの妙ではあるのでしょうが、作者自身のセンスの良さも感じます。

《三聖人》という存在のせいか、事件が発覚して遺体が出ても、それほど血糊べったりとか損傷の描写が生々しいということもないので、真犯人の悪意や憎悪が明かされてもあまり重くなってないですね。いやその分、その悪意や憎悪は凄まじいですけど…。

90年代デビューというと、謎解きよりもサスペンス要素の強いミステリーの方が主流なはずのヨーロッパ・フランスで、こういうガチガチの本格ミステリが出版されてそれがフランス・ミステリ批評家賞を受賞するというのは素晴らしいことだと思います。ていうか嬉しい。これからもどんどん書いて発表してほしい。

巻末の訳者あとがきにありますが、このフレッド・ヴァルガスという人は、日本の新本格の先生方と極めて近いミステリ観を持っているようです。
「ミステリは社会を映す鏡でなければならないとか、社会批判がなければならないとかいう考えには与しない」
「ミステリは「不安の解消」を楽しむものなのである。(中略)ミステリは本の最後には解決される。そして読者は安らかに眠れるというわけだ」
…これって、有栖川先生のミステリに近いなあと思うのですが…私だけですかね。
そしてだから私の肌に合うんだろうなあと。
社会批判も時勢の興隆も脇において、ただ楽しむためにだけ謎を生み出す。だから、余計なことを考えずに謎に集中していられるんです。作者も読者も。
その上、パズラーの要素一辺倒ではなくてちゃんと人間観察も怠らない。犯人当てというパズラーは小説としては稚拙だという批判は、彼女の作品には全く当てはまりませんよね。

現代ミステリにおいて、こうした謎を楽しむミステリはだんだんと少なくなっているような気がする昨今、このフレッド・ヴァルガスというフレンチミステリの女王は嬉しい存在です。
もちろん、すぐにシリーズ2作目の『論理は右手に』を読むつもりです♪♪♪


(1995年発表、2002年6月邦訳)
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