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『論理は右手に』フレッド・ヴァルガス 著

2009/11/03(火) 02:54:33 フレッド・ヴァルガス THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 
 《三聖人シリーズ》第二弾。
 そしてヴァルガス作品の邦訳はここまでです。もっとさくさく翻訳してくださーい!
 前作『死者を起こせ』もそうでしょうが、ミステリ好きでもない限りご存知のかたは少ないと思います。もちろんぼかして書くよう頑張りますが、どこでどうネタばれになってるかもしれません。どきどきしながらお付き合いください(苦笑)



『死者を起こせ』では、住人の知らない間に突如出現したブナの若木が事件の発端でしたが、今回のきっかけはどこの飼い犬とも分からない犬の散歩中の落とし物。普通ならまず誰も気にも留めない、という前に、今の日本ならペットの糞は飼い主の責任で処理するのが当たり前になっているので、こういう話は一昔前の懐かしさです。
解説によるとパリで犬の糞の処理を飼い主が責任もってしなさいよーという条例が施行されたのはつい最近のようで、それまではパリってそこらじゅうに糞が落ちてたそうな。
で、この小さな出来事をきっかけに、なんと村を巻き込む大事件に発展するんですから、よほどしっかりプロットを練らないと空中分解しそうなところ、そこはさすがにヴァルガスさん、綺麗に繋がっていきます。

今回は内務省の情報機関をクビになった上に恋人にも逃げられて踏んだり蹴ったりのルイ・ケルヴェレールさんが主人公です。
それと重要なキャラクタとして、マルトばあさん。
素性は…書きません、スパムがどさどさ来そうなので。手に取ってご確認ください。
このマルトばあさんがいい!
格言に満ちていて、男女の機微にもそれ以外の人を見る目にも長けてて、ちょっと擦れてるけどイイ人です。ケルヴェレールさんはもちろんマルクのこともちゃんと理解して、的確な助言をして、もう情報屋としては使えなくともその存在はあたたかい。
三聖人シリーズというには、ちょっとその三人の影が薄いなあとも思ったけど、でもポイントポイントでいい仕事してます。

相も変わらず貧乏暮らしの三聖人+伯父さん。住まいのポロ館に暖房をつけようと就活中のマルクに伯父さんが紹介したバイトが、ルイ・ケルヴェレールさんの家での情報整理の仕事で。
そこでマルクは、雇い主のルイさんから、張り込み中に見つけたという犬の糞に紛れ込んでいた一片の骨を見せられて、過たず意見を述べ、そして巻き込まれていきます(苦笑)
研究に没頭したいのに知らされた謎のことが気になって集中できなくなっていく、その様子が素敵です。マルクのような根っからの学者に不可思議な謎なんぞ振ったらそりゃ思考はそっちに流れます。
そしてマルクが動けば他の2人も動く。今回は主にマティアスが大活躍。彼の仕事を見ていたからこそマルクは謎の重要度が認識できたし、終盤にはマティアスでなければ分からなかった物的証拠が見つかったりします。
ただ、リュシアンだけはちょろっとしか出てこなかったけど。喋りすぎ声がデカすぎな彼には、今回の事件は不向きということで。ルカがわりとお気に入りなので、シリーズ続編では彼も大活躍でありますように(フランスでは1997年に発表済み)。

ルイさんは何の権利もない自分がこの殺人(と確信している)事件を捜査する大義名分を手に入れる為に、地区の警察署長と心理的な駆け引きをしますが、そのやりとりに感心。なるほどー。
そのささいな、糞に混じっていたものが人骨かどうかも分からない状況が、かつてルイさんと別れた恋人だった女性に繋がっていたり、お気に入りのカフェを知る事ができたり、とルイさんの内面を揺らし続けますが、

事件の謎と同時に何故彼が内務省をクビになってもフランス全土の情報を集めているのかという背景に、ルイさんがフランス人とドイツ人の境界に立っていることが関係していて、終盤でそのことがものすごい重量で迫ってきてびっくり。
それと同時になんでルイさんが「元警官・元刑事」ではなく「元情報員」なのか、というちょっとしたズレに納得です。

人骨の謎の方は。
合間に挟まれる犯人のモノローグで、あいつかこいつか、とおおよそ2~3人に絞られますが、その決め手は、マルクとマティアスの観察眼だったというのがファンには嬉しい。
当初は殺人事件なんて誰も信用しなかったのに、ルイさんの頭の中では高速で回転していて説得力のある理論を展開されて唸りました。そうかー「足の指の骨」っていうのは、こういうことかー。
で、被害者が特定されると同時に、その被害者が生前かかわった事件がからんできて、ものすごく欲張りです(笑)
過去と現在が繋がったとき、真犯人の悪意がすさまじくてヘヴィーなんですが、でも読後感はいいですよ。アダムスベルグ署長とダングラールさんの名前も出てきてニンマリ。

前作でもそうでしたが、ヴァルガスさんのミステリは凄惨な惨殺死体がの描写があるわけでもなく、マルクやマティアスが学者らしい目線で見ていて、そしてルイさんやマルトばあさんやアントワネットママが素敵。フレンチミステリらしいエスプリの効いた、小粋な本格ミステリです。

あっと、東京創元社さん、この『論理は右手に』ですが、表紙カバー折り返しの登場人物に誤植がありますよー。昨年2008年に初版が出て以来、増刷かかってないのかな。こんなに面白いのに、もったいない。


(1996年発表、2008年4月邦訳)
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