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『花と流れ星』 道尾秀介 著

2009/10/24(土) 15:26:59 道尾秀介 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 最近の道尾作品をそれほど読みたいとは思いませんが、真備シリーズは別。『骸の爪』が忘れられない。
 その真備シリーズ初の短編集です。
 なるべくネタばれしないように書くつもりですが、未読のかたはお気をつけくださいね。



【流れ星のつくり方】
【モルグ街の奇術】
【オディ&デコ】
【箱の中の隼】
【花と氷】
以上五編。
うち、最初の【流れ星のつくり方】のみ、アンソロジー『七つの死者の囁き』で既読でした。

率直に言うと。
こじんまりしてるなあ、と思いました。

ひとつひとつはどれも巧いと思います。
特に私がミステリらしいミステリだと感心したのは【流れ星のつくり方】と【モルグ街の奇術】。特に二番目の【~奇術】の方が、より好きです私は。もちろん【流れ星~】の方も、道尾さんらしい仕掛けで、あのアンソロでもずば抜けていると絶賛したミステリ読みさんが多かったのも頷けますね。

ただねえ、…なんいてうか、…んーと、あ、そうだ。
三津田さんと似たような印象でした!今年前半に出た『密室の如き籠るもの』というあの短編三つと中編ひとつのノベルス、あれも私は、「せっかくの刀城言耶シリーズやっちゅーのに、いまひとつらしくない…」と、まず思ったんですが、あんな感じ。三津田さんも道尾さんも短編が今ひとつなんじゃなくて、短編の方がいいものと、長編でこそ活きるものってありますよね。刀城言耶シリーズにしても、この真備シリーズにしても、短編よりは中編か長編の方が、その特徴であるホラーとミステリの融合という面においては良いんじゃないかと生意気に思ってしまいました。

思えば、京極堂から続く傾向ですが、ホラー風味だったり薀蓄満載のミステリの場合、短編だとどうしてもその部分にばかり枚数を割けなくて結果あっさりした印象になってしまう、三津田さんも道尾さんもそうですよね。
ということで。
道尾さんには、是非とも真備シリーズの新作大長編なんぞ書いて欲しいなあと切に願います。それだったら喜んで買うよ私!

で、この『花と流れ星』。
ああ、そう思ってみると、今回のはホラー色は皆無ですね。むしろ最近の道尾さんのカラーである心理面の方が大きいかな。

前2作では、真備氏の友人である売れないホラー作家の道尾氏の視点なんですが、今回は【~奇術】と【箱の中の隼】は道尾氏、他3編は真備氏の助手である北見凛嬢から見た展開になってます。
そしてこの北見嬢の視点というのが成功してますね。
彼女の心の内には、真備氏にも通じる部分があって、2人のどうしようもない哀しみや空虚、それからつめたい部分、それが相談者とシンクロしているようです。
その上で、どうすれば相手を極力傷付けずにそっと背中を押してやれるかを、静かに考えているんだと。
それがこの短編集のテーマになってます。

だからこそ、能天気な道尾氏の存在は、うっとうしくもあり温かい繋がりでもあり、ってところでしょうか。いやマジで、道尾氏がイタイ存在に思えてくるんですもん。でも、真備氏も北見嬢も道尾氏がいなかったら、たぶんもっと閉じていたと思うので、せいぜい掌の上で転がしてやってくださいな。

この五編の中で、真備氏の心が少しだけですが剥き出しになるのは、【~奇術】と【花と氷】。別に彼の心の傷がそれほど珍しい設定ではないんですが、だからこそ譲れない一線があって、いつになったら、そしてどうしたら彼は心が晴れるんだろうなと思う。よしんば亡き妻に出会えたとしても、彼の中の淋しさはどうにもならないのは分かってるんだというキャラですもんね。
その上で、勝負ふっかけられて推理してみせたり、死にたいと願う人を静かに諭すんですから、じゃあ真備氏は誰にもしくは何に救われるんだろう。

その点、道尾氏は気楽ですなあ(苦笑)
んで、すいません、4番目の【箱の中の隼】は、ほぼ斜め読みしました…。
エジプトの神の名前が出てきた時点で、すんなり読めなかったんです。
私にとって、エジプトの神々の名前は、宗教じゃなくて、神話であり記号でもあります。レリーフやヒエログリフと同義です。中二で初めて古代エジプト文明に触れて、それからエジプトに関するものは全てを知りたいと願ったあの頃から、私にとっては、エジプト神話はレリーフやヒエログリフなんです。
それをこうして宗教に絡めてみたり、小森さんの『ネヌウェンラーの密室』のように血みどろのミステリに使われると、ものすごい違和感がどうしても拭えなくてミステリだと言われてもまともに読めません。(いやもう『ネヌウェンラーの密室』はキョーレツでした…王墓の内部とか、ぜーんぶ脳内に浮かんでくるもんだから、血の匂いが立ち込めてくるようで…。犯人当ての『Rの封印』に挫折したのもそれが原因です)

ああでも、私が最近の道尾作品に共通して感じる、一種のあざとさが今回はほとんど感じられなかったのは嬉しい。これはやっぱり真備氏の心の暗さというか影の部分に助けられているんだと思います。だからこのシリーズ好きなんだ。

柿ピーのバリケードに笑いました。


(2009.8 幻冬舎)
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