こんな本読みました。

読んで感じて書き出して、そして忘れていく。備忘録ブログ。

スポンサー広告 > 『少女ノイズ』 三雲岳斗 著
三雲岳斗 > 『少女ノイズ』 三雲岳斗 著

スポンサーサイト

--/--/--(--) --:--:-- スポンサー広告 EDIT
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Comment (-)

『少女ノイズ』 三雲岳斗 著

2008/09/03(水) 10:54:33 三雲岳斗 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 ソフトカバーの表紙は、パッと見ラノベのようなのですが、ミステリです(笑)。 私は三雲さんの<レオナルドシリーズ>が好きなので、著者ご本人が「本格ミステリを書きました」と宣言されていては読まないわけにいきません。
 ということで、未読のかた、ネタバレはダメというかたは、これより先にはお進みなりませんよう。




三雲氏のミステリで一番好きなのは、『旧宮殿にて』所収の『二つの鍵』です。シリーズ中でもかなりかっちりしたミステリで、ロジックが炸裂していて、有栖川先生の『スイス時計の謎』を彷彿とさせる作品でした。
…つまり、なんっかどっかで読んだことのある、連作ミステリなんですね、三雲氏の作品って。(←これを褒めているのか貶しているのかは、自分でも微妙です…)

この『少女ノイズ』も然り、まずキャラ設定。
語り手の大学生、高須加くんは殺人現場の写真を撮らずにはいられない悪癖を持ち (これは乙一氏の『GOTH』によく似てる)、スカくんにバイト先を紹介した皆瀬梨夏はスカくんの通う大学で心理学系の法科学を専攻している特任準教授で異常犯罪マニア。派手な顔立ちと服装、大人げの無さ、そして警察に顔が利く頭の回転の速さ。これ読んで、有栖川先生の火村準教授を連想しない人のほうが少ないと思う。

また、スカくんをワトソン役に、探偵役となる女子高生の斎宮瞑。
危うい家庭環境と成績優秀の故に、家でも学校でも“いい子”を演じる彼女が唯一自分に戻れる場所が、予備校の隻羽塾。瞑をないがしろに出来ない塾側は、梨夏から差し向けられたスカくんを瞑の世話係にする。ここに、主人と下僕の関係が成立しますが、スカくんもしだいに慣れ、瞑もスカくんには感情を顕わにするようになります。
梨夏さんに劣らず頭の回転の速すぎる瞑は、スカくんに事件のあらましを聞いただけで大方の見当をつけてしまうほどの、天才的な探偵と言っていいでしょう。また、塾での彼女は、死体と見まごう程の無気力さ。なので、死体の写真を撮ることをやめられないスカくんは、優等生の彼女よりも塾の屋上で動かない彼女の姿に惹きつけられています。

…ね、この辺もやっぱり『GOTH』みたいな印象。

まあ、事件は、謎解きは工夫を凝らしてありますから、どこまでも二番煎じな感じはしませんが。
この『少女ノイズ』は五編からなる連作集で、つまり、それぞれのお話の前半部分には、スカくんと瞑、梨夏さんの役割が繰り返し出てきます。
最初の<Crumbling Sky>では、その説明が長い所為なのか、肝心の謎解きがかなり大雑把。小学生の頃のスカくんの身に起きた不思議とその後のトラウマである、開けた場所への恐怖心。瞑からのちょっとした謎掛け。なんだかもったいない気がするくらいミステリとも呼べないほどの粗さがあります。

二作目の<四番目の色が散る前に>。
モチーフはクリスティの代名詞ともいえるミステリです。
このお話の核は、犯人の悪意は有ったのか無かったのか、どこからどこまでが計画されたものなのか、結局は明かされないことですね。瞑によって、一応の解決を見るのですが、瞑にしても犯人から直接聞いたわけでもなく、過去の事実から多分こういうことなんだろう、と推測するしかありません。
女子高生と車の運転のくだりは、都合が良すぎる気はするけれど確かに容疑者リストから外れる要因になりうることに感心しました。 

三作目の<fallen Angel Falls>。
塾の屋上で今にも飛び降りそうな女子高生、浦澤華菜と面識をもったスカくん。
ある日、塾の控え室で先輩のバイト講師と雑談していたスカくんのところに、怪我人が出たと、ある生徒が知らせてきた。その怪我人とは浦澤華菜で、机の中に荷物を置こうと手を入れたところ、仕掛けられたガラス片でざっくりと切ってしまった。現場の自習室は他に人もおらず、かといって席が決まっていないので、無差別の悪戯なのか狙われたのかが判然としない。華菜は以前にも狙われて怪我をしていたし、学校では心中事件をおこしていた。

このあたりから、ミステリの謎解きとしてはスマートになっていきます。
数々の嫌がらせというには度を越した、犯人の意図と動機、また、狙われた華菜のほうにも口を噤む動機と隠された感情があり、それほど不自然でも突飛でもなく。

そしてまた、このあたりから、瞑の感情が一定の方向に向かいはじめます。これをつまらなく思う人もいるでしょうし、言っても一人の女子高生なんだからさもありなん、と思う人もいるでしょうね。

で、四作目の<あなたを見ている>。
スカくんは塾である女子生徒からストーカー被害についての相談を受けた。
「この手で幽霊を刺してしまった」という。随分昔から誰かにつきまとわれていたが、高校生になってストーカーが凶悪化し始めた。とうとう、家にまで入り込んだその男を、近くにあった切り出しで刺した。すぐに部屋に籠もったが、恐る恐る現場に戻ってみると男の姿はなく、血痕も凶器も何ひとつ無い。警察が調べてもルミノール反応が出なかった。だが確かに自分は刺したのだ、と。

いわゆる“消えた死体”ものですね。
梨夏さんにある現場に連れて行かれたスカくん。そこが通り魔事件の発生した所で、被害者はいるのに犯人の形跡が無い。凶器も無い。
ここで、女子高生に付きまとっていたストーカーと結びつくまではセオリーですよね。
瞑によって明かされた真相は、良く出来ていました。ルミノール反応が出なかった理由とか。刺された男が何故離れた場所で通り魔に遭ったと偽証したのかなんて特に。真犯人が何故そんなことを目論んだかが些か弱いようにも思いますが。また、刺された男との関係も、ちょっと有り得ない気がしなくもないけれども。
ここで、スカくんと瞑は離れてしまいます。

最終話<静かな密室>。
初めてスカくん自身が殺人事件の容疑者に。スカくんの褒められない趣味である、殺人事件の現場写真の蒐集癖が不利に働きます。
スカくんが爆発事件の被害者であるのに、それすらも証拠隠滅と見られてしまう。
彼に出来るのは「僕は名上遥香を殺していない」と訴えるだけ。
そこに現れたのは、姿を消した瞑だった。

ここで、表紙の大きなヘッドフォンが意味のあることに気づきます。また、日頃、瞑がいつも付けていたヘッドフォンはこういうものだったのか、と知らされる。犯行現場が何故静か過ぎるはずの塾での試験中だったのか、教室の配置にこういう意味があったのか。こういった知識があれば、考えても不思議じゃない犯行なんでしょうね。
そして、スカ=スカベンジャーという特異な位置付けだった彼も、非凡な探偵役だった瞑も、異様さがだいぶ薄れて現実感が増しています。このあたり、ミステリ読みさんの評価はまちまちなんですが、三雲氏ならこうなるでしょうよ。ヘッドフォンのコードの紅い糸、なんてこっ恥ずかしいエンディングは、『M.G.H』に通じるところがありますしね。

本当に褒めてんだか貶してんだかわからない感想ですが、買って損したって気はしません。ミステリのトリックは結構新鮮味があるように思います。私としては、<レオナルドシリーズ>ももっと書いて欲しいところ。

(2008.01.08)
スポンサーサイト
Comment (-)

ページの最初に戻る

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。