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『乙女』と『狸』 森見登美彦氏の2作

2008/09/03(水) 10:52:57 森見登美彦 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
森見登美彦氏の『夜は短し歩けよ乙女』と『有頂天家族』の感想です。
えーと、『有頂天家族』の感想文を書こうとすると、どうしても『夜は短し~』を引き合いに出さないわけにはいかなくなりまして。
なので、この二作を未読の方、ミステリ的なネタバレではないけれども先入観を持ちたくない方は、ここで回れ右してください。



『有頂天家族』の評判がすこぶるよろしいので、一般書店で買おうかぶくおふ落ちするのを待とうかと思案していたら、ぶくおふ年末のセールで<単行本三冊千円>の真っ只中にこの『有頂天家族』を見つけまして、即買いしました。森見さん、ごめんなさい。
で、満を持して読み始めました。

うーん。確かに楽しいし、登場人物、じゃないか登場狸物の造形は巧いです。
京都の架空の街も、実在の街と背中合わせで愉快。
…でも、でもね、私の個人的な印象としては、勢いがない。
『乙女』の時のような、どうなるんだろうわくわく感が、薄いのです。

『有頂天家族』の語り手は、京都は糺の森に住む下鴨家の三男、下鴨矢三郎。日々面白ければそれでいいという、調子のいい狸です。
長男矢一郎は生真面目だが融通がきかなくて土壇場にとことん弱く、次男矢二郎は狸を捨てて井戸の中で蛙になり、四男矢四郎は上手く化けられずすぐに尻尾をだしてしまう未熟者。
四兄弟の偉大な父、総一郎は、人間に鍋にされてあっけなく世を去り、残された母は息子達を過大評価しながらも優しく見守る。
一家に敵対する夷川家の阿呆兄弟狸・金閣と銀閣、その妹の海星。
四兄弟の師で、天狗の赤玉先生と、先生にかどわかされて天狗顔負けの力を持つに至った、人間である、弁天こと鈴木聡美。
この狸と天狗と人間が中心となってお話はすすんでいくのですが、最後の最後、母と共に兄弟揃って大ピンチ!の段になってそれぞれの個性が良い方向に発揮されるものの、それまでは何ひとつ変わらず、阿呆狸たちが右往左往しているだけで、どうなるんだろう、よりも、どうにもならない。
冗長、とまでは言いませんが、途中で飽きてきたんですかね。

京都の街を何でもありのフィクションで仕立てて、狸が化けてうろうろしたり船を浮かべて五山の送り火を見物したり、<偽電気ブラン>を作っていたりと、人間と狸の境界線がやけに曖昧で、森見氏のファンタジー魂が炸裂しています。

『乙女』のほうは、人間しか出てきませんが (あ☆一人だけ人間なのか天狗なのかよくわからない人がいたな) 狸のように逃げたり隠れたりしないので、さくさくお話が進むのです。その違いかな。
<黒髪の乙女>にも<貧乏学生の私>にも名前はありませんが、脇を固めるキャラが強烈で、名前を知らなくても全然平気。多分それがいいのだと思います。
恋焦がれる乙女の視界にどうにかして入ろうと立ち回る私と、ただ美酒が頂けて<偽電気ブラン>の為なら体も張れる天晴れな乙女の天然さ。周囲の思惑や動きとは関係なく飄々と歩く姿の乙女に、万年床の中でひたすら片想いの私の涙ぐましい努力は報われるのか。
ある評論家さんが、「自分の学生時代の姿、心情をここまで書き込んでくれるとは!」みたいなことを書いてましたが、やはり何かしら感情移入しやすいお話なのでしょうね。

どちらの作品にも<偽電気ブラン>というお酒が出てきますが、これは同じ名前の別設定かな。ミステリならさしずめ【偽電気ブランシリーズ】とでも言いたくなるような…。

どちらがお好みかは人それぞれです。
『有頂天家族』を家族小説というなら、小路さんの (今年の怒涛の新刊ラッシュからすればもう、小路さん、なんて軽々しくお呼びするのもおこがましいのかも…) 『東京バンドワゴン』シリーズという珠玉の名作があるだけに、いくら愉快で阿呆な狸とはいえちょっと中途半端な気がします。
狸というか毛玉の可愛らしさならピカイチ!狸を抱きしめたくなるかも (さすがに鍋にしたいとは思わない) だし、実際ひょっとしたら京都という街には半分以上、狸や天狗がうろうろしてるのも楽しいような怖いような。
『乙女』のほうが、私は好きです。枚数としてもちょうどいいし、展開も速くてノリがサイコー!恋は盲目と言うのか、限りなく現実の京都大学に近い大学の学生さんに親近感がわくというのか。京大の【11月祭】を見てみたくなりますね。ほんまにどでかい象のハリボテがあったら、腹抱えて笑ってやる!

文芸誌『幽』の対談で、綾辻先生が『有頂天家族』を褒めちぎってらしたし、ライターさんや書評家の評価も『有頂天』の方がよろしいのですが、私はやっぱり『乙女』の方がいい。
…あ、あれ??
なんだかミステリ界の道尾秀介氏と同じパターンになってない?
本格ミステリ大賞まで獲った『シャドウ』がどうしても好きになれなくて、『骸の爪』が道尾氏の最高傑作だと思う私は、やはり天の邪鬼なのですね……。

うーん、モリミーの初期作品をもっと読んでから、今後新作をどうするか考えようと思います。

(2008.01.02)
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