こんな本読みました。

読んで感じて書き出して、そして忘れていく。備忘録ブログ。

スポンサー広告 > 『寒椿ゆれる 猿若町捕物帳』 近藤史恵 著
近藤史恵 > 『寒椿ゆれる 猿若町捕物帳』 近藤史恵 著

スポンサーサイト

--/--/--(--) --:--:-- スポンサー広告 EDIT
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Comment (-)

『寒椿ゆれる 猿若町捕物帳』 近藤史恵 著

2009/06/18(木) 15:29:24 近藤史恵 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 すっかり忘れておりましたが、これでようやくシリーズ最新刊にこぎつましたね。ちなみにこのタイトルから単行本です。
 これも前作と同じく、中編三つからなる連作集。そしてじわりとレギュラーキャラが増えてます。
 なのでやっぱり、このシリーズを全部読破してから、このエントリの感想にお付き合いくださいね。




2007~2008年にかけて、『ジャーロ』にて前後編の形で発表された三作品。

【猪鍋】…玉島千蔭さんのお見合い相手だったにも関わらずその父・千次郎パパに嫁入りしたお駒が身籠った。つわりがひどくてほとんど何も食べられない。このままでは母体までが危険だと心配した千蔭さんと千次郎パパは、巷で評判の猪鍋を食べさせてくれる店にお駒を連れて行く。その時、店に乱入した男がいた。

【清姫】…千蔭さんと八十吉さん、そしておろくさんが連れ立って芝居見物。中村座の超売れっ子女形である巴之丞が、“安珍清姫”を下敷きにした新作を披露するという。芝居が終わり、初対面した巴之丞とおろくさん。その席で、おろくさんが一言「巴之丞様もお気をつけなさいませね」その言葉どおり、巴之丞が何者かに刺されるという事件が起こった。

【寒椿】…千蔭さんのよきライバルというか犬猿の仲なのか、とにかく同年代で同業で似たもの同士である北町同心、大石新三郎が、金貸しの大店に押し入った強盗の手引きをしたという疑いを掛けられて謹慎させられた。信じられない千蔭さんと八十吉さんは、新三郎さんの小者である喜八さんの懇願や北町与力のトップにあたる人物からの依頼で静かに調査を開始する。けれども出てくる話は新三郎さんに不利なものばかり…。

で、今回のヒロイン(?)は、千蔭さんの新たなお見合い相手であり、あまりにも不釣合いな家柄の娘、おろくさん。
とにかく娘らしいふわふわしたところが全くなく、そのかわりに暗算が得意で物のよく見えすぎるほどの眼を持つ、素っ頓狂な変わり者。

でも私、シリーズの中では一番好きな女性なんですけど!
私のインテリ好きは男女の別なく、また現代ものだろうが時代小説だろうが関係なかったらしい(笑)


最後の【寒椿】で、おろくさんの心の動きがにわかにクローズアップされてくるので、この結末はああもったいないと思います。それくらい、千蔭さんにはお似合いの女性だったと思う。てか、こういう女性なら、いくら千蔭さんがトーヘンボクでもよく理解できる性質の女性だったでしょうよ。千蔭ファンなら、このお見合いは喜ばしいものだったはず。

まあ、そこで順当におろくさんと結婚させたんでは、吉原の遊女・梅が枝とのやりとりが引っ張れなくなるからねえ、しょうがないっちゃしょうがないんですが。
こんな良縁、千蔭さんにはもう無いかもしれん…★

でもまあ、新三郎さんもいい人だし、正義を貫く姿勢も千蔭さんと変わらない。
私もこの人いいなと思う。
辛辣なもの言いとか嫌味の応酬があっても、珍しく千蔭さんが感情を顕に素で話せる相手の新三郎さんを「近くに住む友人」と言える千蔭さん素敵w

対して、梅が枝と巴之丞の2人については。

微妙になってきたねえ。心証的に。

多分、玉島家に上がりこんだ巴之丞の魂胆は、八十吉さんの考えたとおりだと私も思う。なまじ、おろくさんが裏表のない心の綺麗な人だから、余計に彼のその昏い部分が目に付きます。
そして梅が枝の方も、もっと余裕とか諦観とかがあったはずのキャラが、マジになりかけてる。誓紙はきっと大マジに違いない。今回は役に立ったけどさ。
この2人は、裏というか過去に(そしておそらく現在も)隠された秘密を共有してるはずで、千蔭さんに立場を考えると適度に距離を取った方がいいのに、その距離感が崩れつつあるような気がします。

その分、話のテンポも良くなるんでしょうが、それはこのシリーズの終わりに近付いてるような気がして、ちょっと淋しくもありますね。

ミステリとして見ると、今回のお話はどれも、サブキャラが活躍するという感じ。
【猪鍋】の美味な秘訣に思い至ったのは、八十吉さんの女房のおしげのお手柄。
結局事件じゃなかったけど、一子相伝って怖いなあ。
で、龍之介にはどこまでもプライドってもんがないのに呆れる。もともと京都での修業の時に、きちんと礼を尽くして真っ当に秘密を教えてもらえるくらいに努力していれば、こんな哀しいことにはならなかったし。こういうキャラを書かせたら、本当にお上手な近藤先生。
憔悴しきった幸四郎ぼんの建設的な心が、小さくても胸に沁みます。

【清姫】にしたって、国克の似顔絵がなかったら、もっと大事になってたはずです。千蔭さんたちが真相に行きつく前に「花亀」の評判は地に落ちていたのでは。
あと、おろくさんの素晴らしい観察眼と。
彼女の存在は、彼女の本質を知らない人から見たら預言者ですが、千蔭さんはおろくさんのその素質を高く評価してるから、彼女の見たものを無条件に信頼できた。
ラストの巴之丞のセリフが利いてていいです。

【寒椿】が一番ミステリらしいものですが、やっぱりここは新三郎さんとおろくさんに持ってかれましたね(笑)
嵌められたらしい新三郎さんの為に動く千蔭さんもいいのですが、同じようにおろくさんと千蔭さんのことを思って梅が枝に直談判に行った新三郎さんもグッジョブ♪ま、主におろくさんの幸せの方が重要だったんですが。
もし千蔭さんが新三郎さんの立場だったら、…巴之丞も梅が枝もそりゃ動くでしょうが、なんとなく2人が千蔭さんに貸しを作って梅が枝の身揚げに追い込むように思えるんですよね…人間性の問題かなあ。誠実な人柄か、食えない奴か、の。

とにかく私にとって、おろくさんブラボー!な1冊でした(笑)
思えば、有栖川先生の作家シリーズの新キャラ、高柳刑事も同じように女性らしい甘さのない印象ですが、この人よりも、おろくさんの方が好感持てるのは多分、「自分の分をわきまえる」ことを知ってるからでしょう。そして、いくら感情的ではなくても心ないことを言われれば傷つくナイーブさもちゃんと持ってることが分かるから。あの女性刑事には、そういう部分が全く感じられないんですよね…(有栖川先生は男性刑事ばかりのキャラに行き詰ってこの人を登場させたと仰ってましたが、犯罪者でさえ綺麗に書き分けられる先生が、そんなぞんざいなキャラ造形をなさったとは信じられないんです…)

さてさて、千蔭さんはこの先、良い伴侶に巡りあえるのでしょうか☆☆


(2008.11 光文社)
スポンサーサイト
Comment (-)

ページの最初に戻る

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。