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『ほおずき地獄 猿若町捕物帳』  近藤史恵 著

2009/06/12(金) 16:12:14 近藤史恵 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
私がいつもお邪魔する書評サイトさんでこの作品が絶賛されていまして、なのに既に幻冬舎文庫では絶版状態、図書館にもなくアマゾンで中古を見るとケタが違うぞオイ!という高値がついてた本作。
やっと今回、光文社文庫から復刊となりまして、大喜びで一気読みしました。
サイドのカテゴリの近藤先生のところから、このシリーズ1作目の『巴之丞鹿の子』の感想を読んでいただければ、いかに私がこのシリーズに入れ込んでいるか、お分かりかと思います。そしてこの二作目も、噂に違わぬ面白さでした。
最近流行りの高価な文庫と違い、お値段も良心的な文庫サイズのこのシリーズ。この機会にぜひ、読んで見てくださいませ。



相も変わらず仏頂面で、人間の感情の機微に疎い玉島千蔭様。
その若旦那に付き従う、小者の八十吉。
吉原に幽霊が出る、その後には何故か縮緬細工のほおずきが落ちている、という縦糸と、
未だ独身で浮いた噂ひとつ無い千蔭さんになんと上司からの断りづらいお見合いの話が持ち込まれたよどうしよう八十吉ぃ(笑)…というプライベートを横糸に。
そして今回のクロスオーバーは、お玉という少女の目線。

いやー、この事件の謎を探る千蔭さんの動きと、気乗りしないお見合いを迫られるその嫌々さ加減のバランスがいいです!
最初は、とんでもないはねっかえりにしか見えないお見合い相手のお駒ちゃんの、実は裏に事情があって、そしてそれが事件の様相と陰陽の関係になってるという、絡ませ方が素晴らしい。
どんどん外堀が埋められていく千蔭さんには同情したけど、お駒ちゃんも可愛いわーw(ただしそれが円満な夫婦関係になるかどうかは別)

幽霊が目撃された茶屋には、そんな噂が広まっても不思議じゃない「前科」があって、幽霊騒ぎで人が近寄らなくなったところに、主人とその女将が惨殺される。
一撃必殺ではなく浅い無数の傷による失血死、それなのに被害者の叫び声を聞いたものが誰もいない。
前作では“同じ帯揚げ”という共通点による無差別連続殺人事件だったので、聞き込みや捜索範囲が広かったけれど、今回はこの茶屋の夫婦2人だけ。当然、犯人は被害者のまわりに居るだろう。ということで、範囲や動きは少ないんですが。

現代ミステリならトリックを見破ったりアリバイ崩しに偏りがちになるところ、近藤先生は極力そういう面を抑えて、“人間の心の中の暗い部分”が生み出す不思議を、淡々と書かれます。
アクロバティックなパズラー好きでロジック万歳!、反対にじっとりした女性作家のミステリは苦手な私でも、何の苦も無くするする読める近藤先生の作品は、こういう乾いた筆致が合うのでしょうね。

それにしても、この事件は…。
ミステリとしてならツッコミどころが無い訳じゃないんですが(伏線の絶妙さでいえば『巴之丞鹿の子』の方が上)、そんなもの吹っ飛ばすくらいの暗さです。現代社会に置き換えてみても多分、陰鬱になると思う。
とにかく、動機らしい動機が強烈な一個じゃなく、成功しようが失敗しようが構わないんじゃないのかと思うくらい曖昧なのに、実はこれほどの悪意は無い。
最初はどう繋がるのかと保留扱いだったお玉のパートが、事件の関係者に当たるうちに次第に結びつく様子と、犯人がお縄になった直後に明かされる、彼女の正体というどんでん返し。
お玉の“地獄”、真犯人の“地獄”、被害者もまた“地獄”の中に居た。

ある程度、真犯人はこいつやろうと見当はつくんですが(おそらく近藤先生は、犯人を隠そうとはしていないと思います)、その動機が怖いのと手口が卑怯なのと、そして犯人すら知らなかった五年前のこと。

彼女の“地獄”は、その時やっと、終わったんですね…。そのラストシーンの清清しさというか清涼感が、この作品の胆でしょう。これが無かったら、ただ遣り切れなさのみが胸に残る、重いだけの作品だったと思う。

一方の、お見合いの件は。
巴之丞さんやら梅が枝さんやらの妙な助け舟もあり(笑)、なによりオーラスにお駒ちゃんのサプライズが待っているので、このエピソードは楽しいものです。
事件とのコントラストによって、いっそう際立ってる感じ。

シリーズ四作目まで読んだかたならご存知でしょうが、千蔭さんのお見合い騒動はまだ続きます。そこに妖しげに絡む梅が枝さんとの関係がどうなるのかなあと、シリーズ読者としては興味津々♪
もちろん、身分違いというよりどうにもならない壁があるのは確かですが、千蔭さんがどこまで女心を解するようになるのか、とにかくそれが千蔭さんのネック。
それに。
梅が枝さんと巴之丞さんの関係。
1作目『巴之丞鹿の子』の冒頭シーン。
あれがどうにも、これまでの本筋としっくりこないんですよね。一応、間夫であることは認めてるけど、そういう簡単なもんじゃないのでは。
シリーズ最終巻になってやっと種明かしされるのかなあと、そんな気がします。

さてと。
次は連作集の『にわか大根』をご紹介しますね。


(2002.10初出 2009.6 光文社文庫)
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