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『魔王の足跡』 ノーマン・ベロウ 著

2008/09/03(水) 10:49:07 海外ミステリ THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 この作家の著作が初めて日本で紹介されたのが、なんと昨年2006年のこの作品、『魔王の足跡』なのだそうです。
 イギリスの作家であり、生涯の大部分をオーストラリアとニュージーランドで過ごし、第二次大戦前後に軍務についていたこと以外、詳しい経歴は不明、と、巻末裏表紙の折り込みにありますが、本当に初めて聞く名前です。
 とはいえ、その評判は以前から知られていて、この作品が昨年の『本格ミステリ・ベスト10』海外編において第一位を獲得したことからも一流のミステリ作家なのだとわかります。
 これからこの作品を読むつもりの方で、先入観を持ちたくない方は、これより先にはお進みになりませんよう。



帯に<怪奇趣味横溢の不可能犯罪ミステリ>とありますが、本当にそのとおり、というか、それしかありません(笑)。
ある雪の朝、イギリスのとある田舎町ウィンチャムに不可解な足跡が突如としてあらわれます。まっさらの新雪の上に、奇妙な蹄の足跡が、突然始まり建物を通り抜けて向こう側に再び現れ、垣根の上を踏みしめ…。
いきなり出現した足跡を発見したグレゴリーと町の人たちは警察に連絡、警官を先頭に蹄の足跡をたどっていくと、ある一本のオークの木に行き着く。そこに、ある男がぶら下がっていた…。

この物語は、雪の上の足跡というオーソドックスな謎をさらに不可解な形にアレンジしています。人間の足跡だけじゃなく蹄の跡、それも二本足でまっすぐ歩く未知の生き物の足跡です。小さな田舎町では、やがて『魔王』が降り立ったのだと噂しますが、百年ほど前にも同じ蹄の足跡が突然出現した事件があったので、『魔王』または『実体の無いもの』の足跡だとする意見は無視できない。警官でさえ、賢しげに講釈する老婦人の形而上学説に傾倒する者がいる始末で、これでは捜査方法を一本化しづらくなる。
それでもどうにか現実的に考えようと、頭をフル回転させるスミス警部は、やはり優れた探偵として描かれています。現場を丹念にまわり、写真を(物的証拠がほとんど無いので)じっくり観察し、そぐわない事柄を記憶し続けて、事件を物理的な解決へと導く。
妙な口癖や多少の行儀の悪さには目をつぶって、短気な上官や寡黙で皮肉屋の上司、ちょっと外しがちな部下と(笑)共に事件の謎を拾い集める姿は、頼もしい限りです。

実は、犯人やその動機といったものは、第三部ですぐに気が付きます。
というよりも、この作品の重心はフーダニットではなく、雪の上に突如現れた足跡の謎に終始しているので、登場人物のバックボーンや事件の背景はものすごーくあっさりしています。それどころか、ある情報に関しては、解決シーンでないと明かされないというアンフェアぶり(笑)。まあ、肝心な伏線はちゃんとありますが、謳い文句である<怪奇趣味>もしくは形而上学の煙幕が張ってありますし。
その雪の密室トリックまでもが派手さの無い…んー、生意気言えばパッとしないものですけど、それらを一つ一つ繋げていって最終的に破綻していないので、やはり不可能犯罪ミステリとしてはお見事だと思います。


それにしても、この作品、雪がしんしんと降る季節のお話なんですが、雪の白さも冷たさもまた静けさも、ほとんど感じられません。吐く息の白さも無視。雪は足跡を記録するシートでしかないかのようです。もしくは絨毯かな。
南半球がいくら季節が反対だからといっても、冬に雪は降るだろうに…。
徹頭徹尾、雪の上の足跡だけを強調した物語で、やはり小説としての物足りなさは残ります。

日本ではこの作品が初お目見えですが、勿論他にもシリーズ長編が何作もあるそうなので、もっともっと読んでみたい。これはシリーズとして愉しむ作品だと思います。スミス警部シリーズの評価は、それからにしたいなあ。

(2007.12.26)
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