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『明るい夜』  黒川 創 著

2009/06/08(月) 18:28:38 黒川 創 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 読了。
 ああなるほど。京都の小説だ。
 第2回の京都水無月大賞のノミネート作品を全部読んだわけではないけど、それどころか一作品しか知らなかったけど。なるほど京都人が納得できるお話でした。


まずなによりも。

これ、京都人以外のひとが読むには、かなりハードルが高いなあ。

主人公と女友達、あとバイト先の男性だけは標準語の言葉で話してますが、他のキャラクタ、主人公の彼氏とか同じ下宿に住むおっちゃんとか極めつきは下宿の大家さんですが、まあ生粋の京言葉。
おそらく、同じ関西圏の大阪とか奈良、滋賀といった比較的近い言葉を使う人たちでさえ、読むのは大変ではないでしょうか。

今の京都でも私の祖父母くらいの年代の人しか使わないような。

私の歳だと、彼氏の工藤くんの話す言葉が一番馴染みがありますね。

それでいて、私のよく知る、今もここにある京都が、この本の中に静かにたたずんでる。パラレルどころじゃなく、私もよく行く街。ちょっと足をのばしたらちゃんと見られる京都を囲む山々。いつの間にか綺麗になった鴨川。桂川。
そして、昔は京都じゃなかった、遠い山間の過疎の村。
そこには、人間が日々生活する音が息づくだけの、やかましい音楽の聞こえない、作り物じゃない街の姿。
観光客の為の街でもない、歴史に埋もれそうな時間の重さも感じない。
ただ、あるがままの京都。1200年ちょっとの時間じゃなくて、一昔か二昔ほどの、もう消えそうな特別じゃないありきたりの毎日。

さすが京都の作家さんです。
おまけに同志社大学文学部卒だそうで、確かにあの辺りの喧騒と静寂、昼と夜、大文字のいつもそこにある日常、たまに今出川通から北白川の近辺をそぞろ歩くだけの私にもありありと。

なんていうかね、今すぐ行きたい、あの辺りに(笑)
何の目的もなく。観光でももちろんない、ただの京都人として。

また、花背を越えて、一日に数本しかないバスでようよう辿り着く、以前は北山杉で栄えた村の描写が……もう涙が出てきそうですよ。
私の母方の実家はもっと北部、日本海に面したところですが、風景は全く同じなんです。ちょっと言葉が違って、ちょっと京都との結びつきは薄いけれど、でも、風景も高齢世帯の多い寂しさも、なにもかも同じ。
日本の昔ながらの田舎に親戚の家があって、お祭やお盆やお正月にそこに行く機会のあった人には、共通のノスタルジーと現実があります。
ばあちゃん、元気かな…。

荒神橋とか、高野大橋とか。川端通。
四条木屋町の猥雑さとそこに働く人の夜とか。
朝の静けさの中で、奥に灯る電気を毎日のように見てるんですよね、私。町の中のパン屋さん。

以前は確かにあったのに、もう私でも教科書とか資料館でしか知らない、鴨川の友禅流し。
賀茂川と高野川との合流地点、鴨川が始まるあたりの、今は市民の憩いの場になってる三角州。
今も存在する、傾きそうに古い下宿。
古びたお風呂屋さん。……たぷん。……とぷん。眠気を誘う、音。
歴史の教科書には出てこない、ただ古い町。

将来を楽観も悲観もしないで、ただ「よるべなく」毎日を生きる二十代の男女が、ただひたすら京都の山々と川に囲まれて過ごすだけの。
観光では分からない、住んでいる人にしか分からない、静かな京都。
見守りも突き離しもしない、ただの京都。

そういう小説だなあと思いました。

他の地域から、京都の大学に通うことになった学生さんには、一番共感できると思います。マニュアルよりもガイドブックより役に立つ。
ためしに、京都に下宿している学生さんの親戚がいたら、訊いてみてください。

「京都って、どう?」って。

「フツー」って答えるじゃないかなあ。

イケズでもプライドが高くても、よそさんをいつまで経っても受け入れない土地柄も、ただフツーの京都なんです。


(2008.10  文春文庫)
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