こんな本読みました。

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『甘い毒 世界探偵小説全集19』 ルーパート・ペニー 著

2009/06/03(水) 15:22:44 ルーパート・ペニー THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 …こういうことがあるから、ぶくおふ通いが止められない…。
 こないだたまたま入ってみた近所のぶくおふにて、ばちっと眼が釘付けになったんですよ。国書刊行会の本だー!って。
 新刊のように状態が良くて帯も綺麗に付いてて、その帯がまたそそるったら!
 ただでさえ需要の少なそうなジャンルの、さらに1997年1月に出た本なんて、そう簡単には買えないでしょうね。ほくほくwww
 で、これは掘り出し物!面白かったですよー♪特に、有栖川信者の作家シリーズ大好きなかたには、めちゃめちゃ読みやすいと思います。
 図書館ででも探して読んでみようと思われたかたは、この先はネタばれ気味ですのでまず読破なさってからお進みください。



うわー、これは確かにパズラーですよ!
イギリスのミステリなんで、こないだの『ミステリーの人間学』でも分かるように人間観察に重点を置いたミステリの王国にあって、この作品(ビール主任警部のシリーズ)はかなり異色なんじゃないでしょうか。
いやもう、ロジックロジック!
ああ楽しい♪♪
そしてまた、キャラクタ設定が上手いなあと思う。
確かに腹の立つ奴もいるけど、一人一人はしっかり描き分けられてるし、かと言ってイギリスミステリにありがちなじっとりした暗さの無い、(悪く言えば「人間が描けていない」?/笑)、心理面の裏読みをしないといけないうっとうしさがないです。ただ、謎があって事件が起こって容疑者に尋問して探偵役が推理する。
何より気が利いてるのが、残り15ページの

《幕間》=“読者への挑戦状”

これよこれ!

私もこの本を手に取るまで全くチェックしていなかったルーパート・ペニーという作家さん、1936~1941年の間にたった8作を発表したのみで消息を絶ったそうなんですが、いずれもフェアプレイに徹したパズラーだったそうです。
ロバート・エイディの『これが密室だ!』にも紹介されていたらしくて、あれ?森英俊さんの翻訳のやつですよね?読んだはずなんやけど…覚えてないー(汗)というテイタラク★
本格好き、古典ミステリに馴染んでいれば、この作家さんのはもっと読みたいと思うはず。

その上、かの『毒入りチョコレート事件』をパロったかのように、本当にお菓子に毒入れちゃったよ!(笑)
その意味でも、なかなか楽しい1冊です。

巻末の解説によると、この作品はわりとパズル色を抑えているそうな。
てことは、他のはもっとガチガチのロジックが炸裂してるってこと?
うわーーー読みたいーーー!
それくらい、パズラー好きを興奮させる、解決部分のロジック。

イギリスの学校制度がどうなってるのか詳しいことは知らないんですが、全寮制の予備学校っていまいち実感しにくい…普通の学校とどう違うんだろうか。
ま、とにかくその全寮制の予備学校、アンスティ・コート校で、フランスから取り寄せたチョコレートの小包が盗まれ、また現在は使われていない上校長を除く一部の人を除き、ほとんどの人間がその存在すら知らなかった青酸カリまでが消えた。

校長の甥にあたる子どものうち、溺愛されている一人が最近生命を狙われているような脅迫じみた事件が続発していたので、心配した校長はスコットランド・ヤードから刑事の派遣を依頼。
副総監と共に学校を訪れチョコレート探しを命じられたビール主任警部は、聞き込み、尋問、そして足で探してまわり、青酸カリの瓶も見つかったので一旦は引き上げたのだが…。

この予備学校と共にもうひとつはっきりイメージできなかったのがお菓子の数々。
私達日本人の思うマジパンとかチョコレートでいいのかな。ペパーミントとかレモンとかさらっと書いてあるんですけど、結局、毒を仕込む形状をしていればいいわけで、そういう感じに脳内変換して読みました。

惜しいのは、その2点かな。

校長のだらしなさや気まぐれ、校長の姉の口やかましさと信頼感、教師たちの事情、レディ・Wというキーパーソン。
また生徒達の無邪気な好奇心とか子どもなりの考え方、校長への反発と服従のバランス、でもその校長の指導方法が強ち的外れではないという知能の高さ。
退屈しないんですよね、子ども達や教師たちと一緒に校長一家に悪態をつきたくなったり、ビールさんの冷静さに舌を巻いたり。

さっきも書いたように、実質の解決部分はたったの15ページ。
でも、それまでの章に全ての手がかりがありますよ、という作者からの挑戦には、やっぱり1度立ち止まって、頭の中で要点を整理したり。
実際、解決部分を読むと、確かに全部出てきたことばかりですね。
…こんなこと書くと生意気なんですが、伏線は結構分かりやすいんです。
あ、この人のこの動きは多分、とか(一番引っかかったのは、ビールさんが初めて学校に来てクリケットの試合を観戦している時の、アノ人の妙な動き!モーリスとエドウィンを隠すような仕草が最後まで気になった)、繰り返し出てくる被害者の少年の性格の極悪さと意地汚さはココに繋がる?とか。
だから、犯人は多分、すぐに分かるんじゃないでしょうか。
誰の証言を信用し、誰の証言や人間性を疑うか。
むしろ、それを理詰めで証明してみせるビールさんの推理を楽しむ作品だと思う。

途中から、ビール主任警部の友人としてアントニー・パードンという編集者が出てきます。
彼がビールさんの良き話相手として、推理の手助けをするんです。
このトニーさんがまた頭のいい人で、よく言う“愚鈍なワトソン君”じゃなく、ちゃんとビールさんの思考を促す役目を果たしていて。

この2人の関係は、どー見ても有栖川先生の作家シリーズ、火村準教授と推理作家アリスさんのコンビを彷彿とさせません?
(もっとも、容姿に関しては違いますが。イケメンの火村先生とそこそこのアリスさんコンビとは対照的に、ビールさんは無個性というか印象に残りにくい人で、トニーさんははっきり醜男と書かれてます。ちょっと可哀想…)
有栖川ファンならオススメ、というのはそういうことです。
本当に、会話がスマートでウィットにも富んでいて、読みやすいったら!
シリーズを通してこの2人が軸のようですし、ああこれは他の作品も探してみるかな。読みたいよう。

その解決部分とは別に印象に残ったのは、ビールさんとトニーさんのディスカッションのうち233~235ページ。
あと、ビールさんとレディ・Wとの会話のうち264~265ページ。特に265ページの推理の組み立て方のところは、上手い例えだと思いました。

こういう上質のパズラーを読むと、ミステリはなんて楽しいんだと再認識させられます。幸せな時間だったわー♪


(1940年発表 1997.1  国書刊行会)
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