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『ミステリーの人間学 英国古典探偵小説を読む』 廣野由美子 著

2009/05/29(金) 02:23:17 新書 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 
 英文学を研究する大学の先生が、「あらゆる文学作品には何らかの形で「ミステリー」の要素が含まれる」ことから、「ミステリー性とは何か」というテーゼ、そして「いっそ「ミステリー」という要素そのものをジャンルとした探偵小説を学ぶところから出発してみたら」と考え、それが1冊に纏まった、(多分)研究論文です。
 なので、ミステリ読み、ミステリ好きに対する気配りなんて、これっぽっちもありません。ネタばらしの雨あられ!
 確かにこのタイトル『ミステリーの人間学』というのは、ミステリ読みをそそります。で、いそいそと読んでみたら、コレでしょう。ドイルとチェスタトンはともかく(私は良い読者ではありませんが一応筋は知ってる)、クリスティは読まない私はまだいいけど、楽しみに取っといたのにーという人がいたらめっちゃくちゃお気の毒。
 特にこれは、ミステリ初心者は余りオススメできないですね。
 ということで、アテンション!
 以下の作家、及びタイトルを未読のかたは、これを先に読まないほうがいいです。ストーリーを全部知ってから、この先生の考察に耳を傾けてくださいね。


●エドガー・アラン・ポー……『モルグ街の殺人』『マリー・ロジェの謎』『盗まれた手紙』『黄金虫』『おまえが犯人だ』
●チャールズ・ディケンズ……『バーナビー・ラッジ』『荒涼館』(ただ、邦訳されているのかどうか私には分かりません。ディケンズまでは到達していないので)『エドウィン・ドルードの謎』(これは未完なので、多分邦訳はされてないでしょうし、発表されているところまでを読んでほかの作家がいろいろと続きを推理して発表しているそうです)
●ウィルキー・コリンズ……『白衣の女』『月長石』
●アーサー・コナン・ドイル……『緋色の研究』『赤毛同盟』『唇のねじれた男』『まだらの紐』『ボスコム谷の謎』『緑柱石の宝冠』『花婿の正体』『ぶな屋敷』『バスカヴィル家の犬』
●G.K.チェスタトン……『ブラウン神父シリーズ』『木曜の男』『詩人と狂人たち』『ポンド氏の逆説』
●アガサ・クリスティ……『アクロイド殺し』『オリエント急行殺人事件』『そして誰もいなくなった』『火曜クラブ』

現代作家のタイトルでは
●ダフネ・デューモリア……『動機なし』
●ルース・レンデル……『死を望まれた男』
●コリン・デクスター……『ウッドストック行最終バス』
●P.D.ジェイムズ……『女には向かない職業』
●ロバート・バーナード……『不肖の息子』
●レジナルド・ヒル……『死にぎわの台詞』
●R.D.ウィングフィールド……『クリスマスのフロスト』

なんでここに、ドロシー・L・セイヤーズが含まれないのかは疑問ですが、まあセイヤーズの作品に対する考察があったら、私はもっと楽しく読めただろうなと思います。セイヤーズは全部読んでてどれも好きなので。

イギリスのミステリーは人間の内面を深く追求する傾向にある、ということで、フレンチミステリでもなくアメリカの巨匠でもなくイギリスの作家にスポットを当てたということですが。

この考察を読んでいて、カーやクイーンといったアメリカの古典ミステリの方を、より楽しく読んでいる私に、改めて気付きました。
ポーと、コリンズの『月長石』、チェスタトンのブラウン神父シリーズはともかく、私の記憶の中では他の作品はざっと目を通しただけなような感じ。もしくは、映画やドラマで観たとか。
パズラーと言われるロジックばりばりのミステリとか、トリック炸裂のミステリの方が、私は性に合ってるようです。だからEQは神なんだ(笑)

つまり、そういうロジックやトリック最優先の作品には人間が書けていないという昔からの批判に、この著者の先生もそれほど異論はないみたいですね。でなかったら、せめてカーくらいは取り上げていてもよさそうなもの(カーは英米両国で広く読まれているので)。
その上、クリスティは別にして、本文には取り上げなかったけれども各国の数多くの作品(ミステリだけじゃなく、クライムノベルも含まれるような書き方をなさっていますが)を読んでいても既に気分が悪くなったそうなので、もしかしたらこの先生は根っからミステリ小説というジャンルには合わないんじゃないでしょうか(苦笑)。それとも、深くまで掘り下げすぎとか。私が読む分には、面白ければそれでいいので、研究したいわけじゃないし。

研究者って大変だ。


(2009.5 岩波新書)
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