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『神国崩壊 探偵府と四つの綺譚』 獅子宮敏彦 著

2009/05/27(水) 13:22:09 獅子宮敏彦 THEME:読んだ本の感想等 (ジャンル : 小説・文学 EDIT
 素晴らしいっ!!
 今年読んだ新作の本格ミステリの中ではダントツの面白さです!
 「本格ミステリ好きが喜ぶ本格ミステリ」という形容をつけたいくらい。
 実は、あまり期待してなかったのですよ(すいません)、でも良い意味で裏切ってくれてもう、嬉しくてしょうがない。1,995円がなんだっつーの!(笑)
 こんなにべた褒めしてると、どんなのか気になるでしょう?
 さー、書店へ行きましょう!読みましょう!
 ということで、未読のかたは、ぜっっったいにこの先にはお進みにならないでくださいね!



あーー、もったいないー!
なんでこれを3冊のうち一番最初に読んでしもたかなあ私。
こんなに愉快だと知ってたら、お楽しみは後に取っといたのにー!

この作品の世界は一応架空ではありますが、登場人物一覧を見ただけで中国の王朝(あとがきによると清王朝)と、読み進めていくとそこにモンゴル帝国が加わりますが、モデルだと知れます。
なので、三国志とか中国の歴史モノを読んだことのある人なら、出てくるキャラクタまでピーンとくるはず。そういう楽しさもあります。

で、帯を見て不思議だったのが、なんで創元推理短編賞を受賞した作品が、原書房から出てるの?ということでしたが、その受賞作でありこの本の表題作でもある《神国崩壊》が発表されてからもう6年が経過してたんですね。
そして、この短編《神国崩壊》を除くほぼ全てのタイトルが書き下ろし。
いやー、上手く繋がってる。

第一部は、登場人物一覧にあるとおりのキャラクタたちが出てきて、この世界の説明とともに、ある事件の謎を解く手がかりとして、過去の歴史を紐解く、というところまで。

で、第二部からが過去の知られざる歴史部分。
そのうちの一編が《神国崩壊》です。
いやもう、これだけでもすごい。この作品が創元推理短編賞を受賞したのも納得です。
ありえない謎の死と、その真相。
トリックそのものは目新しいものではないのかもしれませんが、背景と人物がきっちり書きこまれているので、おおそうか!と感心しました。
むしろ、神水こと毒の存在の理由と使い方が。
犯人はすぐに分かっても、そこまでは行きつけませんでした。

次の《マテンドーラの戦い》。
私はこれが一番好きです。
空を飛ぶ人間がいるかのような現象と、閂のかかっている城門の内部にするりと入り込む騎馬民族の不思議。
本当に奇蹟なのかと異教徒に不安を植えつけて、西方への侵略に突き進む邪巌一族。
その参謀たちの深慮がね、すごいです。
ロクな武器もなく、ただ馬で急襲しただけの彼らに、どうやって高すぎる城壁を乗り越える(すり抜ける)ことができるのか。
屍が累々とする描写がしつこく出てくるのはなんでだろうと思う間もなく、ぐいぐいと一気読みでした(あかんがな)。
そうかー、あの会話はここに繋がってたのかー!と、伏線の回収の仕方にうっとり。
そして、ラストの情景が…。
彼ら自身が予言していたとおりになって、南へ-。
またしてもうっとり…。

まだあと2話あるんですが、多分、漢字が変換できない……(涙)
「レン」…無い…「ユウ」…こっちもない…。
ということで、割愛…といいたいところですが、えーと、3話目はダイイングメッセージものかと思ったら人物のすり替えによる叙述トリックの一つみたいな感じで、えーと、なんだか「読者への挑戦」ばりの文章が挟んでありますよ?(笑)。ちょっと変わった、“毒入りチョコレート事件”のような“そして誰もいなくなった”のような。ますますわかりませんねごめんなさい。

4話目は消える都市。
これはだいたい見当つくんですが、多分、読み所は現実世界でいえばキリストやアラーという一神教に対するアイロニーのように思ったり。
実際読んでてちょっとムカムカした私。
キト少年がゼラムさんと一緒に旅をして、広く世界を知るまでは真っ直ぐに成長していったのに、女神に会った途端に歪み出したというのは、ダルディアの神というのはもちろんキリストなんでしょうが中世の絶対権力を握る、そして十字軍のようなもしくはテンプル騎士団のような、かなりの過激思想、今で言えばカルト教団のようにも見える。

そんなこんなで第三部。
その四つの綺譚を利春さんたちが読んで、この中に自分たちが取り組むべき事件の謎の手がかりがあると見て、あーでもないこーでもないと推理するんですけど。
私ねー、第一部でも感じたんですけど、この利春さんって、『銀英伝』のヤン提督のような雰囲気があるなあと思えてしょうがないんですよ。
まあ『銀英伝』も“SF版三国志”とか言われることもあるし、田中先生もまた中国の歴史に造形が深いこともあって似てくるのかもしれませんが、キャラクタがよく似てるというのは、やっぱりこの獅子宮さんって『銀英』読まれたのかな。

ま、私の寄り道はともかく、辿り着いた推理はデカイな。
そして、なんで第一部の前のページに関係者のフルネームがあったのか、腑に落ちたという次第。
第二部のそれぞれにも、中国式の名前がわんさか出てくるけれど、これも伏線だったか。
漢字ばっかりで眼がチカチカしようとも、しっかり見ときなさいよ、という作者からのアドバイスですね。
本当は、容疑者の容姿の描写があれば一番早いんですが、それは無理かな(笑)
ていうか、その描写を出したくないために、事件現場は皇帝と側近以外立ち入り禁止の部屋にして、事件発生からかなりの時間を経過させているんでしょう。

あー楽しかった!
まだ5月ですが、今年の新作読了本リストの中でも、トップクラスです。
多分、年末ベストにも入れると思う。
前情報がほとんど無かっただけに、当たりで本当に嬉しいですww


(2009.5  原書房)
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